インタビュー

「稼働をひたむきに支える」——3,753名で挑む、店舗インフラの守り手

更新: 2026年9月29日
「稼働をひたむきに支える」——3,753名で挑む、店舗インフラの守り手
PROFILE
イオンディライトコネクト株式会社 代表取締役
金谷 暢晃

二つの会社が一つになった原点

イオングループ内における専門会社としての出自

当社はイオングループの施設管理事業を担う一員であり、ゼロから独立して起業したベンチャー企業とはその成り立ちやバックボーンが大きく異なります。現在のイオンディライトコネクト株式会社という形が発足したのは、2021年のことです。それ以前は、イオングループの中でビルメンテナンス事業を総合的に手がけるイオンディライト株式会社の傘下で、それぞれ異なる強みと専門性を持った2つの子会社として独立した運営が行われていました。

具体的には、日本全国の商業施設や各種店舗において専門的な日常・定期清掃業務を一手に引き受ける専門会社と、店舗の改装工事や各種設備のトラブル対応・修繕作業を専門とする会社の2社が存在していました。双方は提供するサービス内容やアプローチこそ異なっていましたが、現場での役割や支援する対象には大きな共通点がありました。

共通する客層と統合の必然性

この2社が対峙していたお客さまは、いずれも全国規模で何千、何万という単位で店舗を展開されている多店舗展開企業さまという共通点がありました。お客さま層も対象領域も共通しており、そうであれば統合したほうがよいとの判断から設立した会社が、現在のイオンディライトコネクトです。

別々の会社としてサービスを提供するよりも、両者の機能を統合した方がお客さまに対してより包括的で付加価値の高いソリューションを提供できるという判断に至ったのです。これは単なる組織の合体ではなく、清掃と設備という両輪を揃えることで、店舗運営をあらゆる角度からサポートできる体制への進化でした。

施設管理全般を一括で支えるワンストップ体制

現在の当社における主な事業領域は、多店舗展開企業さまが抱える建物や店舗の竣工後における「施設管理全般」の受託です。具体的には、設計・施工管理、設備管理、清掃業務、遠隔監視システムを用いたセキュリティやエネルギー管理、各種機器のメンテナンスに至るまで、店舗の付帯設備や衛生環境の維持に関わるあらゆる業務を網羅的に引き受けています。

さらに、平時のメンテナンスにとどまらず、予期せぬトラブルや異常事態への迅速な対応も私たちの重要な役割です。たとえば、昨今頻発している集中豪雨や台風によって店舗が浸水してしまったような局面では、すぐさま現地へ急行し、速やかな排水作業や設備復旧作業を実施します。店舗の営業を止めない、店舗がお客さまを迎え続けられるようにする。これこそが、私たちが現場で果たすべき使命だと思っています。

3,753人で挑む店舗インフラの最前線

現場を知る叩き上げとしての社長就任

私自身は社長に就任してから今年で3年目を迎えますが、その歩みは決して平坦なものではありませんでした。合併前に親会社へ出向し、帰任後は常務を経て社長に就任しました。まさに現場の最前線と組織の管理の双方に携わってきた経験が、今の経営判断の礎になっています。

異なる企業文化の統合と組織運営

就任後に最も苦心したのは、背景も文化も異なる2つの会社から集まった従業員のみなさんが、真に一つのチームとなり、同じベクトルに向かって足並みを揃えて業務に臨める組織文化を醸成することでした。当社には現在、数千名を超える従業員が在籍していますが、その多くは全国の現場を支えてくださっているパート・アルバイトのスタッフです。

清掃という事業の特性上、組織全体の人的構成比において現場を担うスタッフの割合が非常に大きくなります。このように膨大な数のメンバーを抱える組織では、経営陣や会社の目指すビジョン、理念といった思いが最末端の現場までしっかりと行き届き、共感を得るまでにどうしても一定の時間を要します。当時の混乱や統合過程において、現場のスタッフのみなさんには多大なる苦労をおかけしたという強い想いと反省があります。だからこそ、現場の一人ひとりが主役になれる環境づくりに注力しています。

パーパス「お客さまの店舗施設の稼働をひたむきに支える」に込めた想い

私たちのパーパスとして、「お客さまの店舗・施設の稼働をひたむきに支える」を掲げています。店舗が日常通りに営業を続けられる状態を維持し、いつでも気持ちよくお客さまをお迎えできるようにバックアップする。それこそが、私たちが社会や市場において存在する根本的な価値であり、果たすべき責務であると考えています。この言葉には、単に清掃や点検を行うだけでなく、店舗の運営を止めることなく、地域社会のインフラとしての役割を完遂させるという強い決意が込められています。

人手不足時代における省力化・技術導入の必要性

しかしながら、少子高齢化が進む日本国内においては、今後ますます深刻な労働力不足・人手不足が避けられません。今後は人手不足が一層深刻化し、人に依存した手法の継続は難しくなります。だからこそ私たちは、先端テクノロジーや清掃・点検ロボットなどのデジタル技術を積極的に導入し、人の手を補いながら業務効率と品質を極限まで高めていく必要があると確信しています。

現場での試行錯誤とPDCAサイクルの高速回転

ただし、新しいテクノロジーというのは、単に導入してマニュアルを配ればすぐに期待通りの結果や効果が得られるような単純なものではありません。実際の現場環境にいち早く投入し、日々の運用の中で使いながら、課題やノウハウ、実効性のあるデータを蓄積していくプロセスが不可欠です。現場における泥臭い試行錯誤を重ねて初めて、真に実用的なレベルへと昇華させることができると考えます。

だからこそ当社では、最先端の技術を恐れることなく速やかに現場へ実装し、実証と検証を重ね、即座にPDCAサイクルを回す文化を定着させようとしています。机上の論理にとどまらず、現場で本当に機能する形へと磨き上げていく取り組みに、現在は組織を挙げて全力で振り切っている段階です。

「根を深くする」時間の使い方

時間という最大の資源と挑戦の価値

現在51歳を迎えた私と、これから社会へ羽ばたいていく20代の若者とを比較したとき、最も決定的に異なっている資源は「時間」の保有量です。若い世代のみなさんは、人生においてほぼ無限と言っても差し支えないほどの潤沢な時間という資産を持っています。だからこそ、失敗することを恐れずに、関心のある分野や未知の領域へ果敢にチャレンジしてほしいと思っています。

だから、若いうちは失敗をたくさんしてもいいと思っています。若いうちの挑戦は、うまくいかなかったことさえも「糧」だと思っています。若さゆえに得られる経験は、将来の自分を形成するかけがえのない財産になるからです。

積み重ねが生み出す「根を深くする」キャリア思想

 

私の座右の銘は、「大樹深根」ですが、この言葉を遂げるための代償として、長い時間働くことをささげています。これは、長時間労働を推奨しているという話ではありませんが、何かを遂げるには、相応の行為が必要であるとのことであり、51歳の私は、朝一番に出社し時間を使うことを習慣化しています。これはあくまで、自らのパフォーマンスを最適化するための戦略的な時間の使い方に過ぎません。主体的に時間の使い方をコントロールすることが重要と考えています。

就職氷河期からのキャリア形成と偶発性の肯定

私たちが社会人としてスタートを切った時代は、世間から「就職超氷河期」と呼ばれた厳しい時期でした。当時は現在のように多彩な選択肢が存在していたわけではなく、ごく限られた既存の業界の中から進路を選ばざるを得ませんでした。そうした時代背景の中で、私は偶然にも前身の会社へアルバイトとして足を踏み入れました。そこから日々の業務に真摯に向き合い続けた結果、現在に至ります。

しかし、このように一見決まったレールが見えにくい時代であっても、地道な積み重ねと巡り合わせによって道が開けていく人間がいるという事実は、若い世代のみなさんにお伝えしておきたいのです。人生において何がきっかけとなり、どの経験が将来花開くかは事前には誰にも予測できません。だからこそ、自分の可能性を自分で限定することなく、あらゆる機会に対して貪欲に挑戦し、多様な体験を重ねていってほしいと切に願っています。

編集後記

今回のインタビューを通して、店舗を陰で支え続けるという仕事の重みと重要性をあらためて実感しました。普段何気なく利用している商業施設の裏側に、これほどまでに論理的かつ戦略的な経営の意志が宿っているとは驚きでした。特に「根を深くする」という言葉は、効率だけを追い求めがちな現代において、真の成長とは何かを問い直す強力な指針となるでしょう。金谷社長の力強くも誠実な言葉は、社会に出る準備をしている学生から、日々の業務に追われる現役世代まで、多くの人の心に響くはずです。貴重なお話をありがとうございました。