特許は課題解決のためにある
きっかけは代理店の設立
特許の売買やライセンス展開を専門に手がける株式会社Kトラストを立ち上げたことが、今の活動の出発点になっています。
特許でひとつずつ社会課題を解決する
音の位置情報で危険を察知する
社会課題の改善につながる特許にはいろいろな種類があって、たとえば音を集めるという発想があります。音が集まれば、その音がどんな状況で発生しているのかがわかる。そして、その音が発生した場所の位置情報がわかれば、GPSが作動して、問題がある音だと判断された瞬間に自動的に通報ができる。こういう仕組みの特許があります。
車の窃盗を「割に合わない」ものにする
この仕組みを自動車にオプションとして導入すると、今の車の窃盗という社会現象に対して大きな効果があると考えています。今の車の窃盗が防ぎにくいのは、自動車のセキュリティが弱いことに加えて、盗まれたあとにその車がどこにあるのかをすぐに特定できないからなんですよね。海外に運ばれる前に居場所がすぐにわかる状態になれば、盗んだ側は常に追われている状態になって、車を盗んでもお金にならず、むしろ捕まるだけになる。窃盗が割に合わないものに変わるので、盗む人がいなくなっていくと考えています。
バイタルサインでエンジンをかける
鍵の解除やロックに関する特許もあります。これが車に導入されると、まず本人のバイタルサインが正常かどうかを測ったうえでエンジンがかかる仕組みになります。異常な状態のときはエンジンがかからず、自動的に通報される。これがあれば、飲酒運転をしてエンジンをかけようとした瞬間に警察へ通報されてしまうので、そもそも飲酒運転をする人がいなくなっていくはずなんですよね。
暗証番号をなくすという発想
セキュリティの面では、暗証番号そのものをなくすという発想の特許もあります。暗証番号を新しく作って覚えるという作業自体にストレスがあると思っていて、そこで代わりに使えるのが、自分の名前や出身の県といった、忘れることのない情報なんですよね。こうしたキーワードをあらかじめいくつも登録しておいて、ログインするタイミングで初めてどの暗証が使われるかが決まる仕組みにすれば、本人ですら事前にはわからない状態をつくれます。他人に教えることもできないし、パスワードを忘れるということも起きません。この仕組みが広がれば、車のスマートキーのような固定された鍵の弱点もなくなり、フィッシング詐欺やサーバー攻撃への対策としても機能すると考えています。こうした特許をひとつずつ各国にライセンス展開していくことで、その国の環境そのものが変わり、社会課題の改善につながっていくことです。これが今取り組んでいるビジネスモデルの全体像になります。
日本を世界一にするという目標
昭和の技術力を取り戻す
現在のビジョンとして掲げているのは、まず日本を世界一にするということです。実は昭和の時代、日本は技術力の面で世界のトップクラスにいて、世界のどこも日本に勝てないという時代がありました。たとえば、家電で世界一になった韓国の大手電気会社ですが、あの技術のもとは日本の技術者たちなんですよね。リーマンショックのころ、日本で家電の開発をしていた技術者が契約打ち切りでリストラにあうケースが相次いで、そのタイミングで日本の技術者と業界トップクラスの、非常に大規模な契約をしたんです。本来は日本で世界一になるはずだった技術が、そのまま韓国に流れて世界中に広がっていった、というのが実際の背景です。
セキュリティ大国という未来
日本の技術力自体は、自動車や衛生関連の製品など、今でも世界トップクラスと言われる分野がたくさんあります。その一角として、知的財産権を通じて日本を世界一にしたいという思いで活動しています。今は日本のITやセキュリティが遅れていると言われることが多いんですけど、だからこそ、世界一のセキュリティが日本発で完成すれば、そのインパクトは大きいと思っています。セキュリティはどの国も欲しがるものなので、それが日本の強みのひとつになれば、海外から見た日本への信用や信頼、経済への影響も大きく変わっていくはずです。
学生に伝えたいこと
信念をどこに置くか
学生のみなさんに伝えたいのは、信念をどこに置くかがとても重要だということです。学校歴が重要な場面もありますが、そうではない場面もあるのが実際のところで、私自身は独自のキャリアを歩み、現場での実践を通じて活動してきました。学校で得た知識は、同じ知識を持つ人同士でコミュニケーションを取り、輪を広げていけるという意味で大きな強みになると思っています。ですが、そのときに自分が将来何をしたいのか、何を成し遂げたいのかという信念が定まっていないと、目標がばらばらになったり、続けることができなくなったりしてしまうんですよね。
続けられることから始める
信念というのは、自分がやりたいことでかまわないと思っています。ただ、心から思って行動できるものかどうかが大切です。私自身、何かをやり遂げるために、17歳のころからずっと続けているルールがあります。それが、革靴を毎日磨くということです。難しいことを設定するのではなく、確実にやり遂げられることをまず決める。それを続けることで、次のステップに進んだときに、本当にやりたいという信念が生まれてくると考えています。学生のうちは「こうなりたい」というイメージはあっても、それを人生を通して貫き通せるかどうかがまだ定まっていないことが多いと思うので、まずは続けられることをひとつ持ってもらえたらと思います。
編集後記
今回のインタビューを通して、特許という少し難しく感じるテーマの裏に、社会課題を解決したいという明確な思いがあることがわかりました。音や位置情報、バイタルサインを使ったアイデアの数々は、私自身のような学生にとっても身近な安全につながる話で、とても興味深かったです。信念を持ち続けられることから始めるというメッセージも、就職活動を控える身として素直に響きました。竹内さんの、日本を世界一にするという大きなビジョンをこれからも追いかけていきたいと思います。