インタビュー

「本質追求」を胸に、使っていて楽しいITツールをつくる ── インゲージ代表・和田哲也の原点

「本質追求」を胸に、使っていて楽しいITツールをつくる ── インゲージ代表・和田哲也の原点
PROFILE
株式会社インゲージ 代表取締役社長
和田 哲也

https://note.com/ingage

学生時代はゲームとパソコン通信に明け暮れた

正直に言うと、学生としてはあまり真面目ではなかったと思います。熱中していたのは勉強ではなく、パソコンゲームでした。

さらに当時は、インターネットがまだ普及していない時代で、その前身にあたる「パソコン通信」というものがあったんです。固定電話の回線を使ってパソコン同士をつなぎ、プロバイダーが立てた巨大な掲示板のようなサーバーにアクセスして、まったく知らない人と情報交換をする。世界中とつながるわけではないけれど、それでもとても刺激的でした。

パソコン通信にのめり込んだ大学時代

ゼミに出席しても、電話回線を引っこ抜いてパソコンにつないでしまうので、研究室の電話がずっと話し中になってしまうんですよね。それで教授にはよく怒られました。「和田くん、また電話が使えないじゃないか」と。今思えば、たしかにひどい学生だったと思います。

ゲーム会社に入り、「売れるゲーム」の三つの要素に気づく

3回生になって就職を意識したとき、「仕事は一日のほとんどを使う時間だから、好きなことをしたい」と思いました。好きなこと、つまりゲームです。それなら、ゲーム開発者という仕事はどうだろうと考えて、ゲーム会社に入ることを決めました。

入社してからは、寝る間も惜しんで開発に打ち込む毎日でかなりハードな日々でした。担当していたのは、当時花形だった業務用ゲーム機向けの開発です。会社からの指示はシンプルで「とにかく売れるゲームをつくってほしい」というものでした。

「売れるゲーム」に必要な三つの要素

自分なりに考えた結果、売れるゲームには三つの要素が必要だとわかったんです。一つ目は、パッと画面を見た瞬間に興味を持ってもらえること。二つ目は、お金を入れてプレイをはじめたときに、すぐに遊び方がわかること。そして三つ目は、プレイし終わったあとに、また遊びたいと思ってもらえることです。この三つが高いレベルでそろっていないと、売れるゲームにはならないと気づきました。

ITツールへの興味が芽生えた瞬間

ところが、仕事で使う業務用のITツールを見ると、この三つの要素がまったく満たされていないと感じたんです。パッと見て興味を持てないし、使い方もわからない。もう一度使いたいとも思えない。そのうち、どんどん興味の対象がゲームからITツールのほうに移っていって「自分だったらこうするのに」と考えるようになりました。それがきっかけで、ゲーム会社を辞めて、業務用ITシステムを開発する会社に転職したんです。

アメリカでの10年間と、気づかされた日本のよさ

社会人になってから、もう一つ大きな転機がありました。仕事を通じていろいろな年代の方と話す中で、ものの見方は本当に人それぞれなんだと気づいたんです。人と話すことがどんどん楽しくなり、世界中の人と話せたらどれだけ見識が広がるだろうと思うようになりました。

英語が大嫌いだった私が、英語を学び始めた理由

学生時代は英語が大嫌いで、ずっと逃げていました。それでも「世界中の人と話したいなら、英語を勉強するしかない」と思い直し、必死に勉強しました。その結果、アメリカで働く機会を得て、トータルで10年間、現地でITイメージングシステムの開発に携わることになりました。

アメリカで気づいた、日本という国のすばらしさ

アメリカでは、野球場で国歌が流れると、みんながぴたりと動きを止めて、胸に手を当て、国旗のほうを向くんです。それを見て、国を愛するというのはこういうことなのかと感じました。同時に、日本にいるだけでは気づけなかった、日本という国の価値にも気づかされたんです。

「ひとり一人に向き合う」をカタチにする、インゲージ創業

その後日本に帰国し、自分が社会に貢献できるのは、やはりITのものづくりだと思いました。企業が使うITツールは、機能はそろっていても、先ほどの三つの要素が欠けているものが多い。しかも、会社で使うツールは自分で自由に選べるものではありません。だからこそ、興味を持ってもらえて、わかりやすく、使い終わったらまた使いたいと思えるツールを届けることこそが、社会にとってプラスになると考えたんです。

その思いを込めているのが、私たちのミッション「ひとり一人に向き合うをカタチにする」です。人はひとり一人みんな違っていて、だからこそ向き合うことが大切なんです。

経営で大切にしているのは「本質追求」

私たちにはバリューとして大切にしている価値観が三つあります。一つは「誠心誠意」、二つ目は「想像凌駕」、三つ目が「本質追求」です。順番に優劣はありませんが、あえて一つ挙げるなら、私が一番大事にしているのは本質追求ですね。

なぜそれをやるのか、を常に問い続ける

今の世の中には、結論ありきで発言する、いわゆるポジショントークが多いように感じます。でも、自分の意見や誰かの意見にとらわれず、本当に大切な本質はどこにあるのかを常に問い続けることが大事だと思っています。手段が目的化してしまうことのないように、いつも意識していますね。

採用したいのは、自責で考えられる人

一緒に働きたいと思うのは、シンプルに言うと、他責にしない人です。うまくいかなかったことには必ず理由があって、それを突き詰めると、自分に足りなかった部分が見えてくる。そこに学びが生まれるんです。他人や環境のせいにしてしまうと、そこからは何も学べません。もう一つ挙げるなら、相手の視点に立って物事を理解できる人ですね。この二つを大切にしています。

AIでコミュニケーションを資産化する

私たちはコミュニケーションプラットフォーム「Re:lation(リレーション)」を通じて、ビジネス上のコミュニケーションの課題を解決するツールを開発しています。毎日のコミュニケーションは大切な資産であるはずなのに、そのほとんどが資産化されずに使い捨てられてしまっているんです。これはとてももったいないことで、この課題を解決できるのがAIだと考えました。

過去のやり取りや会社の知識を踏まえて、AIが問い合わせへの返信を作成できれば、よりスムーズなコミュニケーションが実現できます。私たちは独自のAI基盤を開発し、Re:lationに搭載することで、コミュニケーションの資産化に取り組んでいます。

これからも「創造力」でチャレンジし続けたい

これからも大切にしていきたいのは、常にチャレンジャーであることです。私たちはまだまだITベンチャーで、ベンチャーとはゼロから一を生み出せる人たちだと思っています。世の中がこれからもっと変わっていく中で、自分たちのビジネスも変わり続けなければいけません。当たり前を当たり前としないチャレンジ精神を、これからも大切にしていきたいと思っています。

採用にも、これまで以上に力を入れていきたいですね。新卒採用は現在は毎年数名ほどにとどまっていますが、今後10名、20名という規模で採用していきたいと考えています。

編集後記

今回、インゲージ代表・和田さんへの取材を通して、ゲームづくりで培った「相手にとって心地よい体験とは何か」という視点が、そのままITサービスづくりの軸になっていることが印象的でした。アメリカでの経験から生まれた日本への想いや、「本質追求」という価値観は、就職活動で企業を選ぶ軸に迷う学生にとっても、大きなヒントになるのではないでしょうか。貴重なお話をありがとうございました。