インタビュー

「常識を全部取っ払え」——北京仕込みのマーケ感覚で、AI 時代の”選ばれる会社”をつくる

「常識を全部取っ払え」——北京仕込みのマーケ感覚で、AI 時代の”選ばれる会社”をつくる
PROFILE
COOD株式会社 代表取締役社長
鳥濱 尚真

中華圏との出会い

普通じゃ嫌だった高校生

私立の高校に通っていた頃から、なんとなく「普通じゃない何かをやりたい」という気持ちがあったんですよね。留学を考えた時に、英語圏だけじゃなくて中華圏という選択肢もあるんじゃないか、って思って。

当時、中国のイメージって決してよくなかったんです。でも「だからこそ行ってみたい」という気持ちがあって。ネットは繋がらない、SNS で流れてくる情報もほとんどない——この閉じた空間、面白いぞ、って。なんとなく自分の大雑把な性格と中華圏のノリが合うかもなと感じて、高校 3 年生の夏休みに中国本土の語学学校へ短期留学しました。

日本の「当たり前」が壊れた

向こうで驚いたのは、日本では当たり前のことが全く当たり前じゃないということ。電車に乗るときは先に降りる人を待つ——そんな常識が通じない。床屋さんで洗髪したら、自分でドライヤーを渡されてセルフで乾かすんです(笑)。

人口が多い分、一人ひとりに割かれる「人の価値」が薄い。そこで揉まれてみるのも悪くないな、って思ったんですよね。

北京で学んだこと

台湾・KADOKAWA でマーケに目覚める

大学は台湾の大学へ進学しました。中国本土と同じ中国語圏でも、台湾は全然違う空気があって面白くて。台湾滞在中に、KADOKAWA の学生インターンに入ったんです。

やっていたのは、台湾グルメ雑誌の取材同行や一眼レフでの撮影補助、そしてネット上への掲載作業。その経験の中で「こういうマーケティングっておもろいな」とどんどん興味が湧いてきて。インフルエンサーを店舗に呼んで Instagram に写真を投稿してもらう施策を見ながら、「動画になったらもっとインパクトあるんじゃないか」という感覚が生まれ始めたんですよね。

ライブコマースの衝撃

ちょうどその頃、TikTok(抖音(ドウイン))が中国国内で流行り始めた時代でした。日本にはまだリリースされていなくて。ライブ配信が始まったばかりの頃で、画面の向こうに人が殺到していて、しかも高額な車まで売れてしまう——常識的に考えたら実際に足を運んで体験してから買うものが、ライブ一発で売れていくわけです。その世界線がすごく面白いなと思って。

KADOKAWA の社員にも TikTok に行く人が増えてきて、ちょうど社内でもライブコマース施策が始まっていた。そのもっと先にあるショート動画という世界に可能性を感じて「北京行ってみようかな」となったんです。

4 か月間の試練

北京の企業へのインターンは、自腹でホテルに泊まって受けに行くスタイルでした。受かるかどうかもわからない。4 か月間のプログラムで、毎週テストがある。雑務から始まって、そこから採用枠に入れてもらえるかどうか試される、という本当に厳しい期間でした。

でも、なんとか採用してもらえて。そこからはライブコマース事業の担当として、法人向けに営業して回り、企画・運営・プロジェクト管理まで一気通貫でやっていました。あの時間は本当に面白かったですね。

独立という選択

社長の一言が背中を押した

ライブコマースの仕事をしていた頃、やり取りしていた会社の社長さんがいて。「マーケターがいなくて困ってる、いい人材いないかな」という話になって。TikTok の日本支社にそのまま移ることも考えたんですけど、業務内容が全然違うからすぐには難しい。そんなタイミングで「日本に来たらうちのマーケを手伝ってほしい」と言ってもらって、じゃあ帰ります、って(笑)。

その会社は美容系サプリメントを扱っていて、マーケが外注だらけだった。せっかくなら自社でしっかり構築したい、ということで一緒にやり始めました。サプリって飽和市場だから、影響力のあるインフルエンサーに投げた方がいいんじゃないか——そう考えて動いていく中で、自分でも会社をつくろうと決めました。それが COOD(クーディー)株式会社の始まりです。

会社名に込めた意味

COOD という社名は、「クール」と「イケてる」を組み合わせた造語です。AI が当たり前になっていく時代に、人々が「AI ってどんな会社がいいんだろう」と調べた時に、真っ先に名前が出てくる会社でありたい——そういう思いが込められています。

AIO/LLMO という新しい戦場

「AI に読み込まれる」ことが次の競争

弊社が今メインでやっているのは、AIO(AI Optimization)、あるいは LLMO(Large Language Model Optimization)と呼ばれる領域の支援です。

わかりやすく言うと、ChatGPT や Perplexity などの生成 AI に質問した時に、その AI が「おすすめはこの会社です」と答えてくれる状態をつくること。そのためにどういう記事を書き、どんな媒体に露出し、いかに AI にデータを読み込んでもらうか——を設計する仕事です。

従来の SEO と根本的にやることは大きくは変わらない。でも AI に読み込まれるための「型」がある。それを知っているかどうかで、結果に圧倒的な差が出ます。広告費をかけるよりコスパがいい、という実感が広まってきていますね。

エンジニア採用に使ったら問い合わせが来た

実際に成功した事例をお話しすると、あるオウンドメディアを運用している会社さんで、エンジニア採用に困っていた。そこで「エンジニア転職」と AI に打ち込んだ時にその会社がおすすめに出るよう、記事やメディアを設計して AI に読み込ませていったんです。そうしたら、実際に AI 経由で問い合わせが入ってくるようになった。採用文脈でも機能するんだということが実証できた事例ですね。

出張コンサルというスタイル

最近ちょっと面白いなと思っているのが、「1 回出社してほしい」という依頼が増えてきたこと。ネット越しに「これをお願いします」じゃなくて、実際にその会社に行って、社員さんと一緒に「AI でこれできないか」「どう運用していくか」を考えながらその場で動かしてみる。スピード感を持って現場に落とし込んで、ダメなら修正すればいい——そういうスタンスが喜ばれています。

これからのビジョン

100 人の組織をつくる

今は業務委託や外注先の方も含めて 10 人ほどで動いています。今月からアルバイトの採用も始めていて、契約先へのこまめな連絡フォローなど、細かいけれど大事な仕事を任せながら、「いいな」と思ったらそのまま採用していきたい。最終的には 100 人規模の組織を目指しています。

将来的には、自社で独自のプロダクトや仕組みを持って、世の中に直接影響を与えられる会社にしていきたい。そして社員が「ここに入ってよかった」と思える環境をつくりたい。週休 3 日を目指してますし、売り上げが上がれば社員にもしっかり還元していく、そういう会社にしていきたいと思っています。

編集後記

鳥濱さんとお話ししていて一番印象に残ったのは、「自分でしか解決できないことしか降ってこない」という言葉でした。学生のうちはつい、正解を探したり、安定を求めたりしがちですが、鳥濱さんは高校時代から「普通じゃないこと」を選び続けて、その経験が今の事業の土台になっています。AIO や LLMO という言葉はまだ耳慣れない方も多いと思いますが、「AI に選ばれる会社をつくる」という発想は、これからのビジネスの基本になっていくはずです。自分が熱量を持てることに全力で突き抜けてみること——その大切さを改めて感じた取材でした。