合同会社Maison de Mou代表社員の大澤美保と申します。PR(Public Relations)の業務と並行し、お役目を終えたカラーコスメを画材にアップサイクルする「COSME no IPPO」というプロジェクトを手がけています。
PR一筋のキャリアから、まさかの独立へ
吉本興業でPRをしていた
大学卒業後、一貫してPR業務に従事してきました。新卒で総合系PR会社に入社し、その後吉本興業にてPRを担当していました。
吉本興業ではありがたいことに多くの仕事を担当し、仕事も非常にやりがいがあり楽しく、必死に取り組む中で、ぎっくり腰になってしまいました。やむを得ず半年ほど仕事を休むことになりました。
健康の大切さに気づいた半年間
その期間、これから何を大切にして生きていくべきかをいろいろ考えたところ、とても基本的なことですが、第一に健康が重要なのだということに気づきました。仕事をお休みしていた期間に、食べ物に気を付けたり、調味料などは添加物を少ないものを選んだり、肌や髪に使う商品も変えていきました。そうするうちに髪や肌が生き返り、本来の自分の姿へ徐々に戻れた実感がありました。
そういった自身の体験を基に、人々を前向きな気持や姿勢にすることができるプロダクトをPRしたいと思い、オーガニックコスメを扱う「株式会社スタイラ(現ジョンマスターオーガニックグループ)」にPRとして入社しました。当時は社員も少なかったため、販促や広告など様々な業務を兼任しながら、ブランドを作るという経験をさせていただきました。
独立するつもりは全くなかった
もともと独立することや起業への願望はまったくありませんでした。むしろ企業の中で裁量あるポジションに就きたいと思い頑張っていたのですが、マネージメントよりもPRとしての仕事を突き詰めたいと思うようになりました。
娘の受験がきっかけで独立を決意
そんな中、長女の受験をきっかけにキャリアを考えたときに初めて、独立という選択肢もあるかもしれないと思いました。独立直後はフリーランスのPRとしてクライアント業務に従事し、2021年に合同会社Maison de Mouを設立しました。そのときに始めたのが、お役目を終えたコスメを画材に変える『COSME no IPPO』です。
「COSME no IPPO」とは
捨てられるコスメの多さに衝撃を受けた
美容業界に携わる中で、多量のコスメが廃棄されている現実を知りました。エネルギー業界、アパレル業界に次いで廃棄量が多いということも知り、コスメが好きだからこそ非常に残念な気持になりました。
使い切れないコスメを、画材へ
メイクをする方にはほぼ百パーセント共感して頂けるのですが、アイシャドウや口紅はなかなか最後まで使い切れません。そこで、使い切れずに残ったカラーコスメを回収し、色の美しさを活かしながらアップサイクルできないかと考えて、画材にするというアイデアに行き着きました。アート業界も盛り上がっているタイミングでしたので、クレヨンとして生まれ変わり、アートの世界でも活用し、”ワクワクの循環”を作り出すプロジェクトとして生み出しました。
回収する人と買う人が異なるという難しさ
活動を始めてから実感したことですが、コスメを回収して欲しいと思う方々と、クレヨンを買う方々の層が異なるという難しさがあります。試行錯誤しつつ進んできましたが、現在は回収のみを請け負うことはなく、回収したものを活用してくださる企業との取り組みや、『ハロヨンとハロヨンミニマル(アップサイクルしたクレヨン)』をどのようにしてさらに多くの方に使って頂くかということに注力しているところです。
松本市美術館での展示販売が決定
直近の活動としましては、9/19~12/6に長野県松本市にある松本市美術館で開催される企画展『Sustainable World – 佐藤大史・磯部昭子 ふたりの視点から-』開催期間中に、ショップで「ハロヨン」と「ハロヨンミニマル」を販売してくださいます。アート業界にコネクションが多くはありませんが、活動の価値を理解してくださる方たちと一緒に広げていきたいと考えています。
事業の強みと今の体制
従業員はもう一人
従業員はあと一人です。今後も、従業員を増やすというより、ひとつひとつの仕事を深化させていきたいと考えています。
三つの立場を経験したからこその強み
PRやマーケティング、広報の分野は競合も多いと思いますが、今まで頂いたお仕事は人脈で成り立っています。クライアントさんからは、PR会社、事業会社、フリーランス(+経営)という三つの立場を経験していることを評価いただくことが多いですね。それぞれの視点を掛け合わせ、特にブランドローンチ時の認知拡大を得意としています。そこを評価していただき、その後も長期的にお付き合いしているクライアントさんが多いです。
これからのビジョンと課題
唯一無二のPRでありたい
PR業務に関しては常に、『唯一無二のPRパーソンでありたい』と思っています。最近はブランディングや商品企画といった、より広義のブランドづくりをご一緒させていただく機会が増えていますので、さらに増やしていきたいと考えています。
COSME no IPPOは今が転換期
COSME no IPPOに関しては、2021年~2024年頃は多くのメディアにも取り上げていただき、一気に認知が広がりました。今後は、どのような価値を届けるプロジェクトであり続けるのかをさらに考え、動きながら深めていく新たなフェーズになっていくと感じています。学生さんから「話を聞かせてほしい」と言っていただくことも多く、関心の高さを感じると共に期待もしています。若い世代もうまく巻き込みながら、「コスメを使う方々が最後まで責任を持って使うこと」、「本当に必要なものかを自分に問いてから購入すること」を啓蒙していきます。
現在の課題
やはりやりたいと思うことに貪欲に挑戦していくためには資金力が必要で、経営していくからには避けて通れない話題です。補助金などの制度を知り、専門家の助言も受けながら、最適な形を模索しています。さらに金融知識をつけることで経営にも良い影響があると思い、日々勉強しています。
この会社のよくある質問
- 学生でも『COSME no IPPO』に関わることはできますか?
実際に学生さんから話を聞かせてほしいという声をいただくことも多く、若い世代を巻き込んでいきたいと考えています。ご自身の周りで何かできることはないか(例えば回収などで)と考え、行動に移していただくなど、小さいことから始めていただけたら嬉しいです。
- PRの仕事に興味がある学生にアドバイスはありますか?
PRの仕事は、人や世の中の流れに興味があることが大切です。ぜひ、学生のうちに見聞を広めて、自分の好きなことや強みを探しておいてください。きっとどこかで生きてきます。また、これはPR業界に限ったことではありませんが、さまざまな場面で出会う方々(同僚や取引先など)との繋がりを大切にすることをおすすめします。どこでどの繋がりが何を生み出すか、分からないものですし、ひょんなところでひょんな繋がりが生まれたりするものです。そんな偶発的な出会いを楽しめるよう、多様な方々とコミュニケーションを取って過ごしてください!
編集後記
今回のインタビューでは、ぎっくり腰という思いがけない出来事が、健康への気づきを経て、キャリアそのものを見つめ直すきっかけになっていたことが印象的でした。もともと独立志向がなかったという大澤さんの言葉には、意外性と説得力がありました。「COSME no IPPO」が抱える、回収する人と買う人の層のずれという課題にも真摯に向き合い続けている姿勢から、サステナブルな取り組みを継続することの難しさとやりがいの両方を感じました。