インタビュー

「動機は不純でもいい」——旅への憧れから始まった海外添乗と、仲間と築いた会社の20年

「動機は不純でもいい」——旅への憧れから始まった海外添乗と、仲間と築いた会社の20年
PROFILE
株式会社マンデラ 代表取締役社長
金山 典裕

旅行会社の添乗員から、添乗のプロ集団へ

旅が好きで旅行会社に

社会に出て最初に働いたのは、ワールド航空サービスという旅行会社でした。もともと旅行に興味があって、旅行の会社だけを志望して入社したんです。いろいろな国に行けたらいいなと、漠然と思っていただけでした。

ところが入ってみると、営業と添乗は二足のわらじでセットなんだと、最初に強く言われまして。行ったこともない行き先に営業しなければならなかったり、入社1年未満で海外の添乗に出たりしていました。それでも、行ったことのない場所へ行けることが本当に楽しくて、そこが一番の魅力でしたね。

同期の誘いで創業へ

入社から年数が経つと後輩も入ってきて、自分が担当していた地域について、後輩に説明していく立場になりました。そんなとき、同期の梁瀬から声をかけてもらったんです。最初は旅行会社を違う形でやらないかという話でした。

結局その会社には9年勤めました。業界を見ていると、自社で添乗員を抱えているところもあれば、大手さんのように自社の添乗員ではないところもある。それなら添乗員の会社をつくって、自分たちで添乗員を教育・指導し、いろいろな会社に送り出そうと考えが変わっていきました。

今から20年前、2006年2月に梁瀬がまず会社を起こし、私は同年4月に最初の社員として入社しました。ほぼ2人でつくってきた会社ですね。

海外添乗に特化した「チームマンデラ」

海外添乗専門で20年

添乗員の会社は、大手から小さなところまでたくさんあります。そのなかで弊社は、海外添乗専門の会社として創業し、20年続けてきました。

添乗には国内と海外があり、国内で3年ほど経験を積んでから、海外に出るのが一般的なスタイルなんです。弊社は最初から海外添乗員として募集し、人柄などをしっかり見極めたうえで入ってもらいます。国内の添乗に行くこともありますね。

ただ、2年3年といった期間は設けていません。そのぶん指導の時間は長くなりますが、研修を含めて海外に行けるように、しっかり添乗員を育てています。

情報を共有し合うチーム

今、添乗員は40人ほど在籍しています。同じ行き先に行った人間がいれば、その人から話を聞く。直前に行った添乗員の話が一番わかりやすいですよね。

私もその国に行ったことはあるけれど、だいぶ前の話で細かいところは覚えていない、といったこともあります。私は歴史が好きなので、歴史的な背景は私が話して、細かいところは最近行った人間から聞く。その国に行くには下準備が欠かせないので、みんなで情報を持ち寄るんです。

私だけではなく、マンデラを一つのチームとして、みんなで盛り立てていこうという考え方が弊社の強みだと思います。

添乗員100人体制を目指して

感動を創造する添乗

弊社のスローガンは、ホームページにも出している「感動を創造する添乗®」です。これは登録商標にもなっている言葉で、お客様に感動していただけるような添乗をしようと、みんなに話をしています。

今後のビジョンとしては、まず添乗員の数を増やしたいと考えています。今は全体で40人ほどなので、今後5〜10年で100人体制にしていきたいですね。

旅行会社さんからツアーをいただいて添乗員を送るので、旅行会社さんとのお付き合いももっと厚くしなければなりません。人が増えるほど、一人ひとりがいろいろなところへ行ける環境もつくりやすくなるんです。

大手とは違う良さを磨く

もうひとつは、海外に特化した添乗業そのものです。20年前、旅行会社ではなく添乗員に特化した形で新規参入しました。

実はこの20年で、新しく入ってくる添乗員の会社はそれほど多くありません。参入のハードルが特別高いわけではなく、添乗員の派遣業として必要な許可はありますが、それだけが参入を難しくしているわけではないんです。

そのなかで弊社は、同じ規模の会社にはないようなサービスで、大手とは違うところを少しずつ改善していきたいと思っています。

シーズンで変わるツアー量

添乗員付きのツアーは、実はシーズンによって大きく変わります。添乗員付きのパックツアーはほとんどがヨーロッパで、ヨーロッパのよい時期は春先から秋口です。日本が暑い時期にはツアーがすごく増えるんですよね。

一方、ヨーロッパは秋から冬にかなり寒くなるので、中南米や南半球が多くなります。ただ、そちらに行くお客様はヨーロッパほど多くはありません。

ツアーの量は毎月変わるので、そのなかで少しでも多くの添乗員を送り出していきたいですね。基本的に1つのツアーに添乗員は1人で、人数が多い場合は2人つくこともあります。

インバウンドも視野に

添乗員付きツアーがこれから右肩上がりで増えていくかというと、正直疑問もあります。海外旅行に行く人自体が、右肩上がりに増えているわけではないからです。

とはいえ、ご年配の方が旅行に行くなら、添乗員がついていると安心ですよね。そういったお客様の層は増えていくと思います。

逆に、日本に来るインバウンドのお客様はすごい勢いで増えています。インバウンドについては、これからのビジョンとして考えていきたいところです。

逆境から生まれたもう1本の柱

コロナ禍でリラクゼーションへ

旅行業は海外の情勢に大きく左右される仕事です。海外に少しでも不安定な要素があれば、ツアーはなくなってしまいます。実際、コロナのときは、売上がほぼなくなってしまいました。そこで、旅行業や添乗員だけでなく、違う柱をつくる必要があると思ったんです。

同じサービス業として水面下でいろいろ考えて、落ち着いたのがリラクゼーションの事業でした。今は2つの店舗を運営していて、おかげさまで売上も伸びています。

2つの柱で波を越える

添乗の仕事は、繁忙期になると「このツアーに行けませんか」と日々追加の依頼が来ます。円安などに関係なく依頼が増える時期もあるんです。

シルバーウィークなどは本当に多くのお客様が出かけます。一方で、11月12月になるとパタッと減る。この落差がものすごく大きいんです。

リラクゼーションはそこまでのシーズナリティがなく、お客様もついてきてくれています。こちらもスタッフを増やしていく必要がありますが、添乗員を増やし、お付き合いする旅行会社やツアーの本数も増やしながら、2つの柱を並行して育てていきたいと考えています。

学生へのメッセージ

とことん考えて選ぶ

月並みかもしれませんが、自分が学生だったころのことも踏まえて伝えたいのは、今やりたいことをとことんまで考えて、自分の行き先を選んでほしいということです。弊社の門を叩いてくれる添乗員にも若い人がいますし、年齢は関係ありませんね。

今は転職が当たり前の時代かもしれません。それでも、初めから転職を考えることはしてほしくないんです。しんどいと思うくらい考えれば、何か答えは出るはず。違ったと思ったら、また変えればいい。一生に一度くらいは、自分のことをよくよく考える時期があってもいいと、この年になって思います。

笑顔で、自分の言葉で

私もそれほど得意ではないんですが、面接などでは自分の言葉で、笑顔で元気よく話してほしいですね。あまり緊張せずに、言いたいことを楽しそうに伝える。採用する側に立ってみると、楽しそうに話してくれる人のほうが、絶対に「この人」と思うんです。

どんな人なのかな、もっと話を聞きたいなと興味がわくじゃないですか。自分をアピールすることも含めて、そういう話し方をぜひ考えてみてください。

動機は不純でもいい

私自身、銀行や証券会社、メーカーではなく、旅行関係の仕事なら楽しいだろうという不純な動機で社会に出ました。

思うところは山ほどありましたが、自分で選んだことなので簡単にはやめられません。続けるうちに「こういうものか」と身についてきて、あっという間に9年経っていました。

添乗員の仕事は、ほかの業界と比べると特殊かもしれませんね。いいことも悪いこともあります。それでも、仕事でいろいろな国に行けることが、私にとっても梁瀬にとっても何より魅力でした。だから動機は不純でいいと思っています。

添乗員に向いている人とは

添乗員は、お客様とずっと一緒にいる仕事です。いろいろなお客様がいるので、それなりのリーダーシップが必要ですし、何より体力勝負ですね。そのうえで、ご一緒する方に「こんな話をしたら楽しいんじゃないか」とワクワクできる人が一番向いていると思います。

学生と社会人は違うかもしれません。私もアルバイトをいろいろ経験したつもりで社会に出ましたが、足りないことはたくさんありました。それでも、まずは気持ちが先でいい。私はそう思っています。

編集後記

「動機は不純でもいい」という金山社長の言葉に、肩の力がふっと抜けるのを感じました。私自身、就職活動では条件面ばかりに目が向きがちでした。しかし金山社長は、旅が好きという素直な気持ちから添乗の道に入り、9年の経験を経て仲間とともに会社をつくり上げてきました。

特に印象的だったのは、添乗員同士が情報を持ち寄る姿です。それぞれの経験を共有し、チーム全体で支え合う考え方は、学生起業に関心のある私にとっても大きなヒントになりました。貴重なお話をありがとうございます。