インタビュー

「1社で勝負する時代は終わる」複業100社を経験した男が、日本の雇用に仕掛ける勝負

「1社で勝負する時代は終わる」複業100社を経験した男が、日本の雇用に仕掛ける勝負
PROFILE
Color WiTh株式会社 代表取締役/複業アカデミー校長
若色 広大

note
https://note.com/cw_wakairokodai

外遊びとスポーツに明け暮れた子ども時代

中よりも外にいた子ども

小中学校の頃は、クラスの中心というわけではなかったのですが、手際よく遊ぶことが好きなタイプでした。家の中よりも外で遊んでいることの方が圧倒的に多かったです。引っ込み思案というよりは、アクティブなタイプだったと思います。

スポーツも好きで、水泳を6年、陸上を7〜8年、サッカーを3年ほど習っていました。とはいえ、続けたいという強い意志というよりは、部活動などの流れで自然と続いていたという方が近いかもしれません。平成元年生まれなので、「NINTENDO 64」のスマブラが流行っていた時期は家の中で遊ぶこともありましたが、基本的にはずっと外で過ごしていたイメージの方が強いです。

上場企業からベンチャーへ、そして起業へ

大手・ベンチャーを経て起業へ

キャリアは新卒でコカ・コーラボトラーズジャパンに入社することから始まりました。その後パソナに転職し、社長1人で立ち上げたばかりのベンチャー企業に飛び込んで事業を任せてもらい、最終的に起業に至るという経緯です。上場企業、ベンチャー企業と経験を重ねながら、だんだんと起業する流れになっていきました。

コカ・コーラ時代は体育会系の社風で、結果さえ出せば上の人たちも言うことを言ってこないという風潮がありました。そこで結果を出し、3~4年でエリア課長まで昇進しました。

パソナでは顧問事業の立ち上げに参画しました。売上1億、2億の時期にまだ7〜8人しかいない事業部に入り、3年後には50億という規模の市場を経験させてもらいました。その後、パソナの社長直轄で新規事業部の立ち上げを任され、最後まで事業をつくり上げました。

そこから、副業で関わっていた会社に「これから会社を大きくしたいから右腕になってほしい」と誘われ、創業メンバーとして参画します。当時からやりたかったのは、業務委託という働き方における「当たり外れ」をなくす事業でした。できる人たちであればチームを組めばいいし、できない人たちがどうすればできるようになるのかを、ずっと考え続けていたのです。それを事業にしたいと創業メンバーとして飛び込んだのですが、いつまでたっても、やりたい事業を任せてもらえませんでした。社長に相談してもだめなら、あとは起業するしかありません。やりたいことを実現できるのが起業だけだと気づいたとき、会社に所属することをやめようと決めました。

入社2日目に名刺百枚を渡された話

華やかに見えるキャリアの裏には、心が折れかけた経験もあります。コカ・コーラでは、入社2日目に突然名刺を渡され、先輩の車で錦糸町に降ろされて「この名刺100枚、今日なくなるまで帰れないから」と言われました。平成生まれでこの経験です。土日はどちらかがゴルフの送迎、平日は朝4時起きで先輩たちのコーヒーを用意する日々が続き、2年で血圧が30上がりました。

それでも、そうした先輩たちを驚かせるくらいの結果を出せば自分自身の成長を実感できると考え、乗り越えました。さらに自分を試したいという思いから転職を決意します。コカ・コーラ時代は誰もが知っている商品を扱っていたので、行動すれば行動しただけ売れるという世界でした。ところがパソナで、経営者向けにPRの仕方次第で売り方が変わる無形商材に出会ったとき、これまで培ってきたスキルがまったく通用しないことに気づかされます。

初めてのアポイントでは、経営者から「お前は何しに来たんだ。うちの会社のことも調べずに、俺の時間を無駄にするな」と言われました。今までの経験がまったく通じないと痛感し、入社半年を待たずに転職も考えたほどです。ただ、ここで1度逃げてしまったら、この仕事はそこで終わりだと思いました。転職活動を進め、実際に内定をもらった瞬間、「なぜ自分は転職しようとしているのか」を考え直し、負けてはいられないと思い直します。厳しい言葉をかけてきたその経営者に、あらためてアポイントを取り、最終的には契約まで取ることができました。振り返ると、これが唯一挫折しかけた瞬間だったと思います。

複数の仕事を本業にする「複業」という生き方

複の字は「複数」の複

現在は、複業職人と複業アカデミーという二つの事業を展開しています。「複業」の複は、複数の複です。副業のように「サブ」の仕事という意味合いではなく、複数の仕事すべてを本業として捉えるというマルチタスクの考え方を大切にしています。法人向けの事業が複業職人、個人向けの事業が複業アカデミーです。

複業職人は、10年以上業務委託の世界で培ってきた経験をもとに、実務を完遂できるメンバーだけを集めた職人チームを組んでいる事業です。ホームページに掲載しているメンバーは20人ほどですが、実際には300人ほどのネットワークがあります。プラットフォーム上で人を探す仕組みではなく、相談さえいただければ間違いのないメンバーでチームを組成できる体制です。チームの中心には必ず私自身が入り、人を紹介して終わりではなく、そのマネジメントに継続して関わり続けます。事業開発、広報・PR、営業の総責任者、マーケティング全般、人事評価制度の構築、採用など、幅広い領域を担当してきました。

職人になれるかどうかは、30分の面談で見極めます。実際にハンティングをするかどうかは、そこで決まります。ただし、面談を受けた1000人のうち、実際に加わってもらうのは数十人ほどと、かなり狭き門です。見ているのは、実績として挙げてくる事例のどこからどこまでを、その人自身がやってきたのかという点です。「50億円の売上に貢献した」という実績であっても、実際にその人が担っていた割合がどれくらいだったのかを、細かく質問を重ねて確認していきます。そこまでやってきたと確認できて初めて、チームに加わってもらえないかとお声がけをする流れです。

業務経歴書ではなくポートフォリオをつくる

複業アカデミーは、XやLinkedInで3万人ほどのフォロワーに向けて業務委託や複業について発信を続ける中で生まれた事業です。120社の業務委託経験をもとに発信をしていたところ、「どうすればそんなに仕事が取れるのか」「単価はどう決めているのか」といった相談がダイレクトメッセージで多数寄せられるようになりました。1つひとつに返信していましたが、量が増えて対応が難しくなり、「学校をつくらないのか」という声をいただいたことがきっかけで立ち上げました。

複業アカデミーの強みは、小学校時代からその人が経験してきたことを、ネガティブな内容からポジティブな内容まで、細かくヒアリングしていくところにあります。コーチングに近い部分もありますが、より踏み込んでヒアリングを重ね、具体を引き出していきます。そのうえで、業務委託という市場の中でどのスキルにあてはめられそうかを見出し、自分を強みで語れるポートフォリオへと落とし込んでいきます。スキルをハッシュタグのように言語化できると、世の中にある数百万件の業務委託案件の中から向いている仕事が見えてくるようになり、そこから案件を紹介する流れです。新しいスキルを身につけるのではなく、これまでの人生経験で培ってきたスキルを、今すぐお金に変えることを目指した学校です。月額9,800円からとなっており、価格帯としても業界最安クラスだと思います。

創業以降、経営で困ったことはほとんどない

変動費だけで回る経営体制

起業してから振り返ると、赤字を経験したことは1度もありません。副代表の高橋とはパソナ時代から新規事業をともにつくってきた、背中を預け合える仲間です。それ以外のメンバーは全員業務委託というかたちで、社員を採用していません。そのため、支払いはすべて固定費ではなく変動費として扱うことができ、事業の帳尻を柔軟に合わせられます。加えて、法人向け事業の売上はSNSからの問い合わせと取引先の経営者からの紹介だけで積み上がっており、営業活動を1度もしたことがありません。

強いて挙げるとすれば、代表として発信を止められないという点です。X をはじめとするSNSの投稿は、日々時間を取って自ら続けています。必要以上に泥臭いことをやり続けているという意味では、これが唯一大変な部分かもしれません。私たちがいなければ成立しない事業になっている自覚もあります。

終身雇用を、早く崩壊させたい

ビジョンは3つ

今後については、法人の取引先を増やしていくことよりも、日本の終身雇用そのものを変えていきたいと考えています。ビジョンは3つあります。

1つ目は、年収800万円で幸福とされる世界観が、円安ドル高の状況の中で変わりつつあるにもかかわらず、この30年間、日本の平均年収がほとんど上がっていないという現実です。世界を見渡しても、年収が上がっていないのは日本くらいだと感じています。1社で働き続けるという世界観は、今後間違いなく薄まっていくはずです。だからこそ、先んじて複業という働き方を広めていきたいと考えています。

2つ目は、やりたい仕事にすぐ挑戦できる世界をつくることです。私自身、人と関わる仕事を高校時代からずっと希望していましたが、営業と事業開発で成果を出し続けてきたこともあり、「人事よりもトップに立ってラインに出た方がいい」と言われ続け、なかなか希望を聞き入れてもらえませんでした。結局、起業して初めて人に関わる仕事に携われるようになりましたが、やりたいことにすぐには挑戦できませんでした。複業や業務委託であれば、やりたい仕事に今すぐ手を挙げることができます。この世界観を、これからも広めていきたいと考えています。

3つ目は、雇用にこだわり続ける日本の在り方です。海外では正社員ではなく業務委託で働くことが当たり前になっている一方、日本ではまだ雇用へのこだわりが根強く残っています。雇用しない方が社会保険の負担もなく、企業にとってもメリットが大きいはずですが、人口が減っていく日本では、いまだに採用そのものが売りになっています。複業という働き方は、空いた時間でお金を稼ぐという意味ではなく、その働き方そのものによって自分自身の働き方を1つ変えていくものだと捉えています。「副業」という文字の一部を変えて「複業」としているのも、サブではなくマルチタスクで働ける人を日本国内に増やしていきたいという思いからです。

条件面のみで働く場所を選んでしまうと、より良い条件が出てきた瞬間に辞めてしまったり、カルチャーに合わずに離れてしまったりすることが起きやすくなります。実際、業務委託のメンバーが50人ほどいる中で、本業が忙しいことを理由に「今月から仕事ができません」と言われた場合は、その場で契約を切るようにしています。本業が忙しくなる可能性がある時点で、その人自身がコミットするという考え方を持っていないと判断しているためです。この20年間で副業を容認する企業の割合は30%から65%まで増えており、これから複業という働き方は着実に広がっていくと感じています。

会社を踏み台にして、自分の生き方を選んでほしい

学生には踏み台にしてほしい

学生や20代前半の方に伝えたいのは、シンプルに「踏み台にしてほしい」ということです。勉強しに来て、成果を上げて、そこで見えてきた自分の夢を実現してくれれば、それで十分だと思っています。それは弊社である必要はなく、他の会社であっても構いません。1つの会社で働き続けることが当たり前ではなくなっていくこれからの時代だからこそ、その会社を踏み台にして自分がどう成長していくかを考えられる1年目を過ごしてほしいと思います。これは会社員という道を選ぶ場合でも変わりません。今は新卒を受け入れる企業がとても多い時代です。合わないと感じたら、早めに動くといいと思います。1年で違うと感じたなら、早く動いた方がいいはずです。第二新卒として受け入れてくれる会社はいくらでもありますし、複業という道を経験してみて違うと感じたら、いつでも戻ってくることができます。いろいろな経験を重ねながら、自分自身の生き方を探してほしいと思います。

相性がいいと感じるのは、自分なりのマインドを持っている人です。「こうなっていきたい」という思いが漠然としたものであっても構いません。その思いを強く語れる人は、言葉の裏にある思いをきちんと言語化できているので、仕事に対する姿勢も簡単にはぶれません。昨日言っていたことが今日には変わっているのではなく、一貫して同じことを語れる人の方が、相性がいいように感じます。

意識してほしいのは、目の前の条件を取るか、数年後・10年後を見据えて動くかという視点です。社名だけで判断してもいいのですが、結果的に成長できる環境を選んできたかどうかは、5年後、10年後にじわじわと効いてきます。私自身、コカ・コーラに残っていれば、年収1,000万円近くをもらえていたと思いますし、それも1つの生き方として否定はしません。ただ、そこにいることで自分の成長機会が失われ、なんとなく生きていけてしまうことに嫌気が差して、会社を辞めた身です。社会人になって得ていくスキルが、どういうかたちで誰かのためになっていくのかを、1社目、2社目と経験を重ねる中で、必ずどこかで立ち止まって考える時間を持ってほしいと思います。なんとなくで生き続けてほしくはありません。

そのためには、行動量を増やすことに尽きます。バカになってでも、先輩から何か言われても、まずは行動してみてほしいです。飛び込みの営業をしてきた経験からも、行動した先には必ず得られるものがあると実感しています。今は選べる環境だからこそ、隣の芝が青く見えてしまいがちですが、そこに甘んじることなく、自分自身が心から思う気持ちを、タイパよりも大切にしてほしいと思います。

編集後記

今回お話をうかがって印象的だったのは、若色さんが「副業」ではなく「複業」という文字にこだわり続けている理由でした。条件ではなく働き方そのものへの姿勢が、キャリアの軸を大きく左右するというお話は、これから社会に出る私たちにとっても、とても参考になるものでした。行動量が結果に比例するというお話は、就職活動を控える身としても背中を押していただいたように感じます。貴重なお話をありがとうございました。