事業に携われないもどかしさから、独立を決めた
士業として、やれることはやり尽くした
現在、マジリス株式会社という会社で代表取締役CEOをしています。会計士として日本と米国両方の資格を持っていて、税理士でもあります。
キャリアのスタートはEY(アーンスト・アンド・ヤング)でした。会計監査やM&Aの仕事を6年ほどやって、途中でアメリカに留学もしています。その後は大阪ガスに転職して、7年間在籍しました。最初の3年半は石油やガスのM&Aを担当していて、ソーシングから実行、PMIまで一通り経験しました。
後半の3年半はイギリスのマンチェスターに、活性炭という材料を作るメーカーがあって、そこを大阪ガスが買収したんです。私はそこにイギリス人のCFOのサポートという形で入って、国際税務や連結会計、ファイナンス、M&Aなど、幅広く担当していました。
帰国してからはスタートアップ二社に参画して、管理部門の責任者をやりました。IPOの準備やファイナンスを担当して、この2社で合計60億円ほど資金調達をお手伝いしています。
「事業に携わりたい」から独立を決めた
私は今までずっと、CFOや管理部門の責任者というキャリアが中心で、事業そのものに携わる機会はなかなかありませんでした。もっと事業に携わりたいと思ったとき、転職して別の会社でやろうかとも考えたんですが、今までのキャリアからすると、そこでのキャリアチェンジは正直難しかったんです。そこで、自分で会社を立ち上げてやったほうがいいんじゃないかと思ったのが、独立のきっかけです。
もうひとつ理由があって、会計士としてやれることは、アドバイザーも監査法人もスタートアップも経験して、ひと通りやったつもりだったんです。その中でまだやっていなかったのが起業でした。だから起業を経験してみたいという思いもありましたし、結局スタートアップに入ってもサラリーマンには変わりないので、それなら社長になったほうが責任も重くなるぶん、主体性を持ってやれるだろうとも思いました。
サラリーマンとして働いていると、自分で意思決定するのは最終的に難しくて、社長にお伺いを立てる場面がどうしても出てきます。それがちょっと難しいなと感じていました。責任も自分で決められることも、できれば自分の側に置いてやりたいと思ったんです。
もともとリーダータイプというわけではなく、どちらかというと控えめなタイプだと私は思っています。それでも主体的にやりたいという気持ちは、そういう会社員としての経験の中から出てきたものだと思います。
マジリスとファンドキー、二つの会社で事業を支える
スタートアップの外部CFOとして
マジリスは、スタートアップの支援をしている会社です。具体的には社外CFO支援や資金調達支援、コーポレート業務のDXといった、フロントからバックオフィスまでを支援するコンサルティング会社になります。
もう一社、ファンドキーという会社も経営していて、こちらはファンドのBPO業務を担う会社です。ファンドはバックオフィスの人材がとても足りていないので、経理や財務、行政への届け出まで、バックオフィス業務を代わりに担うようなイメージです。ファンドキーは今、十名ほどのメンバーが携わってくれていて、チームで動けています。
マジリスのほうは従業員は私一人で、あとは業務委託で何人かに手伝ってもらっている体制です。この2社を合わせて、今は60社ほどのお客様とお付き合いさせていただいています。人数に対しては多いほうだとは思いますが、なんとか回せているところです。
独立して直面した、仕組みがない大変さ
何もかも自分でゼロから作る難しさ
初めての起業ということもあり、当時は社内の仕組みが何一つ整っていませんでした。さらに、完全なゼロからのスタートだったため、顧客基盤もありません。組織としての体制づくりと、新規の顧客開拓。この2つの壁を同時に乗り越えていくプロセスは、想像以上の試練でした。
今までスタートアップに参画したときは、Googleワークスペースのようなツールも誰かが契約してくれていましたが、独立するとそれも自分で何を契約するかから考えないといけません。そこは全部ゼロからやる必要があって、大変だったなと思っています。ほかの起業家の方からすれば大した悩みではないかもしれませんが、自分にとっては大きな壁でした。
チームで、ファンドの裏側を支える会社にしていきたい
ファンドキーを大きくしていきたい
ファンドキーはチームでやっていて、一人でやるよりもチームでやるほうがずっと楽しいと感じています。なので、このファンドキーをどんどん大きくしていきたいと思っています。
マジリスのほうは個人事業主のような形で引き続き続けていきますが、チームでやっていく会社を大きくして、ファンドの裏側を支えるような存在にどんどんなっていけたらと思っています。今後はメンバーも増やしていきたいですね。
学生へのメッセージ。視野を広げて、自分に合う仕事に出会ってほしい
選択肢が多い時代を、うらやましく思う
私が社会人になったころは、キャリアの選択肢はサラリーマン一択でした。ですが、今はスタートアップもあれば大企業もあって、いろいろなキャリアがあります。選択が難しくなっている一方で、私はそれをとてもうらやましく思います。
人は仕事をしている時間が人生の中でとても長いです。お金を稼ぐことも大事ですが、やっぱり楽しめる仕事に就いてほしいと思っています。大学時代からインターンをやってスタートアップをかじってみるとか、仕事じゃなくても海外でワーキングホリデーをしてみるとか、そうやって視野を広げていって、自分に合う会社に出会えたらいいなと思います。
学生の時代は本当に休みが取れる時間でしたが、社会人になるとそうはいきません。遊ぶこと自体もすごくいいと思いますが、こんなに自由な時間がある4年、5年はもうないので、ぜひ視野を広げて、いい仕事に就いてもらえたらと思っています。
学生に戻れたら、留学をもっと早くしたい
今学生時代に戻れるなら、留学をしておけばよかったと思っています。社会人になって英語を使う機会が増えて、自分は社会人になってから留学したのですが、正直遅かったなと感じています。語学の学習も遅かったですし、視野も狭かったと思います。日本の常識が実は非常識だったりすることもあるので、そういうことを早い段階から学んで、視野を広げられていたらよかったと今でもよく思います。
編集後記
今回インタビューさせていただいた中辻さんは、会計士・税理士として積み上げてきたキャリアから一転、起業という新しい挑戦に踏み出した方でした。ゼロから仕組みを作る大変さを率直に語ってくださったのが印象的で、選択肢が多い時代だからこそ視野を広げてほしいというメッセージには、自分自身のキャリアを考えるうえでもとても参考になりました。今回のお話を通じて、主体的に動くことの大切さを改めて感じることができました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。