インタビュー

「最強になってから独立する」——楽天を2年半で辞め、百年企業をつくりにいった男の話

「最強になってから独立する」——楽天を2年半で辞め、百年企業をつくりにいった男の話
PROFILE
株式会社コマースファクトリー 代表取締役
岡本 駿平

公式Porcast「THE ECオタク」

https://linktr.ee/Commerce_Factory

学生時代

北京大学からインドネシアへ

大学2回生の秋から北京大学に留学していたんですが、そのとき、駐在員の子ども向けにサッカースクールを展開している日本人の会社で海外インターンをしていたんです。北京と台湾に展開していて、次はインドネシアに出ていくという話になって。「来るか?」って言われて、「行けます」って答えて、春休みを使ってインドネシアに行き、サッカースクールの立ち上げをしました。

帰ってきたら今度は「北京支社の支社長をやってくれ」と。留学が終わるまでの半年間やっていました。それまでWordもPowerPointも触ったことがなかったくらいで、「このままだとやばいな」と感じ始めたのが最初のビジネス経験です。

訪問販売で得た「改善の習慣」

帰国してから、関西にあった学生の訪問販売組織に入りました。完全成果報酬で、もうゴリゴリに営業するやつです。

これが、学生時代にやっておいてよかったことのダントツ1位です。会社を作ったことよりも、圧倒的に訪問販売。理由は明確で、PDCAサイクルが異常に速いんです。訪問販売は法律で9時から21時の間しかできないんですが、その間に1日300回くらいインターホンを押すんですよ。応答してくれるのが10%くらいで、30件。そこから対面になるのが10件未満で、受注できるのが1〜5件。

インターホンを押す段階で「応答率が高いマンションを選ぼう」というPDCAが回せる。応答があってから玄関まで来てもらう「対面率」でもPDCAが回せる。対面してから受注するまでの「受注率」でもPDCAが回せる。異様な数のPDCAを、短期間に回せるんです。

たとえば飲食店の立ち上げをしようとすると、どんなに頑張っても3か月から半年でPDCAが1回しか回せない。年に2〜3回しか成長の機会がないことになる。訪問販売はその何十倍もの密度で思考できる。それが習慣になったら、もう何をやっても改善することがデフォルトになってくるんですよね。

もし学生時代に戻っても、会社は作らないかもしれないけど、訪問販売は絶対やると思います。ドアが開いた後の第一声とか、視線をどのタイミングでバインダーに向けるか、目を合わせるタイミングはいつか——全部研究するんです。それくらい「科学」できる。

一年休学して、フィリピン留学も

3回生のときに一年休学もしていて、フィリピンへの留学も経験しました。そして、訪問販売の組織で一緒だった同期と会社を作って、学生向けの営業代行みたいなこともやっていました。

そんなことをしているうちに、こんな小さい会社でも経営するのは大変なのに、世の中どうなってるんだろうという感覚が生まれてきて。「一旦、社会人になってちゃんと修行しよう」と思って就職することにしました。

楽天からの独立

合宿で感じた「俺が勝てるとこ、一個もないわ」

新卒で楽天に入社しました。2年目に差し掛かったころ、知り合いが会社を作るというオファーをもらって悩んでいたんです。

そのタイミングで、その会社とパートナー企業との合宿に参加する機会があって。8人いたんですが、それまでの私は「新しい環境でも自分の能力を発揮できる場所がある、まあまあやっていける」という体感値があったんです。でもそこに行ったとき、「全員、マジで俺より優秀やな」と思ってしまったんですよ。「俺が勝てるとこ、一個もないわ」って。

このまま楽天にいたらどう成長していくか、という未来がすごく見えていました。。でも、こっちに行ったらワンチャン死ぬけど、めちゃくちゃ成長できそう。そういう二択だったときに、「こっちだ」ってなりました。

独立する前に、まずは圧倒的な成果を出せる存在へ 

そもそも私は、いつかは独立しようと決めていました。理由は大きく二つあります。一つは、自分の意思やビジョンに真っ直ぐ突き進みたいという強い想いがあったこと。そしてもう一つは、お金と時間の制約から解放され、より自由度の高い挑戦がしたかったことです。  この二つが、私のキャリアの原点であり、大きな軸でした。 

しかし、ただ形だけで独立しても意味はありません。しっかりと業績を伸ばし、自分がいなくても会社が自走して利益を生み出せる仕組みを作らなければ、本当の意味での自由は得られないと考えたのです。だからこそ、「独立するまでに、誰にも負けない圧倒的な強み(スキル)を身につける」というテーマを掲げました。例えばサッカー界のトッププレイヤーが持つ、唯一無二の武器のような状態をどう再現するか。それを常に考え、成長できる環境を選び続けてきました。 

楽天卒業後、知人が立ち上げた会社へ参画し、EC支援の事業部長として経験を積みました。そこで2年尽力した後、株式会社コマースファクトリーを創業しました。

実は、ECという領域を選んだのは結果論に過ぎません。もし前職が楽天でなければ、違う選択をしていた可能性もあります。私にとって事業内容は手段であり、それ以上に「どのような組織(会社)を作るか」ということの方が、遥かに重要だったのです。 

コマースファクトリーという会社

事業は「ネットで売るブランドの売上を伸ばすサポート」

ざっくり言うと、楽天市場やYahoo!ショッピング、TikTok Shopなどのプラットフォームを通じて、ネットで商品を売っているブランドの売上を伸ばすサポートです。マーケティング代行に近いですね。

ECのノウハウやスキルが差別化ポイントかというと、個人的にはそうは思っていないんです。それはどんどん変わっていくし、AIも入ってきてどんどんアップデートされる。差別化はむしろ、提供する「人」の温かさや、お客さんと二人三脚でやっていけるかどうか——クライアントへのコミットの仕方にあると思っています。

KPIを設定しない理由

社内に、個人に紐づくKPIがないんです。「今月はこの数字で」というのが特にない。なぜかというと、私が数字を嫌いなのもありますが(笑)、クライアントワークにおいて社内の売上やKPIを追うと、どこかのタイミングで必ずお客さんの利益とずれるからです。

「このAというアクションを取ったとき、お客さんの売上は下がるけど利益は増える、でも自社の売上は上がる」——そういう局面に立ったとき、社内KPIを追っていたら適切な提案ができなくなる。だから、追うべきはお客さんの売上とお客さんの利益、というシンプルな判断です。

KPIがない分、お客さんが課題に感じていることの解決にフォーカスして向き合える。お客さんから「話を聞いてもらえてありがとう」と言っていただけることも多くて、それが一番の評価だと思っています。

今期のテーマは「温かい文化と儲ける強さの両立」

今、創業6期目なんですが、社内でちょうど話しているのが「温かい文化と、儲ける強さをちゃんと両立しよう」ということです。過去5年は温かい文化にフォーカスしてきて、いい文化は作れてきた。でも企業として存続していくには、ちゃんと売上と利益を稼いでいかないといけない。

6期目・7期目の2年間で、数字を「追える」じゃなくて「作れる」くらいのチームに成熟していきたい。それが実現できれば、あとは勝手に伸びていくと思っています。

コマースファクトリーのコアにあるのは「持続可能な百年企業をどうつくるか」という問いです。事業内容よりも、継続的に組織が成長して永続し続けるものの、その「会社ってどういうものだろう」という問いに向き合い続けること。それがコマースファクトリーという会社の定義だと思っています。

採用費累計200万円で38名に

今のメンバーは38名(業務委託を除く)※2026年4月時点で、東京本社と鹿児島支社があります。採用費は5年間の累計でも200万円くらいしか使っていないんです。ほぼリファラルで、会社の雰囲気に惹かれて紹介してもらった人が多い。

新卒採用も毎年やっていて、即戦力かどうかよりも、本人のスタンスとカルチャーフィットを大事にしています。「ちゃんと頑張れる子であれば何でもいい」という感じで、やる気があれば渡す仕事はいくらでもある。今いるインターン生は、一人でAIを使った動画の量産を研究してくれたり、インドネシアのファッションブランドの日本展開のプロジェクトマネージャーを担ってくれたりしています。

営業組織がない、という逆張り

私は天邪鬼なところがあって、割と逆張りが好きなんです。KPIを設定しないとか、属性研修もしないとか。そして、私たちから能動的にアプローチする「営業」を一度もしたことがないんです。全部、紹介や提携。

こういう会社の作り方でちゃんと人が増えて規模が大きくなれば、「こういう会社のあり方もあるよ」というのを世の中に証明できると思っています。いろんな形があって、いろんな正解があって、世の中に出ている情報がすべて正義じゃない——それを自分で判断して選べる力が、学生のみなさんにとってもすごく重要だと思っています。

学生へのメッセージ

若いうちに稼ぐ力を身につける

後悔していることはほとんどありません。強いて言えば「もっと遊べばよかった」と思ったことは……ないですね(笑)。お金がないときの遊びって、大したことないじゃないですか。

経験をお金で買うのはすごく大事なことで、20代後半や30代になってお金ができてからの方がいい経験ができるんです。そのためにも、若いうちにお金を稼ぐ力を身につける方が、結果たくさん遊べる。私は若いうちに死ぬほど働いたから今があると思っているし、それがめちゃくちゃよかったです。

PDCAを高速で回せる環境を探して

学生のみなさんへのアドバイスで言うと、やっぱり「PDCAを速く、たくさん回せる環境」を見つけることだと思います。訪問販売はその最たる例で、1日に何百回も仮説と検証を繰り返せる。飲食店の立ち上げだと年間2〜3回しかPDCAが回せないけど、訪問販売なら1日で何十回も回せる。

訪問販売でなくてもいい。でも、たくさん試行錯誤できる環境に身を置くことが、成長する上で本質的に重要だと思っています。抽象的に言うと、人生は長い。20代前半はまだ夜明け前くらいで、しっかり立てる時期。その時期に、自分の欲求を満たすような行動を中長期でやっていく、それが大事だと思います。

編集後記

岡本さんのお話を聞いて、「成長」という言葉の解像度が一段上がった気がします。「チャレンジしろ」「海外に行け」といった漠然としたアドバイスではなく、「PDCAを短期間に何回回せるか」という、きわめて具体的な視点。訪問販売を1日300回のインターホンに分解して科学していた岡本さんらしい言葉でした。

また、KPIを設定せず、営業組織も持たず、採用費は5年で200万円ほどという会社の作り方も印象的でした。「キラキラしたものが正義ではない」という言葉は、情報があふれる就活生にこそ刺さるメッセージだと思います。株式会社コマースファクトリーのPodcast「THE ECオタク」もぜひ聴いてみてください。Podcast リンクはこちら