インタビュー

父からの一本の電話が、地元に戻る決め手になった

父からの一本の電話が、地元に戻る決め手になった
PROFILE
株式会社ネクステップ 代表取締役社長
真砂 慎太郎

那珂川市で生まれ育った学生時代

福岡県那珂川市の生まれで、中学、高校まではずっと地元で過ごしていました。那珂川市は福岡市に隣接していて、今ではすっかり都会に近いエリアになっていますが、個人的には生まれ育った場所でもありますし、未成年の頃に育ててもらった恩返しを、一人の市民として、そして今の立場としてこれからできる限りしていきたいという思いがあります。

大学進学をきっかけに東京に出て、就職活動も関東で行いました。新卒では大手のハウスメーカーに入社し、配属先は栃木県の宇都宮市。そこで3年ほど住宅営業を担当していました。

大手ハウスメーカーでの3年間

当時、明確な目標や夢があってその会社を選んだというよりは、いずれ親の会社を継ぐことになるのだろうという気持ちが半分ほどあり、父の事業と関連のある会社にひとまず入っておこうという感覚で入社しました。実家に戻るタイミングをあらかじめ決めていたわけではなく、そのまま関東で働き続ける可能性も特に否定はしていませんでした。

父からの一本の電話

入社して3年ほど経ったころ、父から直接電話がありました。福岡に戻ってきてくれないか、話がしたい、という内容でした。それまで、家業に入るように、継いでほしいと父からはっきり言われたことは一度もなく、なんとなく息子だからいずれそうなるのだろうと暗黙のうちに感じてはいたものの、直接そう言われたのはその時が初めてでした。

当時、会社にとってもいろいろと大変な出来事が重なっていた時期だったようで、父から直接そうした連絡をもらったこと自体、ただごとではないと感じました。そこまで長く悩むことはなく、比較的早めに決断して、福岡に戻ることにしました。

家業を継いでから感じていること

社長に就任してからは、那珂川市の中であれば、ある程度知っていただけるポジションにいると感じる一方で、地域の一歩外に出ればそこまでの知名度があるわけではありません。それでも、これまで築いてきたたくさんの方々との関係を考えると、会社が何らかの理由でなくなってしまえば、多くの方にご迷惑をおかけすることになりますし、地域を盛り上げてくれる企業の一つとして期待していただいている実感もあります。社長としてまだ経験の浅い自分が、この会社をしっかり守りながら、さらに成長させ、地域によりいっそう貢献していけるかどうか、プレッシャーや責任感を感じながら日々取り組んでいます。

ネクステップの強み

弊社の強みの一つは、不動産・建築に関するサービスをワンストップで提供できる総合力です。もう一つは賃貸管理事業で、家を売るとき、買うとき、建てるとき、部屋を貸すとき、借りるとき、それらのどの場面でも、弊社にお願いしたいと思っていただけるような、いわば弊社のファンになっていただけるような関係づくりを大切にしています。

こうした強みの背景には、創業から35年以上にわたる実績とネットワークがありますが、それに加えて、経営理念にも通じる部分として、社員一人ひとりの人としての魅力、いわゆるホスピタリティも弊社の強みの一つだと考えています。

地域と共に歩んできた歴史

地域のイベントやコミュニティへの参加は、昔から続けてきたことの一つです。那珂川市の主要な駅前では、長年にわたって毎年お祭りが開催されていたのですが、その運営を担う委員会は高齢化が進み、一時は解散することになりました。そこで、弊社だけでなく、他の企業やボランティア精神を持って参加してくれる方々で新しく委員会を作り、次の世代へと引き継ぎながら、お祭りを継続させています。

学生へのメッセージ 大手と中小、両方を経験して

学生の皆さんへのアドバイスとして、自分の経験からお伝えできるのは、最初に大手企業に入り、その後に地域の中小企業である家業に入ったという、両方を1人の社員として経験したことです。どちらが良い悪いという話ではありません。大手企業は人材が揃っていますし、教育体制も整っていて、給与も安定しているという良さがあります。ただ、当時働いていた会社の理念やビジョンについては、教えられていたはずなのに正直あまり覚えていませんし、社長と直接話す機会もほとんどありませんでした。

一方、中小企業の良いところは、みんなで一緒に会社を成長させていかなければ立ち行かないということです。だからこそ、若手であっても主体的に、真剣に考えた提案であれば積極的に受け入れてもらいやすく、いろいろな挑戦がしやすい環境があるのではないかと感じています。

お客様に寄り添う距離感

お客様との距離の近さも、地域の会社ならではの魅力だと思います。大手企業でも営業担当とお客様の距離は近いと思いますが、担当者が変わってしまうことも少なくありません。弊社の場合、社員が退職しない限りは、長くお客様と付き合い続けることができるので、その方の人生に寄り添うことも、本人次第で十分にできると感じています。地域のイベントに参加する中でお客様とプライベートな場面で顔を合わせることも多く、仕事の関係だけでは聞けないような話ができるのも、面白いところだと思っています。

20年続く「月間賞」という社内制度

弊社らしい取り組みとして、経営理念の中に「人間力」という言葉が入っています。専門知識を身につけることはもちろん大切ですが、社員一人ひとりの人としての魅力を高めていくことも同じくらい重視しているんです。

その考え方を象徴する社内制度が「月間賞」です。自分が入社するよりも前、20年以上前から続いている制度です。もともとは、数字を上げれば評価されやすい営業職に比べて、なかなかスポットライトが当たりにくい営業外の社員にも光を当てたいという思いから始まりました。毎月各リーダーが集まり、前月にもっとも輝いていた社員を1人選び、その社員のどこが良かったのかを一人ひとりプレゼンします。その候補の中から、最終的に社長が最も優れた1人を選び、3万円の賞金と、選ばれたメンバー全員での食事会を続けています。

数字の評価だけであれば分かりやすい部分もありますが、それ以外の部分をどれだけ見られているかが問われる制度なので、リーダー自身も自分の部署だけでなく、他部署にも目を配る力が自然と養われます。20年以上続けてきたことで、続けてきてよかったと思える文化として根づいてきたと感じています。

編集後記

大手企業と地元の中小企業、両方を経験したからこそ語れる真砂さんのお話には、地方企業ならではの魅力がたくさん詰まっていました。父からの一本の電話をきっかけに地元に戻る決断をしたエピソードや、20年続く「月間賞」の取り組みからは、人と人との距離の近さを大切にする経営の姿勢が伝わってきます。地域とともに歩む会社のあり方を考えるうえで、多くの学びをいただきました。ありがとうございました。