インタビュー

「海外旅行に行きたい」から始まった。営業を天命に変えたキャリア

「海外旅行に行きたい」から始まった。営業を天命に変えたキャリア
PROFILE
シェルパワークス株式会社 代表取締役社長
米倉達哉

学生時代に見つけた「海外への憧れ」

ホテルでの4年間

私は学生のころ、ホテルで結婚式や宴会でフランス料理や懐石料理を配膳するアルバイトを、4年間続けていたんです。アルバイトの中には1つの宴会場全体を仕切る役割があるのですが、そこを任されていました。そうやって働きながらも、学生なのでいろいろな海外旅行にも行ってみようと思って、一番最初はバリ島に行って、その後はホノルルマラソンにも参加しました。

日本しか知らなかった自分が変わった

日本しか知らなかった自分が、海外に対してものすごく魅力を感じるようになったんですよね。それなら、仕事として海外旅行にただで行ける、携われる、そういう仕事をやろうと決め、旅行会社ばかりを受けていました。

旅行会社で法人営業を極めた7年間

海外旅行の仕事をとことんやった

海外旅行の旅行会社に入ってからは、海外旅行の仕事が結構とれたんですよね。飛び込み営業して自分で仕事をとって、お客様のやりたいとこを聴いて、「こういうところに行きませんか」と提案して、幹事さんとやり取りをしながら進めていきました。国内旅行は他の人に任せて、海外は自分で仕事をとって自分で行くということをずっと続けていました。おかげでいろいろやりたいことができましたし、行きたいところにも行けたんですよね。当時はまだほとんどなかったサッカー日本代表の観戦ツアーを自分で企画して、添乗員として海外まで応援に行ったこともあります。

旅行だけでは物足りなくなった

7年ぐらいやって、やりたいことができたなと思う反面、旅行会社の仕事は、それはそれで面白いんですけど、なんとなく物足りなさも出てきたんです。旅行そのものの価値は大きい一方で、もっと企業のビジネスそのものに影響を与える仕事がしたい、という思いが芽生えてきたんです。そこに対する欲が出てきて、旅行だけではダメだなということで、最終的には独立するために修行ができる会社を探すようになりました。そんな中で「営業のコンサルティングをする営業担当を募集」という求人を見つけて、それが2社目に転職した会社でした。

セールスサイエンスとの出会い

感覚でやっていた営業が体系化された

転職した先は富士ゼロックス総合教育研究所という会社で、そこで扱っていた商品はアメリカで開発されたセールスサイエンスメソッドのようなものでした。米国では、営業を個人の経験や勘だけに頼るのではなく、科学的に分析し、体系的に育成していく考え方が発展していました。当時の会社はその“売れ続ける営業パーソンに共通したスキルメソッド”を取り入れて日本で売っていく仕事をしていたので、私はどちらかというと営業力強化にどっぷり携わっていました。

自分自身が商品見本になる

その商品を売る営業パーソンは、いわば商品見本のような立場になるんです。「あなたみたいになれるなら欲しい」と思ってもらえることもあれば、「あなたみたいだったらいらないよ」という見方をされることもある。だから、営業というものを自分自身でものすごく鍛えましたね。旅行会社での法人営業も、ある程度業績は上げていて自負もあったんですけど、すごく感覚的だったんです。それがアメリカのセールスサイエンスメソッドと出会って、営業というものが体系化されて、難易度も高く奥深いものだと知りました。自分が商品として選んでもらえるように、とにかく勉強して鍛えて、再現性を持ってやれる状態にしていく。お手本になる先輩もたくさんいたので、そういう人たちにならって鍛えていきました。

40歳、東洋思想の研修で見つけた天命

人と組織をつなぐ役割としての営業

お客様の営業を鍛えるということで、ずっと営業の世界だけでやってきたんですけど、改めて営業はすごく魅力的な仕事だと感じるようになったんです。営業は単に数字を上げるという機能だけではなく、人と人、組織と組織をつないでいく役割を実感するようになっていました。そのつなぐ役割の人がうまくやっていけば、人と組織の豊かさというものを変えていけるような世界観がつくれる。これはもう天命だなと思ったのが、40歳ぐらいのころでした。

「あなたの天命は何ですか」

当時、東洋思想の権威である田口先生という方の研修を、会社から1年間かけて受けてきなさいと言われたんです。月に2回ほど出向く中で、「あなたの天命は何ですか」と問われるようになりました。そうして問いかけられるうちに、自分自身と深く向き合うようになっていったのです。考えれば考えるほど、やっぱり自分の天命は営業という領域でやっていくことで、営業という魅力的な仕事が活性化することで日本の経済が間接的に良くなっていく、そこに貢献したいということが明確になったんですよね。

独立、そしてシェルパワークス設立

営業力さえあれば何とかなる

もともと独立したいという思いもあったので、天命だと思った営業領域を軸に独立しようと決めました。学生の方からすると、営業はノルマがあって厳しくて、アプローチしても断られる、というネガティブなイメージを持たれがちなんですけど、確かにそういう要素がないわけではないにせよ、本当はつなぐ役割としてとても魅力的な仕事です。実際、独立するときは不安もありましたが、やってみると営業力さえあればなんとかなる。企業の看板がなくても、特に法人営業は、最終的には商品やサービスの内容もさることながら、営業力で勝てるということをすごく感じました。

シェルパワークスが手がける事業

BtoB企業の営業を伴走支援する

弊社は、法人営業をされているBtoBの企業様、特に中堅企業を主な対象として、営業組織の強化を支援しています。扱っているのは無形商材で、営業のコンサルティングや、現場に入っての伴走支援です。お客様にはさまざまな目標があり、チームで目標に向かっていくわけですが、競合もありますし、今の時代はお客様側もいろいろな情報を持っているので要求レベルがかなり高く、複雑化しています。そういったお客様に対応しながら成果を出していく、という関わり方をする支援をしている会社です。

営業には再現できる型を、マネジャーには育成の型を

営業パーソンに対しては、法人営業のプロセスとして、案件化・提案・受注という3つの共通した大きな壁があります。それを乗り越えるためにどんなアクションを起こさなければいけないのか、そのアクションを狙った通りの質でできるようになるために、どんな力をつける必要があるのか。体系化された考え方とトレーニングの型を注入し、それを確実に習慣化してできるようにするところまで、半年ぐらいかけて伴走型で関わっていきます。

マネジャーに対しては、マネジャー自身の力をつけるというよりも、メンバーにどう働きかけ、どんな戦略を展開し、メンバーの行動や能力をどう変えていくか、という関わり方に焦点を当てます。営業の世界は属人化しやすく、マネジャーも自分の経験にもとづいて感覚的に教えていることが多いんです。そこに弊社が持っている体系化されたメソッドを注入して、まずはベースの力をつけていただき、そこからさらに上がっていく人には自分なりのスタイルをつくってもらう。そういう関わり方の型を標準化できるように伴走しています。

自社の営業も、科学する

私たちは、お客様への営業だけでなく、自分たち自身の営業も科学しています。お客様の獲得は、基本的にすべてデジタルマーケティングでおこなっています。弊社が発信しているメディアサイトで、営業のお困りごとや課題をニュートラルな記事にして発信し、自社のサービスは一切出しません。そこを読んでくださった方がホワイトペーパーをダウンロードしてくださったら、インサイドセールスからお電話やメールでご連絡し、コミュニケーションをとってアポイントをいただく。そこからフィールドセールスがお客様のニーズを深掘りしながら、他社の事例やノウハウを紹介して、何度も対話を重ねる中で課題形成をおこない、提案につなげていく。この一連の流れが、弊社の得意領域になっています。

会社の規模は今15名ぐらいで、採用は今のところ中途採用がメインですが、今後は新卒採用も検討の余地があると考えています。

これから一緒に働きたい人

企業と企業をつなぐ役割に対して、面白いと感じてくれるような指向性がある人と一緒に働きたいですね。営業は自分の思った通りにつくれる仕事ではなく、常にお客様という相手がいる仕事です。思った通りにいかないことに対して真摯に向き合い、そこから何を学んで自分の糧にするか、という思考特性がある人。あとはベースのコミュニケーション能力です。ただし、話が上手いから売れるというわけではありません。相手の言っていることを、相手と同じイメージで絵が描けるような聞く力、どちらかというと伝えるよりも相手を理解する方のコミュニケーション力を持った人を求めています。

AIを活用した次の一手

昨今はどの企業もAIを導入していますが、私たちも今のコンサルティングというサービススタイルはそのままに、テクノロジーを活用して再現性や営業力の強化をもっと推進できるプロダクトを今つくっています。取り急ぎ着手しているのが、AIを活用した営業一人ひとりの能力分析ツールです。私たちが目指しているのは、能力を測って終わることではありません。現在地を知り、次に何を伸ばすべきかを明確にし、成長につなげることです。能力を測るだけでなく、将来的には測った結果から自分が今どの位置にいるかを認識し、マネジャーと一緒に半年後、1年後にどの項目をどの状態に持っていくか、目標に向けたナビゲーションのようなセットをして、最終的にはSaaSのツールとして提供していくという流れを考えています。

これはアメリカの「セールスイネーブルメント」という考え方にもとづいています。営業組織が戦略を狙った通りに高いレベルで実行できるようにするための組織づくりには、いろいろな要素があり、テクノロジーもその一つです。例えば提案の場面で、お客様のこの課題にはこの提案書が刺さる、とレコメンドしてくれるような仕組みが、これからもどんどん出てくると思います。しかし、人の能力すべてをテクノロジーで代替できるわけではありません。実行するのは人間なので、それを使って人の能力をさらに引き出すために活用していきます。弊社は、このセールスイネーブルメントの全体像の中からいくつかコアな部分をこれからもプロダクトとしてつくり、サービス提供していこうと考えています。それによって、企業がハイパフォーマーに依存するのではなく、一人ひとりが再現性を持って継続的に成果を生み出せる組織づくりにつなげていきたいという構想を持っています。

学生へのメッセージ

AIやテクノロジーが進化しても、営業という仕事はなくなるのではなく、その役割を変えながらますます重要な役割になっていくと思います。学生の皆さんがどんな仕事に就いても、この力はつながっていきますし、いずれ独立したいと思ったときも、立派な志があってもお客様に買っていただかなければビジネスは続きません。それをやっていけるのは、やっぱり営業力なんです。営業力は、ビジネスを生み出し、成長させるうえで極めて重要な力だと思います。そういう魅力的な職業なんだということを学生の皆さんにも感じてもらいたいですね。

今の若い方は本当にいろいろな情報を取れる環境にいますし、実際にたくさん情報を取っている方が多いと思います。昔の新入社員は、そもそもビジネスとは何なのかわからないことだらけの状態で会社に入り、それを先輩から教わっていくものでした。でも今の若い人は、下手したら先輩よりもビジネスのことを情報として持っている、インテリジェンスが高い人が多いんじゃないかと思います。その一方で、インテリジェンスを実際の行動にして成果につなげていくのは、会社に入ってからの作業になります。情報を試してみて、うまくいくこと、いかないことを検証する。その「経験学習サイクル」をぐるぐる回していくと、入社して2年目を迎えるころには圧倒的に差がついていると思うんです。それを学生の皆さんにすごく伝えたいメッセージですね。

編集後記

配膳バイトの仕切り役から、旅行会社の法人営業、そして営業力強化のプロフェッショナルへ。米倉さんのキャリアを伺っていて、営業という仕事が「つなぐ役割」として語られるたびに、私自身の学生起業の経験とも重なる部分が多く、とても勉強になりました。とくに印象的だったのは、40歳で天命を問われて初めて自分の軸が明確になったというお話です。情報を持っているだけでは差がつかず、実際に試してうまくいくかを検証する経験学習サイクルの大切さは、私たち学生にも今すぐ実践できる学びだと感じました。貴重なお話をありがとうございました。