育てる楽しさから始まった創業
フリーアナウンサーから経営者へ
弊社は今年で17年目になります。もともと私自身がフリーアナウンサーとして15年程活動をしていました。その中で段々と自分がやってきた仕事を後輩に教えて仕事を依頼していくようになっていきました。後輩を育てているうちに「一緒にやっていきたい」と思うメンバーが数人出てきたことをきっかけに事務所を作り、更に法人化しアナウンスプロダクションを設立致しました。フリーアナウンサーが所属するタレントプロダクションとして、今は30名程のメンバーが所属しています。
実体験をそのまま事業へ
拠点は札幌です。道外でのお仕事もありますが、基本的には北海道内のお仕事がメインになります。自分自身の実経験やキャリアをそのまま事業に生かしながらやってきていますので、会社の設立や運営についてはあまり難しいと感じたことはありませんでした。
「話す」を仕事にするということ
レッスン「必要な準備」
弊社では、アナウンサーになるためのレッスンを行なっています。都度お互いのスケジュールを合わせてレッスンをしています。弊社に所属していただくことを前提に教えるレッスンもあれば、話し方やプレゼンが上手になりたいという一般の方に行うレッスンもあります。
アナウンサーのお仕事は技術職ですので、誰でもなりたいと思ってすぐになれるものではありません。滑舌や発声といった基本的なことは必ず必要になりますし、全くのゼロベースでアナウンサーになれる人はなかなかいないです。少しでもアナウンス経験のある方だと技術の習得の進みは早くなりますが、初めての方ですとそれなりに時間が掛かります。アナウンサーになるための才能や上達のスピードは人それぞれですが、レッスンを受けながら実際にお仕事も経験していただき、徐々に成長し、それに伴い次第に仕事量も増えていき、アナウンサーとして様々な場面で活躍できるようになっていきます。
札幌という「狭い世界」の強み
弊社の仕事内容は幅広く、メンバーはリポーターやパーソナリティ、ナレーターとして活躍している人もいれば司会者の人もいます。その他イベントスタッフや企業様の受付等も行なっています。
北海道内のフリーアナウンサー事務所として弊社は、所属人数が多いので仕事の数も多いと思います。札幌は広い東京とは違い、非常に狭い世界ですので、同業他社も多くはなく、業界の人達のほとんどが知り合いです。制作会社さんやテレビ局、ラジオ局の方、スタッフさんや出演者さんも身近な方達ばかりです。
逆転した会社の規模
「喋り手」中心の業界で
札幌の事務所は社長自身がアナウンサーであることが多く私自身もそうであります。私はアナウンサーとして第一線で活躍していくよりも、メンバーのマネジメントとプロデュースが好きでそこに全力を注いでいます。1人でも多くのメンバーがアナウンスのお仕事で生計を立てられること。自分自身フリーランスとして1人でやってきた苦しさや辛さを少しでも無くして、楽に実現してもらいたい、その想いでプロダクション運営を続けてきました。
その想いが会社を大きくすることができた要因の1つかもしれません。私が会社を設立する以前は大人数を抱えた大きな事務所さんがたくさんありました。その先輩事務所さん達をお手本にして教えていただきながら会社を築いてきました。長年続けた今は気付くと、諸先輩方の事務所に追いつくことができ人数はトップレベルに近づいていました。
なくならない仕事、増えるチャンス
「人が喋らなくていい」時代にはならない
AIが進み、だんだん人間の必要なくなっていくのではないかと危惧されますが、私たちのお仕事はなくならないと思っています。人が喋らなくてもいいということではなく、そうなったら全人類が要らなくなるのと同じ話になってしまいます。様々な「会」を盛り上げるという意味でも、「人」が対応しなければいけない部分は必ずあると思っています。
減ってきているジャンルの仕事はありますが、増えている仕事もあります。インターネット回線を通じて映像や音楽を届けるVOD(ビデオ・オン・デマンド)やOTT(オーバー・ザ・トップ)と呼ばれるサービス等、メディアやチャンネル数がどんどんと増え、声や顔を発信する場が多くなった分、私たちにとっても仕事のチャンスは増しています。
足し算で変化していく
新しい情報はどんどん取り入れて吸収していかなければならないと感じています。
新しい人材の採用については毎年様々な方が問い合わせして下さり、メンバーになってくれています。人の流れが変化していく中で、事務所内の新しいメンバーの声も大切にしながらプロデュースしていきたいと思っています。
大切にしているのは、今まで信じてやってきたことを急にやめたりするのではなく、足し算していくというイメージです。それが続けてこられた秘訣かなと思っています。
新しいモノをどんどん上乗せして足していく。続けられる以上は、これからもやっていきたいですね。
学生へ伝えたいこと
「好きなこと」と「できること」は違う
今の時代、本当の意味で新しいものをゼロから自分たちで作っていくのはすごく難しいと感じています。テクノロジーやAIも自分たちで作れるわけではないですし、あったらいいなと思うものは大体身近にありますよね。モノや情報に困らない時代だからこそ、逆に難しいんじゃないかなと思います。
個人の自由度が高く個性を大切にしてもらえる時代なのは羨ましい反面、自由は恐ろしいものでもあると感じてます。自分の中に軸をしっかりと持っていないと、広く浅くなってしまい、あれもこれもできるけれど、どれもずば抜けているわけではない、ということになりがちです。プライベートも授業も仕事もバイトも全部を大事にしようとすると結局突き詰められなくなってしまいます。何か1つでも良いので、とことん追求してみたら良いと思います。
取捨選択も大切です。何でも拾っていこうとして、色んなことをやってみるんだけど、その結果、結局どれも身についていないという現状に陥ってしまいます。TikTokやストーリーのような、展開の早いコンテンツに慣れていることも影響しているのかもしれません。私たちの世代は自分たちで考えて、本をみて、現地に行ってみて調べてと、時間を掛けて勉強していくしかありませんでした。時代が違うと言ってしまえばそれまでですが、情報過多な現代だからこそ、ひとつに的を絞って学んでいくことはとても重要だと思います。
自分が「これが好き」と思う感覚はもちろん大切です。ただ、好きなこととできることは全然違うんですよね。野球が好きだからといって野球選手になれるわけではないのと同じで、アニメが好きだから声優になりたいという学生さん達もたくさん見てきましたが、滑舌や発声、声の質といった生まれ持った部分は変えられない点もあります。好きであるという入り口はとても重要ですが、それが本当に自分にできることなのかどうかは考えなければいけないと思っています。
華やかに見える現場の裏側
タレント事務所に憧れを持ってもらえることが多いですが、実際は華やかというよりも体育会系なところが大きいです。司会席の演台があればその場に立ちっぱなしのことも多く、とても体力を使いますし、目立ちたいという感覚だけでは難しいです。終始笑顔で微笑みながら話し続けるというのも、なかなか大変なことです。
理想と現実にはギャップがあるので、そこを理解した上で、自分に何ができるのか、何が得意なのかを考えて欲しいと思います。
人間関係にも「覚悟」を
どんな会社にも、良い人ばかりがいるとは限りません。「262の法則」があります。どのような組織や集団でも、構成比が自然と「上位2割・中位6割・下位2割」に分かれます。例えば、10人のうち2人は好きな人、2人は合わない人、6人はなにも感じずに居られる人。
まさに法則の通りだと思います。合わない2人を排除したとしても、また別の2人がそこに浮上してくるだけなんですよね。自分が思う全員がいい人!という環境はそうそうないことなので多少の我慢は誰しもが必要です。
良いことばかりを期待しすぎると、そのギャップに潰れてしまうことがあります。嫌なこともあるものだと思っていた方が、社会に出てから人間関係を上手に構築していくことができると思います。
編集後記
今回のインタビューを通して、17年という時間の重みを感じました。フリーアナウンサーとしてのご自身の経験を、レッスンや事務所運営という形で次の世代につなげているお話がとても印象的です。「好きなことと、できることは違う」という言葉は、これから進路を考える私たち学生にとって、大きなヒントになると思いました。華やかに見える仕事の裏側にある努力や覚悟についても、ぜひあわせてチェックしてみてください。