起業の原点
父の背中を見て育った
もともと父親が経営者でして、いずれは経営という道に進もうかなとは思っていました。父は製鉄関係の会社を経営していて、私がやっているような士業やコンサルティングとはまったく別の、ものづくりの世界です。しかし、経営者としてのいい反面も、苦しい面も両方見てきました。会社が苦しい時期もありましたし、昔ならではの接待や付き合いが多いところは、子どもの立場からすると正直プラスばかりではありませんでした。それでも、ちゃんとビジョンを持って仕事をしている姿には刺激を受けたと思います。
コンサルで感じた「スコープの壁」
新卒で経営コンサルの会社に入り、インターン期間を含めて4年ほど、正社員としては3年半ほど在籍しました。エンタープライズのお客様の経営支援をする中で、どうしても会社の都合や予算の関係で、支援できる範囲が限られてしまう場面が多く、もどかしさを感じていました。そこに不安のようなものを感じるようになりました。自分だったらこうやるのに、という思いが強くなっていったんです。
27歳で選んだ独立の道
本当は30歳くらいで創業しようと考えていたのですが、ありがたいご縁があって、いろいろな士業の先生方が私たちのホールディングスに加わってくださることになり、理解が深まったタイミングで独立を決めました。お金の面も含めて不安がなかったわけではありません。それでも、周囲の支えと自分たちが実現したいことを考えたときに、ワンストップでの経営支援は今の会社では難しいと判断して、昨年、創業に至りました。
事業とホールディングス体制
士業と金融をかけ合わせる
私自身は社会保険労務士の資格を持っていて、労務まわりの事業を軸にしながら、経営コンサルティング事業も展開しています。それに加えて、弁護士や行政書士、税理士といった他士業の先生方、さらに経営に付随する金融領域まで掛け合わせて、ホールディングス体制を取っています。士業と経営、金融まわりをワンストップで提供できる組織を目指しているところです。
経営の壁は「人」と「お金」
成長を止められない苦しさ
創業してから大変だったことを挙げるとキリがないのですが、大きく2つ、人とお金の部分だと思っています。会社としてやっていく以上は成長を止めるわけにはいかず、特にベンチャーと呼ばれるカテゴリーにいるので、最初の勢いで受託できた仕事を継続的にやり続けなければいけません。従業員が増えれば人件費も発生します。弊社の事業は人が大きな経営資源になる分、製造業のようにアセットを多く抱える業態に比べると経営はしやすい面もありますが、それでも成長を止められないプレッシャーは日々のストレスになりますし、すべてがうまくいくわけでもありません。
育成は「魅力あるRPG」
人の部分については、最初はどうしても葛藤がありました。ただ、人が入ると、その方の育成やキャリアといった、ある意味人生の一部を背負って向き合わなければいけない部分が出てきます。スキルを身につけてもらうだけでなく、キャリアそのものに関わっていく感覚は、RPGのような育成ゲームに近い面白さがある一方で、大変さや苦労もあります。人とお金という2つのテーマは、今もこれからも、ずっと付きまとっていくものだと思っています。
これから描くビジョン
プロフェッショナルファームを目指す
弊社は士業やコンサルティングを生業にするプロフェッショナルファームとして、デリバリーの品質をより重視していて、経営者が困り事を抱えたときに、まず思い浮かべてもらえる存在になることを目指しています。お仕事の規模の大小で対応を変えることはしていません。フェーズによって困り事の中身は違っても、どんなお客様に対しても、持っているサービスの品質を精一杯提供していきたいと考えています。
求めるのはデザイナー気質の人
営業は事業ごとに分かれていて、今は2名体制です。ホールディングス内の他事業の課題感からつなげたり、新規開拓をしたりしていますが、事業理解の深さが求められる仕事でもあります。士業という特性上、しつこく営業をかけるというよりは、専門性を軸に問い合わせが来るような導線をつくることを大切にしています。
今、積極的に求めているのはマーケティングの中でも「デザイナー気質」を持った人材です。ホールディングス体制になってからブランディングに力を入れているのですが、抽象度の高いものを具体的に落とし込む力を持った方がいると、なお嬉しいなと思っています。AIをうまく活用しながらでもいいので、ホームページや広告といったクリエイティブに強みを持つ方に来てもらえたら心強いです。
若い世代へのメッセージ
まずは5年、会社員を
学生時代を振り返ってメッセージをと言われると、ちゃんとやりたいことが決まっていなくても、ある程度こういう業界に行きたい、こうなりたいというイメージが描けているなら、まずは会社員として最低でも5年はやってみてほしいと思っています。私自身が早く独立した背景にはタイミングの要素もあり、まったく後悔はしていないのですが、会社の中でステップアップしていく経験は、今しか、最初しか得られないものだと感じています。
隣の芝を見ず、地に足を
会社によっては自分のやりたいことができなかったり、組織が大きくなるにつれて別の論点が出てきたりして、逃げ出したくなる気持ちもわからなくはありません。それでも、どんな組織であっても、自分が努力をして社内外のステークホルダーを巻き込んでいけば、きちんと評価されるようになってきていると思います。組織の中でやり切ってから、独立でも転職でも、自分のやりたい方向に進んでいってほしいです。SNSでは隣の芝が青く見えがちですが、地に足をつけて努力できるかどうかで、将来の伸び率も、人としての魅力も大きく変わってくると思います。辛いときこそ踏ん張って、そこで得た経験の先に見えてきたビジョンに向かって、全速力で進んでいってもらえたらと思います。
編集後記
今回の取材を通じて、経営コンサルという安定したキャリアの中で感じた小さな違和感を、きちんと言語化して行動に移す姿勢が印象的でした。士業と経営コンサルティング、金融領域を掛け合わせるという発想は、なかなか思いつくものではないと思います。「隣の芝を見ず、地に足をつけて努力する」というメッセージは、学生である私自身にも刺さるものがありました。野澤さんの今後のご活躍を、心から応援しています。