インタビュー

人とのご縁が導いた道。クロスコ株式会社の代表取締役社長が語る「事業は人づくり」

更新: 2026年9月10日
人とのご縁が導いた道。クロスコ株式会社の代表取締役社長が語る「事業は人づくり」
PROFILE
クロスコ株式会社 代表取締役社長
永澤 浩行

サラリーマンからの独立、そしてまたサラリーマンへ

35歳、インターネットの波に懸けて独立した

もともと私は、大学を卒業してからアパレル系の専門学校で教務として働くところからキャリアをはじめました。人を育てる仕事だったのですが、学校の中だけでは社会がわからないと思い、自ら学校を辞めてシステムエンジニアとして転職し、キャリアをやり直しています。

35歳になった1998年、いわゆるインターネットがビジネスツールとして広がりはじめた時期でした。その直後にドットコムバブルが起きるくらい、インターネットが非常に大きな波としてビジネスの現場を変えていく兆しがあったので、独立して自分で会社をつくりました。手がけていたのは、企業のWebサイトの運用支援です。事業用のWebサイトは、最新のトピックスや情報が常に更新されていないと意味がありません。当時は多くの企業が自前で更新のチームを持つのが難しく、私たちのような外部ベンダーが代わりに更新を支援するビジネスが主流でした。デザインからシステム周り、サーバーの管理から運用まで、Web関連をまるごとアウトソースで引き受ける会社を、1998年に立ち上げました。

Jストリームとのジョインからクロスコの代表へ

その事業は2006年に株式会社Jストリームにジョインし、私が立ち上げた会社はJストリームの子会社として、社名を変えながら今も継続しています。この会社の現社長も、もともと2000年代前半から私の部下だった人間です。私自身も親会社であるJストリームの社員として、制作の部長や、営業チームを率いて医療系の専門部隊をつくるといった仕事に携わってきました。

クロスコに移ったのは2018年です。もう少し事業展開を早めたい、活性化させたいという要望があり、私がJストリームから異動してきました。最初は副社長として入り、代表取締役社長になったのは2019年からです。今63歳になりましたが、35歳からずっと経営に携わっていることになります。

自分で事業をやりながら、Jストリームとジョインしてまたサラリーマンに戻るような形になったので、少し珍しいキャリアかもしれません。事業をやりたいというビジョンをもった、前のめりなネットワークの中で今の縁につながっているので、本当に人の縁があって今があると感じています。

映像・ライブ配信・ライブサポート、三本柱の事業

医療業界のライブ配信を数百件手がける

弊社はもともと、テレビ朝日をはじめとした報道系のテレビ局向けに、映像制作や映像配信を手がけてきた会社でした。私が代表になってからは、映像制作はもちろん継続しつつ、ライブ配信と、それに伴うライブサポートに力を入れています。

とくに多いのが、製薬企業様が展開する医療系のライブ配信です。ドクターが話し、聞き手もドクターという講演会を、年間で数百件おこなっています。先生は日本全国各地にいらっしゃるので、私たちのスタッフが機材を持って各地の会場や配信拠点まで出向いていく、というのが事業モデルです。会場の手配やケータリングの手配、会場のインターネット回線の確認や事前テスト、本番中に絵と音がきちんと流れているかの確認まで、このあたりまでをまとめてライブサポートと呼んでいます。

最近は、実際に会場に足を運ぶリアルの講演会と、オンラインでの配信を組み合わせたハイブリッド形式の講演会も多くなりました。会場のスピーカーの音をそのまま配信に流そうとすると、音が回ったり響いたりしてしまうので、現場に技術者が必要になる場面があります。複数の先生が登壇し、最後に全員でディスカッションするような構成の講演会もあるので、進行ディレクターとして現場に立ち会うところまで含めてご支援しています。

医療業界では、こうした講演会の準備を担っていたMR(医薬情報担当者)の数自体が減っていて、業務の幅も広がっているぶん、講演会の準備にまで手が回らなくなっているという背景があります。そのぶん私たちのようなサポートのニーズが上がってきているのだと感じています。

AIを使ったDX(AX)化にも力を入れている

映像制作、ライブ配信、ライブサポート、いずれも労働集約型のビジネスなので、人数によって売上の規模が左右されてしまう面があります。そこで最近力を入れているのが、各事業のAX、つまりAIを使ったDX化です。

たとえば、講演会で話した内容をほぼリアルタイムで字幕にできるAI字幕というサービスを提供しています。ZOOMやTEAMSといったテレビ会議システムにも字幕機能はついていますが、専門用語が多い業界だとどうしても誤変換が増えてしまうんですよね。私たちのAI字幕は、医療用語など各業界の専門用語に特化した変換ができるように取り組んでいます。耳で聞くだけのライブ配信と、字幕であわせて活字が見えるライブ配信とでは、視聴者の記憶に残り方が変わってきます。AIをうまく活用しながら、記憶に残るライブ配信を目指していきたいと考えています。

これからのクロスコが目指す先

人材ではなく「人才」を育てたい

私にとって一番重要なのは、人を育てることだと思っています。今もクロスコでは、粒ぞろいの人材というのをテーマに、人材教育を意識した経営をおこなっています。人材の「材」を、材料の材ではなく才能の才と書く「人才」だと私は考えているんですよね。

今の20代、30代の方々は、一人ひとりがキャラを立てて、才能をもたないと生き抜きにくいくらい難しい時代になっていると思います。AIがこれだけ普及してくると、人の代わりに働いてくれる職種もどんどん増えていきますから、それぞれのキャラクターや才能、感度が高くないと、これからの社会は生き抜いていけないのではないかと感じています。だからこそ、人材教育にはとても注目していて、これからの事業はやはり人づくりだと思っています。

経営の神様といわれる松下幸之助さんも、1970年代からすでに「事業は人なり」とおっしゃっていました。今も昔も、事業は人づくりなんですよね。いい人がいる会社に、いい事業が紐づくと思っています。

「凡事徹底」を胸に、事業を次の世代へつなげる

弊社のモットーは「凡事徹底」です。当たり前のことを当たり前にできる力のことですが、これがなかなか難しいので、スローガンとして掲げています。ただ、当たり前の中身は時代によって変わっていくものです。たとえば映像制作でいうと、昔はカメラを回すとみんな映りたくて集まってきましたが、今は肖像権の問題も出てくる時代になりました。当たり前は永久に同じものが続いていくわけではなく、時代に即した当たり前を当たり前に実行していくことこそ、本当に大事で難しいことだと思っています。

私自身、この40年ほど仕事をしてきて、エンジニアの時代も教務の時代も、仕事が楽しくてしかたがありませんでした。お客様の笑顔や評価をいただけることに、仕事の楽しさを感じてきたんですよね。その楽しさを、社員のみなさんにも知ってもらいたいと思っています。

残念ながら、私もあと10年ほどでこの会社にはいないと思います。それでも、向こう30年、今の事業やサービスが継続できて、また30年後、次の30年へとサイクルがつながっていけば、理論上はクロスコの事業がずっと続いていけますし、その中で生き生きと楽しみながら働く人がつながっていくと思います。30年後にはAIも別の技術に置き換わっているかもしれませんが、仕事の楽しみや喜び、お客様に喜んでいただけるやりがいを伝えていけるような会社でありたいと考えています。

編集後記

今回、クロスコ株式会社の代表取締役社長、永澤浩行様に取材させていただきました。独立と、また会社に戻るという一見遠回りに見えるキャリアの選択が、すべて人とのご縁でつながっているというお話がとても印象的でした。人材ではなく「人才」という捉え方や、時代に合わせて当たり前を更新し続ける「凡事徹底」という考え方は、経営だけでなく学生の私たちが働き方を考えるうえでも、多くのヒントをいただけるお話だったと感じています。貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。