インタビュー

未来を創造できる子、美を愛する子をアートで育て、世界を幸せにする。

更新: 2026年9月17日
未来を創造できる子、美を愛する子をアートで育て、世界を幸せにする。
PROFILE
(株)アルティキッズジャパン 代表取締役
HIDERU

株式会社アルティキッズジャパンで代表取締役でアーティストとしても活動しているHIDERUです。東京都目黒区中目黒で、アート教室「アルティキッズ」を運営し、子どもの「心を育てる」教育に力を入れています。2011年の東日本大震災をきっかけに活動をはじめ、2019年に本格的な教室として立ち上げました。

東日本大震災がきっかけで生まれた教室

チャリティ絵本コンサートから始まった

私は元々、美術大学を卒業したのち、画家兼造型作家として活動していました。東日本大震災が起きたのは、ちょうど「今まで作家活動でたくさんの人にお世話になったり迷惑をかけてきた分、人に喜んでもらうための表現を仕事にしたい」と思うようになった頃でした。「被災した子どもたちのために何かできないか」と思い、現代音楽の演奏家と共に、生演奏と絵本の読み聞かせをメインとするチャリティ絵本コンサートを開きました。売上は全額を被災地に寄付し、その活動の中で、子どもたちが感動する姿を見て、心を強く動かされました。

社会貢献になるビジネスをつくりたかった

震災後も子どものためのワークショップを重ねるうち、これまで積み重ねてきた画家やアーティストとしてのキャリアを「直接的な社会貢献に繋がるビジネスにしたい」と考えるようになりました。そこで会社を立ち上げ、試行錯誤しながら中目黒でアート教室をスタートさせました。

技能よりも「心」を育てる教室

完成度よりプロセスを大切にする

世間にはいわゆる「アート教室」や「お絵描き教室」はたくさんあります。実際、それらの教室では、「下手だった子が半年でこんなにうまく描けるようになった」、「名門小学校に何人合格した」などのように、目に見える成果を売りにしていることが多いです。特に、私が教室を始めた2011年頃は、当時は、技術の上達や受験など、目に見える成果を打ち出す教室が多い印象でした。

しかし、弊社は創業当初から「心を育てる教室」として運営してきました。もちろん完成度の高い作品もできますが、それ以上に大切にしているのは、「その子だけのプロセス」です。なぜなら、「数字にはならないとしても、アートをするうえで一番大切なマインド面を育てたい」という思いがあるからです。

認知能力ではなく非認知能力を育てる

最近では「非認知能力」という言葉が広く知られるようになってきました。テストなどで測れる知的能力を「認知能力」と呼ぶのに対し、非認知能力は、感情や他者との関わりで重要になる力です。弊社は教室を始めた当初から、この非認知能力を育てることを大切にしてきました。どんな時代であっても、自分の力と感性でゼロから1を生み出せる子は、きっと活躍していけると考えているからです。

博物館の恐竜づくりからつながる指導内容

内容面でも、これまでの私自身のキャリアを生かしています。博物館向けの恐竜ロボットを造形してきた経験やクラブカルチャーの中での映像演出など最先端の表現もしてきたため、幅広い表現の引き出しを教室に持ち込んでいます。子どもたちひとりひとりに対するケアやフォローにも力を入れていて、レッスンの様子を毎回レポートにして届けるなど、子どもたちひとりひとりに向き合うことを大切にしています。

20年、30年先を見据えたビジョン

AI時代だからこそ、失われがちなものがある

現在、まさにAI時代が到来してきています。AIによって便利になる一方、情操教育上、また人格形成する上でも大切なものが失われがちだと感じています。アートの良いところは、「儚いものや壊れやすいものを大切にする心」が育つところです。「美しいものを大切にする心を持った子どもが増えれば、20年後、30年後には戦争もなくなり、平和な世界に近づくのではないか」という願いを込めて、長期スパンの平和革命のつもりで取り組んでいます。

全国展開、海外進出、そして芸術施設をつくりたい

具体的なビジョンとしては、現在は東京の中目黒に教室を構えていますが、今後は全国はもちろんのこと、いずれは海外への進出も視野に入れています。さらに、子どもたちのための芸術施設も作りたいと構想しています。将来、どんな人生を選ぶにしても、幼少期にアートに触れ、自身の手でものを生み出した体験は、発想力や独創性を培ううえできっと役に立つはずですから。自分の手で未来を創造できる力を持った子どもたちを増やしていく。それが事業を通して実現したい未来です。

 

準備に8割の時間をかける理由

現在、社員と外注、アルバイトを含めて、教室の運営にはある程度のメンバーが関わっています。一般的な絵画教室であれば、毎週使うものとしては、クレヨンや絵の具、画用紙くらいかと思いますが、弊社ではあらゆるアートを扱っています。空間全体を使った巨大な作品づくりをすることもあれば、お菓子の家を造ることもありますし、野外でのアートやフラワーアレンジメントをすることもあります。

まるで毎週イベントを開催しているかのような教室なので、子どもたちにとって「ちょうどよい難易度」かつ、クリエイティビティを発揮できる授業にするための準備には、かなりの労力や時間がかかります。教材づくりの準備が全体工数の8割ほどを占めているため、ここが一番大変なところかもしれません。

 

経営者として。プロダクトアウトとマーケットインの間で

私は小さいころから絵を描くのが好きで、大人になって仕事にしました。本当は「画家」という肩書きだけで食べていきたくて、フリーランスで活動していた時期もあります。芸術家として活動しながら経営者としても活動していることは、ある意味では、難しいことをビジネスにしているのかもしれません。

経営者には大きく2つのタイプがあると思っています。ひとつは、画家やアーティストに多い「プロダクトアウト」の考え方で、自分の創りたいものを作って、世間のニーズに関わらず売っていくタイプです。もうひとつは、世間のニーズをマーケティングして、そこから逆算して商品やサービスを作っていく「マーケットイン」のタイプです。そうは言えども、成功している経営者には、後者の傾向が多いように感じます。

自分のやりたいことを仕事にできる起業は、自由で本当に良いものだと思いますが、その分大変なことも数多く降りかかってきます。強いメンタルがあれば良いでしょうが、そうでない場合は、「いかに楽しめるか」を大切にできれば、それが「一番強い」のではないでしょうか。

学生に伝えたいこと

弊社の教室のメインは3歳~6歳の子どもたちです。子どもたちと関わる中で、「幼児期に培ったものは一生を左右する」と確信するようになりました。本来、子どもはみんな驚くほど自由な発想を持っています。それが年齢とともに『正解』や『常識』を意識するようになり、天才だった子がだんだん普通の子になってしまう。その姿をたくさん見てきました。

クリエイティブで最も重要になることは、「自由でいられるかどうか」、そして「どれだけワクワク楽しめるか」だと思っています。子どもたちのアートを見ていても、遊びに近い感覚で夢中になっている時ほど、すごい作品ができあがります。苦しんで頑張って作ったものより、楽しんだり夢中になったりして作ったもののほうが、良いものになる。今は「楽しんだ者勝ち」の時代になってきているように思います。

これから社会に出る学生にとっても、「いかに物事を楽しめるか」は、これからの時代のキーワードになるでしょう。もちろん、「物事を楽しむこと」は、「楽をすること」とは違います。つらい課題であっても「これは自分の人生に役立つ」と思えれば、少しポジティブな捉え方ができるはずです。同じ物事でも捉え方によって見え方は全く変わりますし、どう捉えるかは自分次第です。

アルティキッズについてよくある質問

どんな子どもにおすすめの教室ですか。

 弊社の教室のメインは3歳から6歳の子どもたちです。答えを教えるのではなく、思いきり個性を発揮してもらい、その子自身の発想やプロセスを1番大切にしたいと考えているため、自分なりの表現を自由に伸ばしていきたいと考える親御さんと子どもにぴったりだと思います。そして35万人もの不登校児がいる時代、アートでの心の居場所作りを常に考えています。

学生のうちからアートに触れる意味はありますか。

 あると思います。幼少期に自分の手でものを生み出す体験を重ねることは、将来どんな道に進むにしても、発想力や独創性を培ううえで役立ちます。起業を考えている学生にとっても、「ワクワクと物事を楽しむ姿勢」こそが、これからの時代を生きるヒントになるはずです。

編集後記

今回のインタビューを通して、HIDERUさんが2011年の震災をきっかけに、アートの力を社会貢献に繋げようとしてきた歩みがとても印象的でした。技能ではなく「心」を育てるという一貫した姿勢は、AI時代だからこそ響くものがあると感じます。学生起業を考えるうえでも、「楽しんだもの勝ち」という言葉は、私自身の背中を押してくれるようでした。20年、30年先を見据えた平和へのビジョンに、これからも注目していきたいです。