将来像を模索していた学生時代
身近な選択肢から選んだ公務員という道
学生時代は、自分が将来どのような仕事をしたいのか、まだ明確には描けていませんでした。大学は数学科で、周囲には数学の教師や公務員を目指す人が多く、私自身もその中で進路を考えていました。数学教師になる自分の姿はイメージできなかった一方で、当時は他に明確な選択肢が見えていたわけでもなく、身近な進路の一つだった公務員を選び、豊島区役所に就職しました。
豊島区役所での5年間
区役所での勤務は5年間続けました。特別区の職員として都市計画課に配属になり、まちづくりの仕事を担当していました。JRや西武鉄道、東京メトロ、東武鉄道といった企業や地元の地権者などと関わりながら、再開発や駅整備などを行う仕事です。民間企業の方と打ち合わせをする機会が多い部署で、この時期はとても楽しく働いていました。
働き方について考えるようになったきっかけ
その後、町会や自治会に関わる部署へ異動し、夏祭りや防災訓練への補助金など、地域に密着した業務を担当しました。都市計画課とは仕事の進め方や求められる役割が大きく異なり、この経験を通じて、自分はより裁量を持ち、自ら考えて動ける環境にやりがいを感じるのだと気づきました。将来の働き方を考える中で、次第に転職や、その先の独立も意識するようになりました。
起業を志した理由
将来の独立を見据えた転職
転職を考える中で、単に環境を変えるだけではなく、将来的に自分で事業をつくることも視野に入れるようになりました。そこで、不動産の分野で幅広い実務を経験したいと考え、最初の転職先として恵比寿にある地場の不動産会社を選びました。不動産業界で独立するための経験を積みたいと考えたからです。
営業をしながら気づいた業界の課題
当時は不動産会社をつくって起業することを考えていましたが、実際に売買仲介営業の現場を経験する中で、別の大きな課題に気づきました。それが、営業ノウハウや実務知識が個人の経験に依存しやすく、体系的なマニュアルや教育の仕組みに改善の余地があることです。私自身も公務員から不動産営業へ転職し、先輩や周囲の仕事を見ながら、実務の中で学んでいきました。全国で似た業務が行われているにもかかわらず、知識やノウハウが会社ごと、営業担当者ごとに蓄積されている状況を見て、共通して活用できる教育や仕組みがあれば、業界全体の底上げにつながるのではないかと考えるようになりました。これが、不動産会社ではなく、不動産会社に教育や営業の仕組みを届ける現在の事業へと方向性が変わったきっかけです。
「プロパキャンプ」が目指す不動産営業のかたち
DXと研修、二つの軸で支援する
現在展開しているサービスが「プロパキャンプ」です。不動産会社や住宅会社などを対象に、営業と教育の仕組みづくりを支援しています。事業の軸は大きく二つあります。
ひとつは「プロパキャンプDX」で、営業活動に効率よく専念できる環境をつくるため、DX構築のコンサルティングを行っています。
もうひとつは「プロパキャンプ研修」です。「こう言われたらこう切り返す」といったテクニック論中心の営業研修ではなく、実際の顧客反響をもとにしたケーススタディを通じて、何をヒアリングすべきか、資金計画をどう組み立てるか、失注につながるボトルネックをどう先回りして解消するかを考えます。
こうした実践を通じて、営業プロセスをロジカルに組み立てるための思考力を身につける研修です。今後は、人材開発支援助成金の対象として活用いただける体制づくりも進めています。
経験に加えて専門知識が求められる仕事
不動産営業のやりがいであり難しさでもあるのが、法律や税金をはじめとする幅広い専門知識が求められることです。営業では、熱意やレスポンスの速さももちろん大切ですが、経験を重ねるほど、相続や共有持分など複雑な相談に対応するための知識が必要になります。こうした専門性を身につけることで、お客様に提供できる価値も大きくなり、不動産のプロとして仕事の面白さも深まっていきます。一方で、そこにたどり着くまでの学習負荷が高いことは、この業界の課題の一つだと考えています。
手続きの無駄をゼロにするというミッション
中小企業が多い業界の構造的な課題
弊社のミッションは、住宅・不動産購入における手続きの無駄をゼロにすることです。そのために目指しているビジョンが「誰でも即戦力になれる仕組み」をつくることです。宅地建物取引業の免許を持つ事業者は全国に10万社以上ありますが、その多くは中小規模の事業者です。というのも、この業界は比較的独立しやすく、小規模な事業者が多いという特徴があります。会社の規模が大きくなればマニュアルなどの体制整備が進みやすいのですが、業界の特性上、各社が単独で教育体制やマニュアルを整備することが難しいケースも少なくありません。プロパキャンプDXと研修の仕組みを全国に広げていくことで、不動産営業に携わる方々にとっても、お客様にとっても、気持ちよく取引ができる業界にしていきたいと考えています。現在は私自身が中心となってコンサルティングや研修を提供しながら、より多くの企業を支援できるよう、サービス提供の仕組み化も進めています。
学生に伝えたいこと
自分に合う働き方は、体験の中で見えてくる
最初にお話ししたとおり、私自身も学生時代は、自分にどのような仕事や働き方が合っているのか、まだよく分かっていませんでした。だからこそ、今就職活動をしている方には、できるだけ多くの選択肢に触れながら、自分なりの判断軸を見つけてほしいと思っています。業界研究として情報を調べるだけでは、自分にどの業界が合っているのかはなかなかわかりません。給料や福利厚生といった条件の良さだけで会社を選んでしまうと、私自身がそうだったように、条件が整っていても自分に合わないということも起こり得ます。実際、公務員時代は福利厚生や待遇は整っていましたが、その環境が自分に合うかどうかは別の問題でした。その後、私は転職し、独立の道を選びました。アルバイトやインターンなど、学生のうちに実際に働く場をいくつも経験しておくことで、自分にはどんな会社、どんな働き方が合っているのかという判断基準が少しずつ見えてくると思います。頭で考えるだけでなく、なるべく多くの会社を実際に体験してみることが、後悔のない選択につながるのではないかと思います。
編集後記
学生時代には将来像を明確に描けていなかったというお話から始まった今回のインタビューでしたが、公務員時代の経験や、不動産営業の現場で見つけた業界の課題が現在の事業につながっていく過程がとても印象的でした。とくに「頭で調べるだけでなく実際に体験する」というメッセージは、これから就職活動を進める私自身にとっても大切な指針になりました。インターンなどを通じて、自分に合う働き方を見極めていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。