バスケを仕事にすると決めた
選手ではなく指導者の道
私がバスケを本気でやったのは、中学校の部活から高校3年生までの6年間だけです。小学校のときはミニバスもやっておらず、大学は東洋大学に進んで、サークルで続けていました。全国大会にも出たことがなく、選手としては本当に普通です。それでも大学のときに、バスケを仕事にして一生食べていきたいと決意しました。小学生のころに教わった記憶がないので、もし教わっていたらどうなっていただろうという思いは、少しありましたね。
場所がないなら自分でつくる
20代のころから、バスケをできる場所が少ないと感じていました。そこで場所を自分で用意して、初心者の方やブランクがある方など、やる場所がない人に提供する仕事をしようと思い、サークルを始めたのがきっかけです。前職ではバスケのレンタルコートで、サークルやスクールの運営、大会の運営もしていました。その経験を外に押し出したような形です。そこからスクールも始めていきました。
静岡から関西へ
私は静岡県出身で、大学のキャンパスは群馬でした。その後は関東のバスケのイベント会社で働いていたのですが、その会社がなくなるという話が出たんです。どうしようかと考えていたころ、当時バスケのレンタルコートは大阪にしかなく、店長の枠が空いたと聞きました。それで26歳ごろに大阪へ行き、5年ほど働いたあとに、自分で始めることにしました。
参加者0人からの立ち上げ
初日の参加者は0人
サークルを始めたときの参加者は、3人だけでした。スクールは大阪府の大東市で一番最初に始めたのですが、チラシを配ったりいろいろやったのに、当日体育館へ行っても誰も参加してくれない状態でした。予約もほとんど入っていなかったと思います。知り合いのバスケ教室の方に相談して、やり方を聞いたうえで進めたのですが、それでもその状態だったので、すごく悩みました。
少しずつ増えた人数
それでも大人のサークルは、すぐに20人ほど集まってくれるようになりました。子どものほうは、最初に1人入ってくれたものの、1カ月もたたないうちにやめてしまい、また0人に戻ったんです。そのあとに4人入ってくれたあたりから、少しずつ増えていきました。体育館を借りて運営するイメージは、レンタルコートの経験からなんとなく持っていたので、人が集まるまでに、そこまで時間はかからなかったと思います。
半年は食べていけなかった
ただ、それだけでは食べていけませんでした。半年ほどは生活できるだけの売り上げが立たず、お金も借りました。一番の苦労は、そこだと思います。それでも当時は30歳で、結婚もしておらず、会社も辞めていて、失うものが特になかったんです。やれるだけやって、ダメだったら静岡に帰ろうくらいに思っていたので、いわゆる無敵の状態だったのだと思います。
1000人のスクールへ
目標はひとつ達成した
立ち上げから11年がたち、12年目になります。生徒数は約1000人くらいです。大阪・兵庫・京都の会場でスクールを開いていて、4歳から15歳までが対象になっています。小学生が一番多いです。大学のときに決めた、バスケで食べていくという目標は、結婚して子どももでき、普通に生活できている今、いったん達成できたと思っています。次の目標に向けて動いていくところです。
少人数制で成長を見届ける
会場は市営の体育館を定期的に使わせていただきながら運営しています。クラスは5人くらいのところもあれば、多くても1人のコーチが15〜20人くらいまでを教える少人数制です。コーチたちは、目の前の子どもたちがどれだけ成長したかに集中して、同時に自分もどれだけ成長できたかを確認しながら取り組んでいます。スタッフはアシスタントも合わせて約20名で、ほとんどがアルバイト雇用をさせていただいており、学生も多いです。
合宿や大会も実施
スクールは夕方5時くらいから始まって、1日に3クラスほど、夜の9時ごろまでおこないます。そのほかに、年に2回は合宿へ行き、年に1回は各会場対抗のバスケ大会もしています。バスケを通じて仲間ができて、その仲間とのコミュニケーションを通じて人として成長していく、子どもたちにはそんな体験もしてほしいと思っています。
人が成長し続ける環境を
弊社は、バスケを通じて生きる力を育てることを掲げています。スクールとしてバスケをうまくさせるのは当たり前で、プラスアルファで、仲間とのコミュニケーションや人としての成長を、みんなに体験してほしいんです。それは子どもだけでなく、指導者や大人も同じです。完璧な人間はいなくて、常にみんな成長途中ですし、私自身もまだまだ学ぶ部分が多いと思っています。バスケを通じて、人が成長し続けられる環境を、バスケ業界全体でつくっていけたらと考えています。
仲間を募集中
インターンから始まる
学生さんは、30日間のインターンから入ってもらうのが基本の流れです。30日間の指導を経たら、アシスタントコーチとして正式にアルバイトで採用しています。いきなりアシスタントコーチで入るのは、指導経験のある社会人の方がメインです。週1回の活動で時間もつくりやすく、就職活動のネタにもなると思います。正社員も募集していて、新卒も選択肢にはありますが、少数精鋭で考えています。会場も来年度に向けて増える予定です。
学生へのメッセージ
やってよかったと思える
私は大学3年生のころ、就職活動が始まっても、まったく就職したくなかったんです。好きなことで働けるなら働きたいなと思っていました。好きなことで仕事をしましょうとはよく言われますが、人生は1回きりです。いろんなことが犠牲になるかもしれませんが、自分が信じたものや面白いと思ったもの、こうしたいと思うものを実現するのは、すごく楽しいですよ。うまくいってもいかなくても、やってよかったと思えるはずなので、チャレンジ精神を持って社会に出てもらえたらうれしいです。
編集後記
バスケの選手ではなかった山口さんが、「バスケで食べていく」と決めて、参加者0人の日から1000人のスクールをつくったお話に、強く引き込まれました。とくに印象に残ったのは、失うものがなかったからこそ動けたというお話と、うまくいってもいかなくても「やってよかった」と思えるはず、という言葉です。私も就職活動を考える時期で、好きなことで働く道を選ぶことに怖さを感じていました。挑戦の先にある納得感の大きさを、教えていただいた気がします。まずは小さな一歩から、自分が面白いと思うことに動いてみようと思います。