創業までの道のり
大手SaaS企業で営業を極めた
私は今年で29歳になります。最初に勤めたのは、SaaS企業としてウェブマーケティングを支援する会社でした。ちょうど2020年、コロナが始まったタイミングで新卒入社しています。
営業職としてキャリアをスタートし、2年半ほど在籍しました。途中からはマネジメントも経験させてもらい、営業一筋、それなりに結果を残してきました。その後、一度転職をし、同じくSaaS業界に位置するSansan株式会社に移りました。私が入ったタイミングでは、ARR(年間経常収益)ベースで国内最大級の規模だったので、その環境に一度身を置いてみたいという思いがありましたね。そこでもふたたび営業で勝負しようと決めて、およそ1年2か月ほど働いていました。
独立後に襲われた虚無感
そこを辞めて、そのまますぐに今の会社を立ち上げました。正直に言うと、創業のきっかけは「お金目的」でした。一人社長のような形でSEOコンサルティングをまずは自分でやってみようと思ったんです。
ただ、いざやってみると、思っていたほど幸せではなかったんですよね。年収がこれくらいあれば嬉しいだろうなと描いていた世界を実現できた瞬間は嬉しかったのですが、それがだんだん虚しさに変わっていって。自分の懐が増えることそのものには、あまり喜びを感じられなくなってしまったんです。自分と身の回りだけがちょっと豊かになれば、それでいいのだろうかというギャップを感じたのだと思います。
そこから、「意味」を持ち経営をしていきたいと考えるようになり、前職で直属の上司だった方に声をかけて、一緒にやろうと誘いました。今はありがたいことにナンバー2として力を貸してくれています。
AIをいち早く取り入れた強み
ChatGPTとの出会いが転機に
SEOのスキル自体は、実は勤め先ではほとんど学んでいません。サラリーマン時代に趣味でブログをやっていて、AIがまだない時代に、一文字ずつキーボードを叩きながら100〜200記事ほど書いていました。その独学の知識と、サラリーマン時代に培った営業力を掛け合わせて、もう一度SEOの世界に戻ってきたという流れです。
大きな転機は2023年ごろ、ChatGPT-3.5が出てきたタイミングでした。それまでは記事のライティング作業を外に発注するか、自分のリソースを使うしかなかったのですが、それを自分のリソースをあまり使わずにおこなえるようになったんです。オフィスへの通勤時間くらいしか作業時間がなく、一日一本ブログを書くことすら難しかったのが、余裕でできる世界に変わりました。あのときの恩恵は、本当にすさまじかったです。
コンペで負けたことがない理由
一般的なSEOコンサルは、企業から丸ごと業務を受託し、サイトの編集権限までこちらが持つという形が多いんですよね。それが当たり前とされていた世界に対して、私はAI活用にシフトしながら支援するという動きを続けてきました。SEOでこういうAIの使い方がありますよ、という提案ができる立ち位置は、他社ではほぼやっていないニッチな領域だと思っています。
日々いろいろな会社とコンペで競合することもありますが、コンペで負けたことは一度もありません。ここが弊社の強みだと感じていますね。
目指すはAIの普及
手段としてのAI、目的はプロジェクトの成功
弊社の事業は、SEOコンサルをしながら、あわせてAIのレクチャーもおこなうという関わり方をしています。AIはどこまで行っても手段であって、SEOで言えば集客を増やすことが目的のはずです。ただ、国内でAIを普及させたいという思いで動いている会社の多くが、特定の業務フローに絞らない、汎用的な入り口の知識を伝える教材を提供しているように感じています。
弊社は特定の業務にしっかり絞って、目的をAI導入そのものにはせず、プロジェクトの成功に置いています。その手段としてAIを自然に取り入れてもらう。実務レベルで本当に使ってもらい、成功体験が生まれれば、「SEOでこう使えたなら、バックオフィス業務でも使えるのではないか」という気づきにつながっていくと思っています。
実際、ある企業様との付き合いがきっかけで社員全員にChatGPTのアカウントが付与されるようになった、といった事例もいただいています。全然違う業務でChatGPTに相談しながら進めているという声を自然に聞けたときは、こちらのビジョンと現実がつながる感覚があって、単なる利益以上の「意味」を感じますね。SEOの成功を求めるのは大前提としてありますが、その先の意義のレイヤーでは、AIを普及させたいという想いが根底にあります。
学生へのメッセージ
お金より経験とキャリアを稼ぐ
キャリアや経験を稼ぐというマインドで就職活動をすることを、お勧めしたいです。対照的な考え方として、お金を稼ぐという軸があると思います。就職活動をしていると年収は気になるものですし、SNSを開けば年収の話題があふれているので、そこにフォーカスしてしまう方も多いと思います。
ただ、人生はこれだけ長い時代なので、二十代でそんなに急いで稼ぐ必要は正直ないと思っています。特別な理由がない限り、目先のお金ではなく、経験やキャリアを積める環境に身を置くほうが良いだろうと、自分自身の経験からそう思えるんです。私が最初に入った会社も、条件が特別良かったわけではありませんでした。ただベンチャー企業だったので、結果を出せばすぐに昇進できるチャンスがあり、自分より年上の方をマネジメントさせていただく経験もできました。目先の年収に引っ張られて大きな会社に入っていたら、できなかった経験だと思います。
業界の伸びしろで会社を選ぶ
会社を選ぶ判断軸としては、業界を見ることをおすすめしたいです。就職活動に魔法のような一手はないと思っていますが、いい業界に属していない企業は、そもそも伸びません。その業界が伸びているかどうかをまず考えることが大切だと思います。
今であれば、トレンドの真ん中はAIですよね。私が就職活動をしていた当時はSaaSが騒がれ始めたタイミングで、運よくその業界の企業に出会えたので、あえて中規模サイズの会社に飛び込みました。AI領域で言えば、アメリカではFDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)と呼ばれる、企業に常駐してエンジニアリングをおこなうような新しい働き方も出てきています。まだ他の就活生からあまり注目されていない分、こうした海外の新しい取り組みを取り入れている国内企業に先に飛び込んでしまうのがいいと思いますね。
編集後記
矢嶋さんのお話を伺い、お金を目的に起業したからこそ気づけた虚無感と、そこから見出したビジョンのリアルさがとても印象に残りました。AIをいち早く取り入れた経緯も、ChatGPTに出会った瞬間の高揚感が伝わってくるようで、聞いていてわくわくしました。経験やキャリアを稼ぐという言葉は、まさに今就職活動をしている身として、深く心に響くメッセージでした。