インタビュー

「地元には何もない」と思っていた自分が、徳島で会社を興すまで

「地元には何もない」と思っていた自分が、徳島で会社を興すまで
PROFILE
株式会社もちもちデザイン 代表取締役
谷澤勇

株式会社もちもちデザインで代表取締役をしている谷澤勇です。徳島県那賀町を拠点に、通販商材のLP制作からマスメディアの活用まで、広告に関することを一気通貫で支援する仕事をしています。20代で6社を渡り歩いたのち、この那賀町で創業しました。今回はその経緯や事業の強み、そして地方創生への思いまで、たっぷりお話しさせていただければと思います。

20代で6社を渡り歩いた

電気系から芸能事務所へ

高校と大学では電気系の工業系の分野を学んでいました。とはいえ、そのまま一つの仕事を続けてきたわけではありません。1社目はビルメンテナンスの仕事、2社目は芸能事務所でアイドルのマネジメントをしたり、曲を歌ったりしたりしていました。3社目は不動産の営業、4社目はデジタルサイネージの仕事、5社目が広告代理店です。そして6社目が、今のもちもちデザインという形になります。20代のうちに6社を経験してきたことになります。

広告代理店で見つけた楽しさ

大阪の大学を卒業してからそのまま大阪で就職して、12年ほど大阪で過ごしました。転々としてきたなかで、5社目の広告代理店の仕事がとても楽しくて、ようやく自分に合う仕事に巡り合えたと感じていました。それまでも将来は起業したいという思いがあり、仕事をしながら起業家の団体に参加したり、ライブ活動をしたりもしていました。

会社の倒産をきっかけに創業した

出産を控え、生活の確保を優先した

楽しく働いていた広告代理店だったのですが、ある日、会社が倒産することになってしまいました。この仕事をもっと続けたいという思いもあったなか、当時は結婚し出産を控えている状況でもありましたので、まずは生活の確保を優先しなくてはいけない状態でした。

大阪から地元・徳島へUターンした

もともと起業したいという思いを持っていたので、このタイミングで独立することを決めました。ただ、大阪にいたままでは生活費の確保がむずかしく、当面の生活も立ち行かなくなってしまいます。そこで地元である徳島県の実家へ帰ることを決心しました。

通販広告をまるごと支援する

LP制作から運用まで一気通貫で担う

事業内容としては広告代理店を営んでいます。主に健康食品や化粧品といった通販商品を扱うお客さまに向けて、LPが必要な場合はLPの制作を、広告のクリエイティブ周りも制作しています。ほかにも同梱物となるチラシやパンフレット、バナーなどの制作から、システムの提案や計測ツールの提案、広告媒体の提案や運用まで、何もない状態から一気通貫で支援できるところが特徴です。

マスメディアも扱える強み

強みとしては、まず私と妻の2人で創業した会社だという点があります。そのうえで、LP制作については10年以上の実績があり、テレビや新聞、ラジオといったマスメディアまで提案できるところが一つの強みです。逆にいえば特化しているわけではないので、何を依頼したらよいのか迷われるお客さまも少なくありません。ただ、LP制作の歴史自体は10年以上あるので、ローカルマーケティングの部分もあわせて補うことができます。

地方に刺さる媒体を知っている

例えば新聞メディアであれば、大手の読売新聞さんのような媒体から仕掛けていくと、地方では広報誌の方が読まれるということがよくあります。都市部で「これはいけるだろう」と思われる手法が、地方に行くと通用しないこともめずらしくありません。本当に地方に刺さる媒体や広告の形を知っているという点が、私たちの強みだと考えています。

廃校を活用したコワーキングスペース

桜谷小学校を管理している

地方創生の事業では、地域の草刈りや、祭りの企画といった地域に根づいた活動をおこなっています。また、130年以上の歴史があった旧桜谷小学校を活用したコワーキングスペース「シェアオフィス桜谷」の管理も担っており、平日を中心に常駐しています。ビジネスの交流の場や、大学の課外活動の場、子どもたちの勉強スペースとしても活用されています。

徳島大学と連携している

地元の徳島大学とも連携しており、地方創生という事業を掲げているものの、行政から予算をいただく程度で、大々的な収益化はまだできていません。ただ、今後はしっかりと移住者を増やすことも考えていきたいと思っています。

Uターンを増やすまちづくりをしたい

過去のキャリアも生かしたい

今後のビジョンとしては、地元の行政や町、徳島県に対して、Uターン者や移住者が戻ってくるような仕組みづくり、まちづくりをしたいと考えています。自社の広告事業とかけあわせて、PR動画の制作や商店街の復興といった部分でも、集客の支援をしていきたいです。個人的には、デジタルサイネージや芸能系の仕事など、これまで経験してきたキャリアもどうにか生かしていきたいと思っています。最近では住宅に関する相談を受けることも増えてきたので、総合的に見て移住者を増やすような施策に取り組んでいきたいというのが、ビジョンの一つです。

AIに飲まれないクリエイティブを磨く

普段の業務ではAIを活用しつつも、AIに飲まれない考え方を大切にしたいと思っています。おかげさまで、クリエイティブが少し尖っている「もちもちデザインらしさ」がおもしろいと言っていただくことも増えてきたので、そういった部分もこれから磨いていきたいです。

この会社のよくある質問

どんな方がもちもちデザインに向いていますか? 広告の知識よりも、まずはチャレンジすることを恐れない方だと思います。私自身、20代でいろいろな仕事を経験してきましたが、そのなかで見つけたことがたくさんあります。

未経験でも広告の仕事はできますか? 私も電気系の分野からまったく違う業界を渡り歩いてきたので、未経験からでも十分にやっていけると思います。大切なのは、今の仕事のコツをつかむまで続けてみることです。

学生に伝えたいこと

就職活動では自分が学んできた電気系の分野を生かせる仕事を選んだんですが、結局そこからは何度も転職を重ねてきました。今もやりたいことがはっきり見つかっているわけではない学生さんも多いと思いますが、いろいろなことに挑戦していくなかで、いずれ巡り合うものだと思っています。成功の反対は失敗ではなく、チャレンジしないことです。今のうちにたくさんチャレンジしてもらえたらと思います。

そのうえで一つだけ伝えたいのは、仕事のコツをつかむまでは、できるだけ続けてみてほしいということです。私自身、1年半から2年ほどのペースで転職を繰り返してきたので、結局「これが自分の専門です」と言えるものがなかなか見つかりませんでした。仕事のツボが見えてくるまでは、せっかく入った仕事を続けてみることをおすすめします。

最後にもう一つ、個人的なメッセージがあります。もし今、自分の地元には何もないと思っている方がいらっしゃいましたら、一度自分の地元をよく見てみてほしいのです。地元には、知らないだけで熱い思いを持って活動している大人や企業がたくさん存在します。私自身も大阪にいたころは、地元の徳島には帰りたくないと思っていました。実際に就職活動で地元の企業を見てみても、あまりよい会社がないと感じていたくらいです。ただそれは、単に知らなかっただけだったのです。東京や都会には魅力的な仕事がたくさんありますが、地方にも自分に合った仕事やキャリアが見つかるかもしれません。都会だけがすべてではないので、ぜひ地方にも目を向けてみてもらえたらと思います。

編集後記

今回のインタビューを通じて、20代で6社を経験したという谷澤さんのキャリアの厚みに驚きました。とくに「成功の反対はチャレンジしないこと」という言葉は、就職活動を控える身としてもとても刺さるものでした。地元を知らないだけで見えていなかった魅力に気づかせてくれるお話は、地方就職を考える学生にもぜひ届けたいと感じています。貴重なお話をありがとうございました。