情報系の大学院からエンジニアへ
研究に打ち込んだ大学時代
私は大学の情報系の学部と修士を出ていまして、そういったところで研究はそれなりにちゃんとやってきたかなと思います。大学時代はサークルには入らず、同じ情報系の学科の友人たちと過ごすことが多かったです。結果的に、その頃の友人と後に会社を立ち上げることになります。
院生になってからは、インターンという形で1年半〜2年ほど企業で働いていました。当時の研究テーマがAIで、ChatGPTなどが出てくる前くらいの段階から取り組んでいたんです。
独立はいつかするものだと思っていた
大学院を卒業したあとは、大手メーカーの新規事業部に所属することになりました。デジタル・IT系での入社だったので、新規事業のプロダクトを作ったり保守したりしながら、エンジニアとしてのキャリアを歩んでいたんです。四年ちょっと勤めて、居心地はよかったんですが、独立したいという欲求はもともと強くありました。
学生の時にはすでにその気持ちがあって、大学一年生くらいの頃にはぼんやりと、大学院に上がる頃には「多分やるんだろうな」という感覚がありましたね。強烈な理由があったわけではなく、なんとなくそうあるものだと思っていたといいますか。だからこそ、学生のうちに簿記を取っておくなど、いずれ独立するかもしれないという思考のもとで動いていた部分もあったんだと思います。
大学の友人と創業した
タイミングが来たと言いますか、今回の創業は大学時代の友人と一緒でした。年齢を重ねるとフットワークが重くなっていく人も増えてくるので、一緒に何かをやるならそろそろかなという思いがあったんです。ちょうどそのタイミングでやりたい事業や「これはいける」という感覚もあり、友人にも賛同してもらえたので、一緒にやろうという話になりました。
二つの事業で利益を最大化する
弊社はクライアントに残る利益を最大化することを一番の価値として掲げていて、大きく分けるとウェブマーケティング事業とシステム開発などのIT系事業の二つに取り組んでいます。
一見離れているように見えるかもしれませんが、ウェブマーケティングはクライアントの売上を伸ばす方向に寄与する一方で、システム化はコストを減らし、社内をより効率よく運用できるようにする方向に働きます。売上を上げつつコストを下げることで、残る利益を最大化しようというのが、弊社としてやっていることです。
意思決定に必要な数字が見えていないと、判断が難しい場面が多いんですよね。ある程度会社が大きくなってくると、いろいろな広告に投資していても、何が一番効いているのか見えづらくなってきます。そういったところをシステムの力で可視化し、より良い意思決定ができるようにしたり、手作業の部分を業務システムに置き換えて効率化したりすることをおこなっています。
契約後まで数字を追う姿勢
弊社の特徴は、広告運用だけで完結しないことです。必要であれば計測環境を整えたり、広告データと顧客データをつないだり、システム自体を開発したりするところまで入ります。そのため、広告上のコンバージョンだけでなく、その先の契約や継続、最終的な利益まで見ながら改善できる。マーケティングとエンジニアリングの両方を持っていることが、弊社の強みだと思っています。
もう一つ挙げるとすれば、多くの広告会社は「集客するところまで」で終わりがちなんですよね。たとえばフィットネスジムが広告費一万円をかけて一人を体験に呼べたとしても、その人がその後契約したかどうかまでは、広告側からはなかなか見えません。契約後どれくらい継続したか、その顧客が生み出した価値がどれくらいだったかまでは、事業者側は把握していても、広告会社側はあまり見ていないことが多いんです。
弊社は集客のさらに一歩先、契約や継続の状況までデータで見て施策を立てるようにしています。ウェブマーケティングの会社としてそこまで追うには、広告運用だけでなくデータやシステムまで含めて踏み込む必要があります。AIによって広告運用そのものは、今後ますます効率化・自動化されていくと思っています。だからこそ、単に広告を回すだけではなく、その先の売上や利益まで見て、事業全体の改善につなげることが重要になると考えています。何人呼べたかではなく、どれだけ利益が残ったかのほうが大事になってきますし、そこにちゃんと価値提供できる会社でありたいという意識ですね。
いろいろな業種のお客様と関わる中で、ビジネスモデルに驚かされることもありますし、深く入り込むことで内側のデータまで見えてくるところは、この仕事のおもしろさだと感じています。
「動く写真」から始まった最初の挑戦
創業当初は、実は今とはまったく違う事業をやりたくて会社を始めました。最初はtoC向けにプロダクトを作って売りたいと思っていたんです。
一番最初に手がけたのが「動く写真」でした。写真自体は本当にただの写真なんですが、スマホをかざすと動画が流れて、その時の風景をもう一度見られるというものです。今は「Rememo」という名前で提供しています。ただ、これがあまりにも売れなくて苦戦しました。一応今も販売はしているんですが、これだけでは食べていけないという結論に至り、そこからいろいろと方向転換を重ねて、今の形に落ち着いたという経緯です。最初からウェブマーケティング会社を作りたかったわけではなく、自分たちでプロダクトを作って売ろうとして苦戦し、売ることの難しさを痛感したからこそ、今はその難しさに向き合う立場として、企業のマーケティング支援をしているんです。
ウェブマーケティングをAIで再設計したい
今はAIが一つのトレンドになっていて、私自身がエンジニア出身なので、その影響を最初に受けてきた職種だったと思います。ウェブマーケティングの領域も、すでにAIの影響が出始めていますし、これからもっと大きく変わっていくタイミングだと肌で感じています。
今後は、弊社のエンジニアリング力を活かして、ウェブマーケティングの仕事そのものをAI前提で再設計したいと思っています。データの収集や分析、異常検知、施策の提案など、人が目視や手作業で行っている部分を自動化して、人はより事業の本質的な意思決定に集中できる状態を作りたいです。
「意外となんとかなる」
私自身、結構楽観的で「なんとかなるだろう」と考えるタイプです。それが功を奏している場面も多く、気負わずに一歩踏み出してみると、意外とうまくいくことが多いですね。
学生の特権を活かしてほしい
学生時代の後悔で言うと、こういったビジョン図鑑のようなメディアも学生発祥だからと話を聞いてもらえることが多いんですよね。私自身も学生の頃に企業に「教えてください」と話を聞きに行っていたことがあったんですが、社会人になったり、創業して独立したりすると、その反応率がめちゃめちゃ悪くなるんです。
学生の頃は失敗したらどうしようという気持ちもあって、少し尻込みしていた部分もありました。でも、いざ自分が社会人側の立場になってみると、学生から連絡が来ることはすごく嬉しいものなんですよね。何も気にせず、興味があることに対して学生の特権を活かした行動をすると良かったなと、当時の自分に伝えたいです。失敗を恐れず動いた方がいいですし、学生の立場ならなおさら動きやすいはずだと思います。
編集後記
田中さんのお話から、楽観的でありながらも数字にとことん向き合う姿勢が印象に残りました。集客だけでなく契約後の価値まで追う視点や、うまくいかなかった「動く写真」の経験を糧に方向転換していく柔軟さは、学生の私にとっても学びになりました。将来に迷いを感じている方こそ、「意外となんとかなる」という言葉に背中を押されるのではないでしょうか。貴重なお話をありがとうございました。