インタビュー

成績不振で赴いた地方キャンパス、それが20年続く企業の原点だった

成績不振で赴いた地方キャンパス、それが20年続く企業の原点だった
PROFILE
株式会社アネット 代表取締役
石塚 健太郎

原点は学園祭に向けた地道なハガキ営業から

不本意だった地方進学がもたらした最大の転機

千葉県で生まれ育った私は、高校時代の成績が振るわなかったため、系列校の内部進学制度によって地方にあるキャンパスへ事実上左遷されるような形で進学することになりました。エスカレーター式の学校では珍しくないかもしれませんが、こうして私の静岡での大学生活が幕を開けました。

当時は不本意だったこの静岡への移住こそが、のちのビジネスの出発点となります。東京に芸人の友人が多かった私は、周囲が就職活動に向けて慌ただしく動き出す大学3年生になっても、何をするでもなく怠惰な日々を送っていました。そんなとき、学園祭の実行委員を務めていた友人から「誰かタレントを紹介してくれないか」と頼まれたのが、すべてのきっかけでした。仲介の手数料を差し引いても、相場の3分の1ほどの費用で誰もが知る大物芸人をブッキングできる。この仕組みに気づいたことが、私のその後の歩みを決定づけました。

ハガキ営業で仕事を取った

そこから、個人で20校から30校くらいの学園祭に入り込んで、芸人のブッキングをするようになりました。当時はインターネットも今ほど普及していなくて、学園祭実行委員は「赤本」と呼ばれる学校案内をもとに、イベント会社にハガキで発注をするという流れでした。なので私も、学園祭実行委員宛てにひたすらハガキを送って、仕事を取っていたんです。

理系の大学だったのでインターネットも使えて、今思うととてもしょぼいホームページも作りました。そのおかげで、学園祭のシーズンだけでサラリーマンの1年分くらい稼げてしまって、それに味を占めて大学4年生でも就職活動をしませんでした。

芸人派遣からパーティー全体のプロデュースへ

結婚式に芸人を呼ぶという発想

学園祭は年に一度の稼ぎ口なので、年間を通して収入を得られる方法を考えたときに思いついたのが、結婚式の余興に芸能人を呼ぶという企画でした。今でこそ珍しくないと思うのですが、当時は個人の結婚式に芸人が来ることなんて全くありませんでした。 実は、それを一番はじめにやったのが、私たちの会社なんです。結婚式、学園祭、企業パーティー、忘年会など、いろいろなイベントに芸人を派遣する会社を作ろうと思い立ったのが、私が28歳のときでした。

株式会社アネットを設立

それまでは個人事業でしたが、28歳で法人化して株式会社アネットを設立しました。そこから今年で20年になります。もともとは芸人の派遣を主体にした芸能事務所で、テレビ番組にも出演していたようなタレントを何人か抱えていました。芸人の派遣だけでは、社員を抱えて全員の収入を確保するには弱いということで、パーティーのプロデュースも一緒に手がけることにしたんです。企業さんの二次会や忘年会をお任せいただいたときに、ビンゴ大会の景品もあわせて販売する。これが、今では弊社の代名詞になっているビンゴ景品事業の始まりです。

主力タレントを失い、物販中心へ

景品販売が本業になった

弊社の派遣で中心的な存在だった芸人が亡くなってしまい、大きな柱を失うことになりました。その芸人だけで、年間1億円くらいの売上がありました。そこから、タレント派遣よりも物販、つまりパーティーの景品販売のほうに軸足を移していったという経緯です。今では物販の色合いが強くなっていますが、扱っている商品はパーティーや二次会の景品です。

最近は、上場企業をふくむさまざまな会社にも使っていただいていて、イベントで使うビンゴツールや、ビンゴ大会をウェブ上で運営できるシステムの提供も手がけるようになりました。振り返ると、もう30年近くこの業界にいることになります。もとをたどれば、高校時代に寄席に通うのが好きで、そこで自分も出演したり、いろいろな人と知り合ったりしたのが人脈の始まりでした。

無料ビンゴツールという武器

個人情報を聞かずに景品を渡せる

昨年開発したビンゴ大会のツールを、もっと多くの方に使ってもらいたいと思っています。ビンゴアプリ自体は世の中にたくさんありますが、弊社のツールは、ビンゴ大会を主催できるだけでなく、その場で景品の引き換えまでできるのが特長です。もともと景品を扱う会社なので、この連携が実現できました。

幹事さんが参加者の個人情報を聞かなくても、当選した本人がその場でスマートフォンから住所を入力して、後日景品が届く仕組みになっています。ビンゴ大会の運営から景品の手配まで、ワンステップで完結できるのは、弊社ならではの強みだと思っています。

SEOで一位を目指している

全行程をウェブ上で完結できるため、社内親睦を深める夏祭りの準備などにもご活用いただいております。他社様の場合、システムの利用料と景品の費用が分かれているケースが一般的ですが、弊社では一括で引き受けられる点が大きな利点です。現在「オンラインビンゴ」というワードでの検索順位は3位ですが、首位獲得に向けて注力しているところです。メディアへの露出機会を増やすことも、そのための取り組みのひとつです。

笑顔とシンプルさを大事にする

難しく考えないほうがいい

楽しませるということを一言でいうと、笑顔に尽きると思います。以前タレントから、ひな壇に座っているときも常に笑顔でいないと視聴者に伝わってしまう、とよく言われていました。人と接するときは笑顔でいることを大切にしています。

物事を難しく考えたほうが、かっこよく見える部分はあるかもしれません。でも人間の本質はそこではなくて、結局シンプルで使いやすいものが好まれます。イベントも、雰囲気を楽しくしないと参加者は楽しめません。だからこそ、笑顔でいることが一番だと思っています。

好きなことを大事にする

これまでの歩みを、挑戦だと思ったことは一度もありません。もちろん苦しい時期も、嫌なこともたくさんありました。それでも、嫌なことを我慢して続けるよりは、まず好きなことをやってみたほうがエネルギーが違います。嫌々やっていることは、必ず相手に伝わってしまうと思うんです。若いうちは特に、好きなことに挑戦してみることを大切にしてほしいと思います。

二十年続けてわかったこと

人脈と運が支えてくれた

もし時代が戻っても、同じことをすると思います。やり方は変わるでしょうが、根本は変えません。今の時代にハガキを出す人はいないでしょうから。ここまで無事にやってこられたのは、単純に運が良かっただけだと思っています。あとは、人脈がないと成り立たない仕事なので、そこは大切にしてきました。

会社に残っているスタッフには創業から20年一緒にいる人もいますが、合わない人は2年くらいで会社を去っていきます。それはそれでいいと思う一方で、キャリアアップのために辞めるのであれば、慎重に考えたほうがいいとは思います。

AI時代に大事なこと

これからの時代は、頭の良し悪しであまり差が開かないと思っています。難しいことはAIに任せればいいので、それよりも「感じがいい」かどうかのほうが、AIでは対応できない部分として重要になってくると感じています。弊社が採用で人を選ぶときも、優秀かどうかより、そちらを重視するようになってきました。

編集後記

石塚さんのお話をうかがって、成功のきっかけは案外身近なところにあるのだと感じました。地方の大学に飛ばされたことも、学園祭のハガキ営業も、当時は小さな出来事だったはずです。それを丁寧に積み重ねて20年続く会社にしてきたことに、率直にすごいと思いました。就職活動をしなかったという選択も、好きなことを大切にする姿勢の表れなのだと感じます。私自身もまだ学生ですが、目の前のことに真剣に取り組む大切さを、あらためて教えていただいた気がします。