インタビュー

スポーツに打ち込んだ学生時代、異業種を経てITエンジニアへ―遠回りしたからこそつくりたい、挑戦できる会社

スポーツに打ち込んだ学生時代、異業種を経てITエンジニアへ―遠回りしたからこそつくりたい、挑戦できる会社
PROFILE
株式会社ココロファン 代表取締役
齊木 裕太

部活漬けの高校時代とスポーツ専門学校への進学

引退せずに競技を続けた高校時代

高校では陸上部に所属していて、毎日部活漬けのスポーツ中心の生活を送っていました。周りが2年生、3年生になって受験を意識し始めるころも、私は引退せずに競技を続けていましたね。進路としては体育系の大学が第一志望で、体育大学を目指す学生向けの予備校にも通っていたのですが、競技に打ち込む一方で、受験勉強との両立には苦戦し、このまま体育大学を目指すのは難しいと感じる様になりました。

アスリートを育てるスポーツ専門学校へ

そこで見つけたのが、アスリートを養成するタイプのスポーツの専門学校です。今思えば少し珍しい進路だったかもしれません。専門学校の2年間は、1日のスケジュールの半分をトレーニングに使いながら、陸上競技の記録会や大会に出場して自分の実績を高めていくことに時間を使いました。このときに身についた、目標に向かって地道に積み重ねる姿勢は、エンジニアや経営者になった今にも繋がっていると思います。

遠回りをしながらたどり着いたIT業界

ピンとこなかった就職先の選択肢

専門学校卒業後の進路としては、スポーツ用品店への就職やジムのトレーナー、体力に自信があることを活かして自衛隊や消防士といった選択肢もありました。実際にいくつか話を聞きに行ったのですが、どれもあまりピンとこなかったんです。そこで一度、柔道整復師の道を志したこともありました。ただ、もう一度専門学校に通うための経済的な余裕はなかったため、学費を貯めるためにまずは、地元に近い整骨院で働く道を選びました。アルバイトからスタートし、その後は正社員として受付やサポート業務を担当しました。

分割払いで買った一台のパソコン

そうして働いていくうちに、IT業界を目指すことに落ち着きました。当時はパソコンすら持っていなかったので、まずは分割払いで一台購入しました。振り返ると、その一台が私のキャリアを大きく変える最初の一歩でしたね。まだスマートフォンの時代ではなく、ガラケーが主流で、パソコンも1家庭に1台あればいいくらいの時代でした。購入したパソコンでホームページ制作ツールやタイピングの練習を独学するうちに、ホームページ制作そのものに興味を持つようになったんです。

職業訓練校で学んだプログラミング

当時は今のようなエンジニア向けのオンラインスクールはなく、駅の近くにあるパソコン教室のような職業訓練校に通いました。そこで、将来の仕事の選択肢を広げるためにも、デザインだけでなくプログラミングまでできた方がいいとアドバイスを受けました。そのアドバイスをきっかけにして、技術を身につけて長く働けるエンジニアを目指し、C言語などのプログラミング言語を学んでいきました。結婚が早かったこともあって、早めに就職先を決める必要があり、それが今につながるシステムエンジニア派遣の業界です。最初に入った会社も、今の弊社と同じような業態でした。

「環境を変えたい」という思いでの参画

前の会社での葛藤

最初に入った会社に入社したのは2012年ごろなので、13〜14年ほど前の話です。実はIT業界に入る前、まったくの異業種で将来に悩んだ時期もありました。ものを売る仕事より、ものをつくる仕事の方が手に職がつくという父からのアドバイスもあり、ものづくりの方向を選びました。当時は生活費を稼ぐために、夜勤で倉庫業のアルバイトもしていました。商品の仕分けをしてトラックに積み込み、朝方に出発させるという仕事です。今の年齢では絶対にできないと思いますが、20代だったからこそできたことでもありました。この経験があったからこそ、働きながら勉強することや新しいキャリアに踏み出すことの大変さはよく分かります。あの時期に懸命に働いた経験も、今の自分を作っていると思います。

同期が立ち上げた会社への参画

今の会社である弊社は、私が創業したわけではありません。最初に入った会社の同期が立ち上げた会社で、私は途中から入社しました。最初にいた会社は、大きなホールディングスの傘下にある子会社のひとつで、グループ全体の方針に沿わなければならなかったり、エンジニアの環境を整えたくても予算が下りなかったりする状況がありました。その環境を変えたくて、同期が立ち上げたこの会社に、2019年10月に入社しています。

経営者になって変わったお金への意識

エンジニア時代には見えなかったもの

エンジニアとして働いていたころは会社全体の数字を意識する機会はなく、自分の仕事や生活に目を向けていました。ですが、経営者になってからは、自分のことだけでなく会社全体のことを考えなければならなくなりました。特に弊社のような派遣型の事業では、エンジニアが担当プロジェクトを離れて次の案件が決まるまでのあいだ、社内で「待機」という状態になります。お客様からお金をいただけない一方で、正社員として在籍している以上は会社から給与を支払わなければならず、この状態が続くと会社としては赤字になってしまいます。こうした収支をシビアに意識するようになったのは、経営者になってからの大きな変化です。

「自社でやりたい」という思いから生まれた参画理由

もともと社長になりたいという強い思いがあったわけではなく、当時はフリーランスのエンジニアとして独立したいと考えたこともありました。ただ、当時の収入水準を見て、今は無理をするべきではないと感じて見送りました。その後、前の会社でできなかったことをやりたい、自社サービスをつくっていきたいという思いから、この会社に参画することになりました。

自社プロダクトを持つことへのこだわり

派遣事業の強みと限界

弊社のメイン事業は、エンジニアの派遣事業と受託でのシステム開発です。売り上げという面では、エンジニアにお客様のプロジェクトへ参画してもらうことで、継続的な売り上げを見込める派遣事業の方が強いのは事実です。ただ、それだけではエンジニアが育ちにくいという課題があります。私たちのような会社は、エンドユーザーから直接仕事を受けている元請けの会社があり、その下の階層で仕事を受けることが多く、担当できる業務のポジションもある程度決まってしまいます。テストや実装を担う工程に留まりやすく、上流の設計や要件をまとめるような仕事を経験する機会は、どうしても限られてしまうんです。

信頼を積み重ねて描くこれからの展望

そこを改善するために目指しているのが、自社でプロダクトを持つことです。自社プロダクトがあれば、エンジニアに幅広い工程を経験してもらうことができますし、新しい技術にも積極的に挑戦しながら、自分たちのアイデアを形にする。そんな、エンジニアが仕事の面白さと成長を実感できる環境をつくりたいと考えています。もうひとつの方法として、大手企業と直接のコネクションを築くという道もありますが、これには長い年月がかかります。

弊社に入れば「この会社に入ったから、ITエンジニアとして着実に成長できた」と社員自身に感じてもらえる会社にしたいと思っています。案件に参画することだけをゴールにせず、その先のキャリアまで一緒に考える。そんな、普通のSES会社とは違う環境をつくっていきたいと考えています。

学生に伝えたいこと

好きなことをとことん追求する

学生のうちは、好きなことをとことん追求した方がいいと思っています。私の時代は、大学に入っていい会社に入ることが成功の一つの形とされていましたが、今は学歴以上に、その分野において高い知識を持つ人の方が重宝される時代になってきていると感じます。私の子どもは中学2年生ですが、最近VTuberに憧れて、私が使っていた古いパソコンでアバターを作ったりしています。もし本人が本当にやりたいことなら、若いうちにどんどん手を動かしてスキルを身につけた方が、将来につながる技術や、関連する会社に就職するための力にもなっていくと思います。そのため弊社でも同じように、社員が興味を持ったことや「やってみたい」と思ったことを、できる限り応援できる環境に整備していくことを目指しています。

興味を持ったら手を出してみる

私自身はスポーツにしか手を出していなかったので、正直もったいなかったと感じる部分もあります。とことん打ち込んだこと自体はよかったのですが、結局その方向で就職先を見つけたわけではなく、アスリートとして高い実績を残せたわけでもありませんでした。だからこそ、まずは興味を持ったら何でもやってみることを学生には伝えたいですね。やってみてうまくいくようなら、そこをさらに深掘りして知識を身につけていけばいいと思います。興味を持ったことにまず挑戦し、その中から自分の得意分野を見つけていく。その積み重ねが、将来の選択肢を広げる自分自身の武器になると思っています。まだ明確な目標が決まっていなくても、動きながら見つけていけばいい。私自身が遠回りをしてきたからこそ、そうした挑戦をする人を全力で応援したいと思います。

編集後記

高校時代の陸上競技から整骨院、そしてITエンジニアへとキャリアを重ねてこられた齊木さんのお話からは、遠回りに見える経験も、すべてが今につながっているのだと感じました。とくに「モノを売るよりモノをつくる仕事の方が手に職がつく」という言葉と、経営者になって初めて実感したというお金への向き合い方は、これから社会に出る私自身にとっても学びの多いものでした。得意分野という武器を増やす大切さを胸に、残りの学生生活を過ごしていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。