インタビュー

「24時間は誰にでも平等」恵まれない環境から這い上がった代表が、少数精鋭で顧客に伴走する理由

「24時間は誰にでも平等」恵まれない環境から這い上がった代表が、少数精鋭で顧客に伴走する理由
PROFILE
春野デザイン株式会社 代表
亀元 友弥

学生時代

恩師の言葉が転機に

もともとゲームがすごく好きだったんですけど、その先生に「ゲームの経験値を積む時間を、自分の人生の経験値を積んだり、武器を育てたりするような時間にすると、楽しいと思わないか」と言われたことにすごく感銘を受けたんです。そこから勉強が好きになりました。

将来何をしたいかはまだふわふわしていたんですけど、好き嫌いがはっきりしているというか、好きなものへの集中力には自信があって。好きなことややりたいことでお金を稼げるようになるために、勉強していたなと振り返ると思います。

音響を学びながらプログラムに熱中

学校では音響、舞台音響の専攻に進みました。分野としては全然違うんですけど、もともと IT が好きで、パソコンを使ったりプログラムを書いたりするのがすごく好きだったので、舞台音響を学校で学びながら、日々新しい技術が出てくるプログラムの世界もずっと勉強していました。ものを作ること自体が好きだったんだと思います。今の会社はデザイン制作がメインですが、当時からデザインをまだ学んでいなくても、独学でいろいろなものを作っていました。

創業までの道のり

常連客からの後押し

創業のきっかけは、もともと勤めていた会社の常連のお客様から強く勧められたことでした。専門学校を卒業してから、まずはデザイン部署のある会社に新卒で入社したんですけど、どうしても色んな人と話をしたくて、飲食店を経営する企業に転職したんです。そこでは昼はデザイナー、夜はバーの副店長として店舗に立っていました。

その店の常連になってくださった、経営コンサルタントの社長さんから「独立とかはしないの?」と声をかけられました。当時は独立への強い意志があったわけではありませんでした。しかし、入社して4年ほど経った頃、今後のキャリアについて見つめ直すタイミングが訪れたのです。 ちょうどその時に社長から背中を押され、独立を決意しました。

独立後に気づいた営業力の不足

ものづくりのスキルには自信があったんですけど、実際に独立してすぐ、自分のスキルを売る営業力がまったくないことに気づいたんです。これはまずいなと気づいて、開業した後、実は二年間、雇用されながら会社を経営していました。

広告か営業かで悩んで、コスメ系の会社の広告担当として採用していただき、自分の会社の事情もすべて話したうえで、月から金は昼にフルタイムで広告の仕事をしました。一年ほど広告の世界を学ばせてもらい、自分ひとりで運用ができるようになったタイミングで、会社のメンバーも少しずつ増えてきたので、そこで退職を決めました。計画していたというより、自分に起きたきっかけがタイミングよく重なって、開業につながった感覚です。

最初のお客様は、飲食店で働いていたころに名刺交換した方たちがほとんどでした。独立の報告をした人たちから直接お仕事をいただいたり、紹介していただいたりして、ほぼ十割がそこからでした。

現在の事業内容

「作らない」提案もする

弊社はデザインの事業に加えて、プログラムを書いたりシステムを設計したりする仕事もしています。会社は法人化して五期目になりますが、今期からブランディングを大きく見直しました。

もともとは受託で何かを作り、その制作物に対しての報酬を受け取るスタイルでした。その一方で、AI技術の発達もあり、これまでどおりの受託制作は続けつつも、そこをメインにするのではなく、事業伴走という形を今まで以上に強みにしています。

弊社の理念は「すべてのお客様に IT とデザインを身近にする」ことで、中小企業のお客様がとても多いんです。例えば「新規集客に悩んでいるからホームページを作りたい」というご相談をいただいたときも、その先の広告戦略や流入元の設計まで考えられていない場合は、ホームページを作っただけでは集客の壁は解決できないとお伝えして、お断りすることもあります。

事業伴走への転換

最近は会社の中に入り込んで、今の事業課題を見つけるところから参画させていただき、優先してやるべきことを提案し、そのために何をすべきかまで、私たちの中で完結して動くようになりました。ただものを作るだけでなく、事業の本質的な課題を一緒に解決していくことが、今の弊社の強みだと思っています。

ウェブサイトも、以前は「何が作れます」「過去にこういうものを作ってきました」という内容だったんですけど、5月末で期が終わり、6月頭に新しいサイトへ更新して、今の考え方を前面に出す形に変えました。

組織づくり

19人から4人体制へ

以前は19人ほどの体制でしたが、今年の5月に人員を大幅に見直し、今は私を含めて4人体制になりました。加えて、業務委託のスタッフの方たちと一緒に仕事をしています。事業伴走というスタイルに変えるにあたり、業務委託のスタッフだけでは弊社の理念を全うできない状況になると考え、クライアントさんにしっかりコミットできる仕事の数だけを受けようという方針に変えたので、人材を一気に減らしました。事業内容から見ても、今はまさに転換期だと感じています。

教育事業への広がり

弊社では講師業も行っています。創業当時から一緒にやっているスタッフが、もともと教職を目指していて、教育という分野に強い興味関心があると開業当時から話していました。開業してすぐ、知り合いの経営者から「プログラミングを教えられる先生を探している」というご相談をいただいたことがきっかけです。

そこから、そのスタッフが教育事業をすべて担当してくれるようになりました。最初は高校でのプログラミング講師だけだったのが、現在はデザインやイラストの授業を担当したり、公立高校で社会人講話の講師として登壇したり、今年度からは専門学校の講師も務めています。スタッフは基本的にみんなエンジニアやクリエイターなので、それぞれが得意分野の授業を担当しています。

未来へのビジョン

少数精鋭で徹底伴走

今期で会社のブランディングと運営体制をかなり刷新したので、これから先も少数精鋭のプロフェッショナルとして、一対一でひとつのクライアントさんへのコミットに力を注いでいきたいと考えています。今は売り上げを伸ばすことよりも、クライアントの成果が最も大事なテーマだと思っていて、関わっているクライアントさんの事業が100%好転するような仕事ができることが、身近なビジョンです。

地方中小企業の心強い存在に

長期的には、今はスタッフを増やすスピードをあえて緩めていますが、正直まだ人手が足りない状況です。今やっている仕事をしっかり体系化して、新しく入ってきたメンバーや若いスタッフたちが同じ目線で仕事ができるように、根を深く張っていきたいと考えています。誰が担当になっても、お客様の事業を好転させられる強い会社にしていきたいですし、「すべてのお客様に IT とデザインを身近にする」という理念はぶらさず、地方の中小企業の経営者の方たちに「ここに頼んでおけば心強い」と言っていただけるような会社に成長していきたいと思っています。

学生へのメッセージ

24時間は誰にでも平等

先日、高校でキャリアの話をする機会があったんですが、そのときも感じたのは、24時間の使い方をとても大切にしたいということです。

私は、決して最初から経済的に恵まれた環境で育ったわけではありませんでした。しかし日々の生活の中で、どれだけ裕福な人であっても、そうでない人であっても、「1日24時間」という時間だけは、誰にでも全く平等に与えられていると強く感じています。

もともと優秀な人たちが頑張っている一方で、遊んでいたり怠けていたりする時間も誰にでも絶対にあります。私はそれをチャンスだと学生のころから感じていました。何をしたらいいかわからない、将来何になりたいかわからないという学生さんでも、自分が好きなこと、熱中できることでいいと思うんです。それが将来のためになるかどうかは誰にもわかりませんが、中途半端な気持ちではなく、全力で熱中してほしい。その時間があったから今の自分があると、きっとあとからつながってくると思うので、今熱中できることに全力で取り組んでほしいなと思います。

編集後記

学生時代の恩師の言葉から始まり、独立、そして事業伴走への転換まで、亀元さんの歩みには一貫して「今できることに全力を注ぐ」姿勢がありました。とくに印象的だったのは、あえてスタッフを減らし、一社ずつに深く向き合う道を選んだという決断です。効率や規模ではなく、目の前のクライアントの成果にこだわる姿勢から、経営者としての誠実さを感じました。学生の私たちにとっても、24時間の使い方を見つめ直すきっかけになるお話でした。