インタビュー

頑張れば、必ず見えてくる。学生起業家が挑んだ「海外」という景色

頑張れば、必ず見えてくる。学生起業家が挑んだ「海外」という景色
PROFILE
株式会社APOC 代表取締役
齋藤 峻輔

二度目の起業で見えたこと

好きから得意へ

株式会社APOCは、今年で4期目になります。学生時代に起業した会社では、アプリを開発し、事業売却を経験しました。その後、大学卒業後に株式会社APOCを立ち上げ、現在は28歳で2社目を経営しています。
1事業目を立ち上げた当時は、「自分が好きなこと」を軸に事業を考えていました。ただ、好きなことを形にするだけでは、事業として継続的に売上や利益を生み出すことの難しさを痛感したんです。その経験から、2事業目ではまず「事業としてきちんと売上と利益を生み出すこと」を重視するようになりました。そこで軸にしたのが、「自分が得意なこと」です。好きかどうかではなく、自分が価値を発揮できる領域で勝負することが、事業を成長させるうえで重要だと考えるようになりました。

現在取り組んでいるのは、海外向けのプレスリリース配信サービスです。少しずつ世界中の企業に利用いただけるようになり、グローバルな事業として形になってきたと実感しています。

 

海外挑戦の説得力

日本企業の海外進出を支援する立場だからこそ、自分たち自身も海外市場で事業を展開し続けていなければ、説得力は生まれないと思っています。

「自分たちも実際に挑戦してきたからこそ、きっとできますよ」と胸を張って言えるのは、支援会社としてアドバイスをするだけでなく、自分たちも事業会社として海外市場に向き合い続けているからです。実際に海外で事業を展開していると、机上では分からない壁や課題に何度も直面します。だからこそ、お客様が抱える不安や悩みにも実体験をもとに寄り添えると思っています。

 

海外市場ならではのビジネスの進め方

海外展開を始めて、一番驚いたのは商習慣の違いでした。日本では、メールを送って打ち合わせをして、社内で持ち帰って検討して、もう一度打ち合わせをして契約する、という流れが当たり前だと思っていたんです。でも海外では、メールでやり取りをして、相手から「お願いします」と返信が来たタイミングで決済リンクを送ると、その場でクレジットカード決済をしてくれることがありました。

しかも数百円の商品ではありません。数万円するサービスです。それでも、相手からすれば初めて知る会社にもかかわらず、事前決済でスムーズに支払ってくれるんです。最初は本当に驚きました。「そんなに簡単に決済してくれるんだ」と。同時に、自分が当たり前だと思っていた商談の進め方やビジネスの常識は、日本だけのものだったのかもしれない、と考えさせられる出来事でもありました。

染まりきらないことが武器

バイアスのない発想

海外に挑戦することに対して、ハードルが高いと感じる人は多いと思います。でも、実際には仕組みやサポートを活用すれば、そのハードルは大きく下げられます。例えば弊社では、プレスリリースを配信して海外メディアから取材のオファーが入った際には、日本語と英語の通訳を手配し、無料でミーティングの場を設けています。海外メディアとの接点づくりも、以前よりずっと挑戦しやすくなっているんです。海外企業へのインタビューも、工夫次第ではこれまでの半分ほどの労力で実現できるかもしれません。今まで当たり前だと思っていたやり方を一度疑い、新しい手段を取り入れてみる。そうした視点を持てることは、若い世代の大きな強みだと思っています。変にビジネスマンらしく振る舞おうとしなくてもいいんですよね。既存のやり方に染まりきっていないからこそ、新しい発想が生まれることもあります。私自身も、そういう柔軟さは大事にしたいと思っています。

 

情熱は後から育つ

目の前への集中

学生の方に伝えたいのは、必ずしも最初から明確な目標を持って頑張らなくてもいい、ということです。もし目標を決めることが難しかったとしても、まずは目の前にあることに一生懸命取り組むことが、その代わりになると思っています。「やりたいことが見つからない」と悩む人もいると思います。でも、そこを悩み続ける必要はないと思うんです。今できることに全力で向き合っていれば、少しずつ自分の得意なことや、やりたい方向性が見えてきます。もちろん、すぐに答えが出るわけではありません。でも、見えてこないとしたら、まだ向き合う量が足りないだけなのかもしれない。私はそう考えています。

情熱の積み重ね

「情熱は育てるもの」という言葉を聞いたことがありますが、最近まさにその通りだと感じています。もちろん、最初から強い興味や想いを持って始めるものもあります。1社目のアプリ事業は、もともとクーポンが好きだったことがきっかけで、自分自身の興味や情熱から始まった事業でした。そこから事業として向き合う中で、さらに理解が深まり、より大きな情熱へと育っていきました。一方で、世の中には最初から明確な情熱があるわけではなく、取り組む中で面白さや価値を見つけ、少しずつ情熱が育っていくこともあると思います。

目の前のことに本気で向き合い続けることで、自分でも気づかなかった興味や可能性が見えてくる。「こんなことにも情熱を持てるんだ」と、後から振り返って気づくこともあるのではないかと思っています。

 

世界基準の視点

以前は、日本市場である程度サービスを形にしてから海外へ出ていく方がいいと思っていました。でも、実際に海外に目を向けてみると、日本とはまったく違う商習慣や考え方があることに気づきました。大切なのは、最終的なゴールから逆算したときに、今やろうとしていることが本当に近道なのかを考えることだと思っています。「これが正しいステップだ」と思い込んでいても、実は遠回りになっている可能性もあります。だからこそ、常に「本当にこの進み方でいいのか」と自問自答することは大切にしています。

多言語が飛び交う環境

少人数の裁量

弊社のサービスでは、インフルエンサーの方も半分ほどが海外の方で、社内でも英語だけではなく、タイ語やアラビア語など、さまざまな言語が飛び交っています。大学生のインターンの方がAIを活用して翻訳をしながら海外の方へ返信したり、社内のオペレーションを自動化したりすることもあります。人数が少ないからこそ、一人ひとりが大きな裁量を持って挑戦できる環境があります。大学生であっても、「こうした方がいい」と思ったことを形にして、サービスに機能として追加していくことができます。グローバルな環境で働くことに興味がある方、自分たちのサービスをもっと良くしていきたい方、そして小さな日本企業から世界に挑戦することに面白さを感じてくれる方がいれば、ぜひインターンとして一緒に挑戦してもらえたらと思っています。

 

編集後記

学生起業からの事業売却、そして現在は海外進出支援。齋藤さんのお話からは、常に「自分たちがやってみせる」という姿勢が伝わってきました。とくに印象的だったのは「情念を持って全力を注げば後から見えてくるものがある」という言葉です。目標を立てることに悩みがちな私自身にとっても、目の前のことに向き合う大切さを、あらためて教えてもらったインタビューでした。