インタビュー

クリエイティブとビジネスのバランスを。お客様により添うアニメ会社

クリエイティブとビジネスのバランスを。お客様により添うアニメ会社
PROFILE
ルナデジ合同会社 代表者
高原 聡史

建築を学びながら絵を描き続けた学生時代

大学時代は建築を学んでいました。大学に入るまで絵を描くことはあまりなかったのですが、課題で絵を描く機会が増えたことをきっかけに、初めて自分個人として絵を描くようになりました。当時はコンセプトアートや背景を仕事にしたいと考えていたため、背景を中心としたイラストを数多く描いてSNSにアップし、在学中から副業としてイラストの仕事も受けていました。そうした経験を重ねるうちに、建築の道に進むよりも絵を描くことを仕事にしたいという思いが強くなり、まずはコンセプトアーティストとしてキャリアをスタートさせることにしました。

クリエイティブの道へ進むとき、家族の理解を得る難しさ

私が最初に就職したのは、CGの映像制作をしている会社でした。そこでは主にCG映画やゲームなどのコンセプトアートや設定イラストなどを描いていました。

就職先が大学の専攻とは異なる分野で、クリエイティブという食べていけるかどうかわからない、いわば水物の道に進むということに対して、当時は親が反対しており、揉めることもありました。特にアニメ業界や絵描きの世界では、家族との関係に悩む方が多いように感じています。

最初にきちんと説明をして、納得してもらうというのは、職業選択の入口でまず苦労したところです。私は結果的に就職しましたが、5年ほどたった後に独立しました。しばらくしてから、親との関係も回復しています。

ルナデジ設立への軌跡

独立前に所属していた会社では、アートチームとして、映画やゲームの背景やコンセプトアートなど、作品のイメージを描く仕事をしていました。労働環境も整った、とてもよい会社でした。ただ、当時は若かったこともあり、もっと多くの業務量をこなしたい、セクションの壁を越えて他の業務にも挑戦したいというハードワークへの意欲が強く、独立の道を選びました。

独立後しばらくは、映画やゲームのコンセプトアート、世界観を設定する業務を中心に受けていました。そこから徐々に書籍の出版やアニメーション、ゲームのCG制作など、仕事の幅を広げていくようになります。それに伴って一つのプロジェクトに関わる時間が長くなっていきました。

対応できる業務の幅が広がり、抱えるプロジェクトも増えてきたため、会社にした方がよいと考え、ルナデジ合同会社を立ち上げました。

会社にしたことで、個人で活動していた頃よりも多くのプロジェクトに携われるようになったので非常に良かったと思っています。現在は制作体制を整え、組織的にクリエイティブ制作のサポートを行っています。

クリエイティブとビジネスのバランスが取れる会社にしたい

これは私自身の考えなので、アニメ業界の他の方とは異なる部分もあるかもしれませんが、仕事とはお客さまの要望を叶えることだと思っています。私個人としても、クリエイティブとしてよいものを出すことはもちろん重要ですが、それはお客さまの要望を叶えたうえで実現すべきものだと考えています。

そのため、まずはお客さまが求めているクオリティラインやワークフロー、納期、金額などをしっかりと提案し、満足いただける形を守ること。そのうえで、各クリエイターがそれぞれのクリエイティブを発揮すること。この順番を大事にした方が、結果的に長く仕事を続けることができ、自分自身のやりたいことも実現しやすいと思っています。

これまで見てきたなかには、自分のやりたい表現にこだわるあまり、納期を守らなかったり、突然連絡が取れなくなったりする方もいました。絵がよければそれでいい、という考え方も一つの魅力ではありますが、私はそれよりも、仕事として求められたことをきちんとやることを大事にしたいと思っています。約束を破ったら謝る、求められた仕様に沿って形にする。採用する人にも、そうした姿勢を大事にしてほしいと考えています。

お客さまと直接やり取りをして要望を叶えていくという部分は、ツールがどれだけ変わっても、人と人との関係である限りなくならない部分だと思っています。そこにきちんとコミットしていく姿勢の方が、この先も生き残りやすいのではないかと感じています。

学生へのメッセージ

アニメ業界は、職に就くこと自体はそこまで難しい業界ではないと思っています。業界としても成熟しており、安定的に稼ぐことも可能なので、興味がある方はぜひチャレンジしてみてください。また、既に就職されている方でも、副業等でクリエイティブなお仕事に取り組んでいる人もたくさんいるので、必ずしも本業になる必要もありません。自分独自のスタイルやクリエイティブへの向き合い方を見つけていただければと思います。

編集後記

今回、高原さんのお話を伺って印象的だったのは、華やかに見えるアニメ業界のなかで、地味な仕事や約束を守ることの大切さを強く語ってくださったことです。就職や独立の場面で親との関係に悩まれたお話は、私自身もキャリアで同じような葛藤を抱える可能性があると感じ、とても身近に感じました。表現したいことよりも、まずお客さまの要望に応えるというお話は、業界を問わず仕事に向き合ううえで大切な視点だと思います。貴重なお話をありがとうございました。