インタビュー

4,000万円の借金を乗り越えて ― 頭の良さより行動量。29歳が語る「勝てる事業」のつくり方

更新: 2026年9月9日
4,000万円の借金を乗り越えて ― 頭の良さより行動量。29歳が語る「勝てる事業」のつくり方
PROFILE
株式会社アカンパニーテクノロジーズ 代表取締役
高野 悠

大学生活が嫌いだった学生時代

「人生の夏休み」ではなく人生を決める4年間

私は1996年生まれの29歳で、明治大学の付属校である明大中野からそのまま明治大学に進学しました。実をいうと、入学前からずっと大学に行きたくないと言っていたくらい、大学生活そのものが好きではなかったんです。よく大学の4年間は「人生の夏休み」と表現されますが、私にとってはむしろ逆で、この4年間で一生が決まってしまうという感覚がありました。所属していた情報コミュニケーション学部は、周りが遊ぶことしか考えていないように見えて、正直がっかりしてしまった部分もありました。

シリコンバレーへの憧れとビジネスコンテスト

ラグビー部にも所属していましたが、3年生まできちんとやりきれなかったこともあり、全力投球できるものをずっと探していました。そんなときに憧れたのが、スティーブ・ジョブズのようなシリコンバレーの起業家たちです。若くてもITで世界を変えられる可能性があるという姿がかっこよく見えて、いろいろなことに挑戦するようになりました。最終的にたどり着いたのがビジネスコンテストで、優勝して100万円ほどの賞金をいただき、そのまま法人登記をしました。2016年の頃です。今振り返ると、崇高な理念があったわけではなく、大学やラグビーで活躍できなかったぶんのエネルギーを、どこかにぶつけたかっただけなのだと思います。

一社目での大失敗、4,000万円の借金

起業ブームの波に乗った一社目

法人登記をした当時は、起業ブームのまっただ中でした。ライバルは多かったものの、若手にも投資家がついてくれる時代で、最初に1億円弱を調達することができました。ただ、営業経験もなく、下地を積まないまま事業を広げてしまったんです。婚活メディアやマッチングアプリなど、当時流行していた領域にいくつも手を出しましたが、結果的にはうまくいかず、お金をすべて使い果たしてしまいました。

個人保証で残った借金と、捨てたプライド

銀行から借り入れる際に必要な個人保証というかたちで資金を調達していたため、会社の負債ではなく個人の借金として、約4,000万円が残ってしまいました。ただ、正直にいうと、お金そのものよりも、周りの期待に応えられなかったことのほうがつらかったんです。社長と呼ばれていたプライドも、学歴も、すべて捨てて、週80時間働くと決めました。業務委託というかたちで、いろいろな社長に「何でもやります」と自ら営業をかけ、1社ずつ契約を積み上げながら、借金を返済していきました。

コロナ禍で見つけた新しい事業の芽

セミナーができなくなった企業からの相談

借金返済のために業務委託で働いていたころ、コロナ禍がやってきました。企業がよく開いていたセミナーが軒並み開催できなくなり、出社もできない状況の中で、常識にとらわれていなかったからこそ、オンラインでの解決策をつくれるのではないかと考えました。そこで取り組んだのが、日本でも早い時期のウェビナー支援です。

行政や医師会からの声がきっかけに

ウェビナーという手段を提案したところ、行政や医師会のような、比較的かたい組織からも相談を受けるようになりました。オンラインでできるという実例を積み重ねていくうちに、さまざまな行政の方から声がかかるようになり、それが派生して今の会社の事業につながっています。かっこよく狙ってやったわけではなく、目の前のことに、がむしゃらに取り組んでいた結果です。

労働集約型のビジネスとAIの相性

イベント設計を軸にした事業

現在、弊社は社員約30名の規模で、行政や健康局向けのイベント支援やシステム構築などを手がけています。会社としては2019年の設立からになりますが、今の事業を本格的に始めてからは3年ほどです。イベントという事業は、モノやプロダクトがあるわけではなく、人で稼ぐ労働集約型のビジネスです。

生産性を上げる起点としてのAI活用

労働集約型のビジネスは、AIととても相性がいいと感じています。たとえば、ひとりの従業員が月に50万円を稼ぐ力を持っているとしたら、AIを活用することでそれが100万円にも150万円にもなるポテンシャルがある時代です。どうやってAIを使って生産性を上げていくかが、今の弊社の起点になっています。イベント業界はまだファックスを使っている会社があるなど、改善の余地が多く残っている業界でもあるので、そこにITやAIを持ち込み、週休3日制のような新しい働き方にも積極的に挑戦しています。

根本にあるのは「勝ちたい」という気持ち

業界をこうしたい、誰かを変えたいという思いがまったくないわけではありませんが、正直にいうと、根本にあるのは「勝ちたい」という気持ちのほうが大きいです。きれいな理念だけを最初から掲げていたら、そもそも商売として成立しなかったと思います。やっていくなかで、業界的にこうなったほうがいいという視点は、後からついてくるものだと感じています。

今の学生に伝えたいこと

情報量は多いが、気合いの部分が弱い

今の学生は、私たちの世代よりもいろいろなことを考えていて、情報量も多く、本当に優秀だと思います。その一方で、少し弱いと感じる部分もあります。パワハラのような問題が取り沙汰される時代ではありますが、気合いで乗り越えなければならない場面は、今でも決して少なくありません。No Pain・No Gainな部分があるのも事実で、そこの見極めはとても大事だと思っています。

ワークハード・プレイハードのすすめ

私たちより少し上の世代にあった「よく遊び、よく働く」という価値観は、今こそあっていいと思っています。ワークハードだけではきつくても、同じくらいプレイハードもできれば、そのバランスの中で突き抜けられる若手は多いはずです。今はみんなが頭を使う時代だからこそ、力技でいける部分もまだまだあると感じています。頭の良さというカードだけでは、総合戦である企業では最後まで勝ちきれません。行動量をかけること、リスクを取ることは、後からでも積み上げられる武器なので、そこに全力を賭けてみてほしいと思います。

編集後記

29歳という若さで、1億円弱の資金調達から4,000万円の借金、そしてその完済までを経験されている高野さんのお話には、圧倒的な熱量を感じました。とくに「頭の良さだけでは総合戦に勝てない」という言葉は、日々知識だけを積み重ねようとしがちな学生の私にとって、大きな気づきになりました。行動量とリスクを取る覚悟を、自分自身のカードとして磨いていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。