インタビュー

「適切に税・社保を納める人材の雇用を促進」コロナ禍に会社をつくった理由

更新: 2026年9月17日
「適切に税・社保を納める人材の雇用を促進」コロナ禍に会社をつくった理由
PROFILE
株式会社MRI 代表取締役社長
松川 真樹人

株式会社MRI(Matsukawa Research Institute)で代表取締役社長をしている松川真樹人です。AIコンサルティングやSaaS、システム受託開発、SESなどを通じて、企業や在日外国人の「はたらく」をスマートにする仕事をしています。今回は、創業までの経緯や事業の中身、これまでの苦労、そして今後のビジョンについてお話しします。

大手IT企業から株式会社設立へ

父の家業を継ぐはずだった

千葉県立千葉東高等学校を卒業後、東京理科大学理工学部で経営工学を専攻しました。実家は祖父も父も経営者という家系で、もともとは父の土木建築関係の会社を継ぐつもりでいたのですが、在学中にプログラミングと出合い、その数学的なおもしろさに魅了されて方向転換しました。卒業後の2004年、東証一部上場だった富士ソフト株式会社に入社し、技術者としてのキャリアをスタートさせました。単体で1万人規模の会社で、当時はまだWebが主流ではない時代にクライアントサーバー技術を担当していました。

3日でWeb案件を仕上げた

ある時、上長より「ブログをつくれるならWeb系の案件に携わってほしい」と告げられ、3日でつくり上げた技術を身につけました。ただ実際には、トラブル対応へ部署変更を要されることとなってしまい、「話が違う」と感じ退職を決めました。技術は日々進歩するもので、このタイミングを逃すと自分の技術力が枯れてしまうという危機感がありました。

1人社長として法人化

退職後の2011年、株式会社ジークレスト(サイバーエージェント系列のゲーム会社)に入社しました。ここでもわずか2ヶ月ほどで技術を覚えてしまい、仕事をしながらでは時間が足りず、つくりたいものがつくれない歯がゆさを感じざるを得なく退社を決意しました。個人で活動する道もありましたが、mixiやYahoo!モバイルといったプラットフォームでブラウザゲームを提供するために法人化し、2年間、1人社長として活動を続けました。

サイバンクからエイシルへ

子どもが生まれたタイミングで、さまざまなつながりから2013年に株式会社サイバンクへ入社しました。同社は後にグループ会社の株式会社エイシルにM&Aにて吸収される形になり、2014年にはエイシルへ移っています。課長職に近いポジションからスタートし、2017年にサイバンクの取締役、2018年にはエイシルCE事業部の事業部長を勤め、現在はエイシルのDXコンサルタントをしております。

コロナ禍に起業した理由

外国人材の雇用、活用が促進されているためです。あえてコロナ禍に企業したことを不思議に思われがちですが、数年前から計画しており、タイミングが重なっただけでした。結果的にテレワークの普及はIT業界にとって特需となりました。今後も我が国のために適切に税・社保を納める人材は大切にしたいと考えております。

現在の肩書きと仕事のスタンス

エイシルでは部門長

現在はMRIの代表取締役社長を務めながら、親会社にあたる株式会社エイシル(グループ全体で社員約200人)でもDXコンサルティング部の部長とDXリードコンサルタントを兼任しています。あわせて2023年からは、株式会社マイカジャパンの技術顧問も務めています。

現場を離れたくない

この1年ほどは、かつて勤めていた富士ソフト株式会社にて、若手の主任やリーダーの育成に携わっています。プロジェクトマネジメントやPMOの立場で、30代の若手をしっかり鍛えることがミッションです。エンジニアという仕事を一生辞めたくないという思いがあり、常に現場に近い立場でいたいと考えています。技術は日々進歩するので、誰にも負けたくないという気持ちも大きいです。

AIを軸にした事業の中身

AIソリューション提案が中心

MRIの事業は、AIコンサルティング事業、SaaS事業、メディア事業、システム受託開発事業、SES事業の五つの柱で成り立っています。中心になっているのは、AIを使ったソリューション提案です。

情報漏えいを防ぐローカルAI

エイシル本体側でも、住所管理のシステムの責任者を兼任しています。誰がどこに住んでいるかを漏れなく更新するための仕組みで、千葉の地域メディアからも問い合わせをもらいました。一般的な生成AIサービスを使うと、入力した情報が海外の企業にデータとして蓄積されてしまう懸念があります。そこでローカル環境でAIを構築すれば、そうした情報の流出は起きません。この仕組みは、行政書士の先生からいただいた課題をきっかけに立ち上げたものです。

行政書士向けSaaSに手応え

在留期限の管理を効率化する、行政書士向けのクラウドサービス開発にも携わっています。提携している行政書士と一緒に監修を進め、急ピッチで仕上げたところ想像以上の反響があり、これから本格的に売り出したい段階です。使えば使うほど収益になるSaaSモデルであることに加え、新聞社などからの問い合わせも増えてきました。AIコンサルティングに興味のある方は、AI活用に取り組む他社の経営者インタビューもあわせてチェックしてみていただきたいです。

外国人雇用への思い

現在は我が国のために適切に税・社保を納める人材を1人でも多くをモットーに、中国人材を中心に雇用しており、今後も在日外国人の雇用や活躍を後押しする事業を続けていきたいと考えています。

従業員のメンタル不調から得た学び

健康経営優良法人を取得

印象に残っている苦労は、ある従業員がメンタル面の不調を抱えていたことに、退職の意思を伝えられるまで気づけなかったことです。面談で引き止めを試みましたが、すでに決まっていた話を覆すことはできず、退職を受け入れることとなりました。この経験を踏まえ、会社として従業員の健康にしっかりと気を配れていることを証明できる「健康経営優良法人」の認定を取得しています。経済産業省と厚生労働省の正式なる認定であり、あわせて千葉市健康づくり推進事業所の認証も取得しました。

80点以上で取得できる基準

健康経営優良法人の認定は、100点満点中80点以上で取得できる仕組みです。喫煙者と非喫煙者の分離、従業員の健康診断の管理、定期的なアンケートによるメンタルヘルスチェックなど、項目は多岐にわたります。産業医や社会保険労務士としっかり連携できていなければ、企業単体では基準を満たせません。

社食も運動もすべて無料

具体的な取り組みとしては、フィットネスジムの利用を無料にしていたり、社食では野菜を使ったメニューを取り入れるなど、健康面に配慮した内容にしています。こうした制度は、これから入社してくる人にとっても魅力になると考えています。

健康は生産性に直結する

経営者として見ると、健康経営には別の意味もあります。疲れている人は生産性が落ち、心身ともに健康であれば生産性は高くなります。過度な残業をせずに1日を終えられることが、翌日への活力にもつながります。こうした考え方を軸に、健康経営を続けています。

増やしたいのは人でなくAI活用

AIによる少数精鋭組織へ

今後のビジョンとしては、これまで積み上げてきたものを「勝ち」に変えていきたいという思いがあります。一方で、あえて従業員をあまり増やしたくないという考えも持っています。旗を振れる、話せるエンジニアは増やしたいものの、AIを活用すれば10倍の生産性が出ることを自分自身が実感しているため、人を雇うよりもAIを手段として使いこなし、生産性を高めていきたいと考えています。官民連携の取り組みも、これまでと変わらず続けていきます。

SEOの回復が今の課題

自社で運営する情報メディアは、公開から1週間ほどは検索順位が上がる時期があるものの、その後はGoogleの仕様によって順位が大きく下がる時期があります。ここから回復させるために日々試行錯誤を重ねており、広告費をかけずに集客できるSEOの強化は、いま最も力を入れたいテーマです。企業研究の一環でSEOやWebマーケティングに関心がある方は、集客の仕組みづくりを紹介する記事もあわせてチェックしていただけるとうれしいです。

住まいの課題にも向き合う

在日外国人にとって困りごとが多いのは、ビザと住まいです。ビザについては自社のサービスでカバーできていますが、住まいは外部の力を借りる必要がある部分が大きいです。外国人でも入居しやすい仕組みをつくれる不動産会社があれば、連携を模索したいと考えています。

編集後記

取材を通じて印象に残ったのは、松川さんが「会社をつくったのは失敗したときのダメージを小さくするため」と、起業を冷静に捉えていたことです。華やかに語られがちな起業のイメージとは違い、リスク管理としての起業という視点は、経営を学び始めたばかりの私にとって新鮮でした。エンジニアとして現場に立ち続ける姿勢や、AIを人の代わりではなく「手段」として使う考え方も、これから社会に出るうえで大切にしたい視点だと感じました。