インタビュー

ボクシング部を立ち上げた大学生が、リスクマネジメントの専門家になるまで

更新: 2026年9月30日
ボクシング部を立ち上げた大学生が、リスクマネジメントの専門家になるまで
PROFILE
株式会社ERM総合研究所 代表取締役
柴山 鉄也

ボクシング部を立ち上げた大学時代

ないなら作ればいい、その姿勢で今も生きている 

私は東京理科大学の出身なのですが、あの大学には体育会系の部活がなかったんですよね。それで仲の良かった体育の先生に相談して、ボクシング部を立ち上げました。その当時は、ちょうど世界的な格闘技ブームが起きていた時代でした。海外の有名な選手が世間を賑わせていましたし、K-1もどんどん大きくなっていった時期です。空手や柔道の経験者、もともとキックボクシングをやっていた人間など、いろいろな専門性を持った仲間が集まって、どの格闘技が一番強いんだと飲みながら話し合ったのを覚えています。ひとりで何かをやるより、仲間を増やしていくことが楽しかったんだと思います。

会計システムから内部統制へ

ブームに乗って幅を広げていった

システム会社では、会計システムを導入する担当をしていました。そのままこの会社でずっとやっていくのかなと考えていた頃、転職を考えるきっかけになったのが「内部統制」ブームです。当時、IT統制といって、ITと会計の両方に詳しい人材が、監査法人やコンサルティング会社にものすごい勢いで採用されていた時代がありました。そのブームに乗って最初の転職をしたのが、今につながるきっかけです。

内部統制の中でもITの角度から見た統制を担当するうちに、リスクマネジメントというもの自体に興味を持つようになりました。情報セキュリティや情報漏洩、コンプライアンス、品質不正など、扱う範囲をどんどん広げていって、5年ほど前から今のような全社的なリスクマネジメントを手がけるようになったという流れです。もともとコンサル会社の人間はどこかで独立したいという気持ちを持っているものですが、私もリスクマネジメントを深めていきたいという思いから、独立を選びました。

2008年、逆風の中での独立

売上がゼロになった時期もあった

独立したのは2008年10月です。しかし、その直後にリーマンショックが起きてしまいました。前のコンサル会社から引き継いだ顧客企業が何社も倒産したり、契約が切れたりして、スタートの段階から売上が立たない状態が続いたんです。そこから何とか持ち直してきたと思ったら、今度は東日本大震災が起きて、関東の企業にも大きな影響がありました。コンサル案件がまた減ってしまい、売上が立たなくなる時期を何度も経験しています。それを乗り越えて5年ほどしてから、ようやく順調に回るようになったという感覚です。

リスクマネジメント・SES・美容室、3本の事業の柱

「やらされ感」をなくしたい

今の事業は大きく3本あります。ひとつは、企業の全社的なリスクをどう管理していくかを考えるリスクマネジメントのコンサルティングで、BCP(事業継続計画)の策定や情報セキュリティのポリシー作りなどを担当しています。2つ目は人を業務委託する形のSES事業。3つ目は少し毛色が違うのですが、美容室の経営支援です。もともとは家族の希望から始まった話で、そこから私が経営を支援する形になりました。 

リスクマネジメントという仕事は、周りに説明してもなかなか理解してもらえないことが多いんですよね。会社の中でどこに使われているのか、あまり関係ないんじゃないかと思われがちです。でも、たとえば大雨で店舗が浸水してしまうような事態にどう備えておくか、どこに投資しておくかというのは、事業を続けていくうえで本当に大切なことなんです。近年話題になった大手企業の情報セキュリティに関する事案を見ていても、一度何かが表面化してしまうと、半年単位の長い期間、経営が困難になっていくケースが少なくありません。

リスクマネジメントは保険のようなもので、起こらなければ何も感じないものですが、いざ起きてしまった後に対応するとなると、費用も人的な労力も大きくかかってしまいます。それだけ重要な位置づけであるにもかかわらず、現場では「やらされ感」を持って取り組まれることが多いのが実情です。私としては、企業の中に本質的なリスクマネジメントをどう根付かせていくか、コンサルティングのひとつひとつを通じて進めていきたいと考えています。

日々の小さな変化に気づく感性を伝えたい

今お話ししたことの延長になるのですが、ある企業様の中で、リスクマネジメントをやっていて本当に良かった、これをやっていなかったら大変なことになっていたと思ってもらえるような、本質的な取り組みができるようになりたいと思っています。そのためには、普段と何が違うのか、昨日と今日で何が変わったのかを一人ひとりが感じ取れる感性のようなものが必要になってくると思うんですよね。私自身がそれを伝えられるくらいのレベルまで能力を高めていきたい、というのが今の気持ちに近いです。

好きになれる仕事を選んでほしい

学生へのメッセージ

コンサルティング会社は昔から人気がありますが、経営コンサルタントもいれば、マーケティングのコンサルタントもいますし、私のようにリスクマネジメントを専門にする人間もいれば、システムのコンサルティングをやる人もいます。何をするにしても、自分自身がその仕事を好きになって、面白みを持って取り組むことができれば、業界全体も良くなりますし、お客様にとっても役立つと思うんです。

コンサルティングという仕事は、時に「詐欺師のようだ」と言われてしまうこともあります。そう言われてしまわないように、一人ひとりが本質的な価値を提供できるコンサルタントを目指してもらえたらうれしいです。

学生の皆さんには、何の仕事が合っているかはやってみないとわからないよ、と伝えています。私自身、今のようなリスクマネジメントのコンサルタントという仕事は、学生の頃には存在すらしていませんでした。もともとない枠組みの仕事は、これから先もどんどん生まれてくると思います。そうした中に飛び込んでみて、面白いと感じたり、こうすればもっと良くなるのにと気づいたりできる場所を見つけてもらえたらいいなと思っています。

編集後記

取材をさせていただいて、リスクマネジメントという言葉の重みが少し変わりました。普段の学生生活ではあまり意識しない分野ですが、災害や情報漏洩のニュースを聞くたびに、事前の備えの大切さを思い出すようになりました。ボクシング部を立ち上げたお話や、柴山さんの「やってみないとわからない」という姿勢が伝わってきて、就職活動を控える身としてとても励まされました。