インタビュー

リーマンショックで知った「どんぶり勘定」の怖さ。事務SOLで日本から倒産をなくしたい

リーマンショックで知った「どんぶり勘定」の怖さ。事務SOLで日本から倒産をなくしたい
PROFILE
VIPソフトウェア株式会社 取締役
岡田 郁二

人に使われたくない、その思いが原点

子どもの頃から独立を志す

子どもの頃から、とにかく人に使われたくなかったんです。人の指図を受けるのがあまり好きではなくて、サラリーマンも嫌だなと思っていました。ただ、当時は今のように学生起業が簡単にできる時代ではありませんでした。それならまずは社会に出て力をつけようと考えて、新卒で就職する道を選びました。独立はあくまでゴールで、そこへ向かうための準備期間という位置づけでしたね。

多くの社長に会える営業会社へ

新卒で入ったのは、中小企業の経営者に数多く会える営業会社です。ビジョン図鑑さんのように、たくさんの社長と直接お会いしてお話しし、勉強したいと思ったのがきっかけでした。いろいろな方とお会いするなかで、自分は何をやっていくのかをずっと考えていて、そのときにたどり着いたのが人材関係かIT関係という2つの選択肢です。その後いくつかの職を経験して、起業に至りました。

憧れの経営者と3人で創業

弊社は、私と新卒で入った会社の後輩の2人で立ち上げようと考えたのが始まりです。ただ、2人とも脱サラで経営のことは何も知りませんでした。そこで声をかけたのが、営業時代のお客さんのなかで1番すごいと思った経営者です。いずれ一緒に仕事をしたいと思っていた方で、当時はすでに会社を売って引退されていました。その方に「一緒にやってくれないか」と持ちかけて、3人で創業したのが弊社です。今はその方に代表を務めてもらっていて、実質的には私の経営の師匠という存在です。現場の経営は、私と後輩の2人で担っています。

受託開発から自社プロダクトの会社へ

大手の開発を支えてきた

弊社の事業の中心は、システム開発です。わかりやすい例でいうと、NECさんや富士通さん、NTTデータさんのような会社が、大企業向けの大きなシステムをつくっていますよね。弊社はそういった大手さんとパートナーシップを結び、受注した仕事の一部分を開発するなど、協力関係を築きながらシステム開発をおこなってきました。これが長く弊社の生業になっています。

日本初の世界的サービスを

一方で今力を入れているのが、自社でつくって提供するサービス、俗にいう自社プロダクトです。アメリカにはGAFAと呼ばれる企業がありますよね。日本初のGAFAのように、自社のプロダクトだけで勝負できる会社を目指しています。受託開発だけに頼るのではなく、自分たちのサービスで勝負していきたい。それが、今の弊社が向かっている方向です。

リーマンショックで知った経営の本質

創業4期目を襲った試練

創業してから1番大変だったのは、リーマンショックです。起業してから右肩上がりで、毎年売上も利益も伸びていました。正直、「起業して売上や利益が上がらない経営者はどうかしている」くらいのおごりがあった時期です。その鼻をポキッと折られたのが、創業4期目に受けたリーマンショックの打撃でした。たくさんの会社が倒産したり、経営者がいなくなったりと、本当にいろいろなことが起きた時代です。

コロナとは比べものにならない

コロナ禍も大変でしたが、打撃を受けたのは外食産業やイベントなど一部の業界です。むしろIT業界はテレワークなどの環境整備が必要になって、横ばいか、むしろ伸びたくらいでした。リーマンショックはそうではなく、いわば全業界が外食産業のような状態になったんです。どの会社がいつ潰れてもおかしくない、そんな状況を乗り切るのが、本当に大変でした。

生き残れた理由は師匠の教え

私は生き延びることができました。でも周りには潰れてしまった会社や、いなくなってしまった経営者もいました。なぜ自分は生き延びられて、周りはダメだったのか。そのとき初めて、周りの経営者がどういう経営をしているのかを聞いてみました。そこでわかったのは、私は起業したときに師匠から教わったことを、言われた通りにやってきただけだということです。それが結果として、リーマンショックを乗り越える力になりました。

倒産した会社に共通する点

潰れた会社に共通していたのは、どんぶり勘定だったことです。売上はこのくらい、コストはこれくらいだから利益はこれくらいだろう、と大体で経営している。決算のときだけ税理士に「今年どうだった?」と聞いて、黒字だと思ったら赤字だったり、トントンだと思ったら儲かっていてベンツを買おうかと考えたり。そんな経営者が、今もたくさんいるんです。

儲かっていても潰れる

実際、日本の企業の7割弱が赤字で、倒産の約半分は黒字倒産だといわれています。儲かっているのに潰れてしまうんです。売掛で商売をしている会社は、たとえば建設業なら家やビルを建ててから代金を受け取りますよね。売上100億円の受注が決まっても、入金は3年後。その間に、200人を使ってビルを建てるなら、材料費や人件費は先に出ていきます。資金繰りを考えずに受注すると、お金が足りなくなって倒産してしまうわけです。

1週間の作業が3時間に

Excel管理が限界に

私は創業当初、師匠から「お金の管理は全部自分でやれ」と言われて、Excel(エクセル)で管理していました。ただ、社員が20人、30人、40人、50人と増えていくと、やることもどんどん増えていきます。税理士とのやり取りに使う資料をExcelで作るのに、1週間かかるようになってしまいました。データが膨大な量になって、正直めんどうでした。

社内用の統合業務システム

そこで思いついたのが、本業であるシステム開発の技術力を使うことです。弊社のエンジニアに頼んで、私のExcelを全部まとめた、1つですべてできるシステムを社内用につくりました。業界用語でいうERP(統合業務システム)です。社員管理、給与計算、勤怠管理、見積書、取引先管理、請求書、入出金管理、さらに顧客ごとや社員ごとの売上が見える経営管理まで、全部が1つにまとまっています。

どんぶり勘定ができなくなった

システムなので、ボタンを押せば給与計算も見積書も請求書も出てきます。1週間かかっていた作業が、3時間で終わるようになりました。今でいうDXです。給与計算ソフト、請求書のサービスと、目の前の作業を優先してバラバラに導入すると、かえって使いづらくなってしまいます。すべてを1つで管理するようになってから、私はどんぶり勘定をしたくてもできなくなりました。

事務SOLで日本から倒産をなくしたい

22期連続黒字を支えた仕組み

リーマンショックで周りの悲惨な状況を目の当たりにしたこともあって、その社内システムをサービス化しました。それが、クラウドサービスとして提供している「事務SOL」です。私はこれを使って、22期連続黒字、無借金経営を続けてきました。今23期目を迎えていますが、これは特別なことではありません。師匠に言われた通りにやっただけなので、私にできて他の人にできないことはないと思っています。

1ユーザー無料で提供する理由

事務SOLは今、1ユーザー無料で提供しています。理由は、日本から倒産する会社をなくしたいからです。事務SOLを使えば自然と管理会計ができるようになり、どんぶり勘定ができなくなるので、潰れにくくなる。実際、事務SOLを入れている会社で潰れたところはなく、みんな伸びています。日本には336万社あるといわれていて、そのすべてに事務SOLを入れたい。半分ボランティアのような気持ちで取り組んでいます。

経営は車の運転と同じ

経営は、車の運転と同じなんですよ。ハンドルとブレーキとアクセルがそろって、初めて安全に走れます。今の経営者の多くは、ハンドルとアクセルはあるけどブレーキがない、アクセルとブレーキはあるけどハンドルがない、という状態で経営しているんです。バックミラーやサイドミラーがない人もいます。毎月の売上や利益を知らないまま経営するというのは、そういうことなんです。

先月の売上と利益を言えるか

ぜひ社長にインタビューするときに聞いてみてほしいのが、「先月の売上と利益、何も見ないで言えますか?」という質問です。細かい数字まで言えなくていいんです。「売上は大体2億くらいで、利益は5,000万くらいかな」とざっくり言えれば、現状を把握して経営されている証拠です。逆に「先月は儲かったよ」と言いながら金額を答えられないのであれば、感覚で経営している、どんぶり経営の可能性が高いと思います。

中小企業でも使える価格で

数字の管理を続けるのは、正直めんどうです。バラバラのソフトで管理していると、情報を1つに集約するのが大変なんですよね。だから昔は、1つで全部できるシステムは大企業向けしかなく、何億、何十億という世界でした。それを中小企業でも使えるように、しかも中小企業でも使える価格帯で出したのが弊社です。無料で使えるものは、ほかにないと思います。みんなに使ってもらって、潰れないでいて欲しいという思いがあります。

日本からバックオフィスをなくす

企業同士がつながる仕組み

事務SOLには、LINEやSNSの友達機能のように、取引先ごとにつながる機能もあります。電子契約の次に来るといわれているのが、EDIという電子データの交換だけで受発注や契約を済ませる仕組みです。たとえば携帯電話の販売で「iPhoneを何台ください」とLINEでやり取りしても、データがなくなったり、どこで管理すればいいかわからなかったりしますよね。事務SOLを入れている会社同士なら、同じ画面で見積や受発注を確認して、ボタン1つでOK・NGを返せます。

次に必ず来る領域

弊社はまだ無名で力もないので、この仕組みを広めきれていません。でも、次に必ず来ると思っています。企業同士がつながれば、バックオフィスがいらなくなりますよね。まずはバックオフィスを楽にして黒字化を後押しする。その次に、日本の企業を全部事務SOLでつないで、営業やマーケティング活動もその上で簡単にできる仕組みをつくりたいと考えています。日本からバックオフィスをなくし、そういった概念を丸ごとDXすることが、私たちのビジョンです。

学生へのメッセージ

小さなことで諦めないで

今は格差が広がっているといわれますが、ITのおかげで、やりたいことは何でもできる時代になりました。学歴などは、大手ではまだ見られる部分があるかもしれません。でも、そんな小さなことで諦めないでほしいと思います。自分のやりたいことを、とにかくやってみてください。そうすれば、やりたいことは必ず実現します。

編集後記

岡田さんのお話で1番印象に残ったのは、「先月の売上と利益を何も見ないで言えますか」という問いかけです。私も学生ながら小さくビジネスに挑戦していますが、正直なところ、即答できる自信はありません。リーマンショックを乗り越えた背景にあったのは特別な才能ではなく、師匠の教えを愚直に守り、数字を把握し続けたことだったと知り、身が引き締まる思いでした。事務SOLを無料で提供してまで、日本から倒産をなくしたいという想いにも胸を打たれました。まずは自分の数字と向き合うところから始めてみます。