インタビュー

お金にならないものを作ってきたからこそ、集客の本質が見えた ― 株式会社ペコリス・土居靖典が歩んだ美大生からweb広告のプロへの道

お金にならないものを作ってきたからこそ、集客の本質が見えた ― 株式会社ペコリス・土居靖典が歩んだ美大生からweb広告のプロへの道
PROFILE
株式会社ペコリス 代表取締役
土居 靖典

関西にある芸術大学で学んだ「お金にならないもの」

美術専攻で学んだお金の感覚

私は関西にある芸術大学に通っていて、美術を専攻していました。そこで叩き込まれたのは、お金を稼ぐこととは真反対のことだったんです。お金や利益を目的に絵を描いてはいけない、もっと分厚いものを形にしなさい、そういう教えでした。だから当時は、お金に対する感覚が究極に鈍い時代だったと思います。

バイトは目的を守るための手段

その頃の私にとって大事だったのは、企業に入ることよりも、自分がやりたいことを成し遂げることでした。当時は音楽の道を志していて、それを守るためにアルバイトで生活費を稼いでいました。仕事に対する価値観というのはあまりなくて、やりたいことを守るための手段として、とにかく働いていた感じでしたね。

webデザインとの出会いから広告の世界へ

独学で始めたwebデザイン

当時29歳だった2005年の頃、Webデザインに興味を持ちました。当時はちょうど、ホームページを作る人が急速に増えていた時期だったんです。Photoshopなどのソフトを練習し、HTMLを使って自分が思い描いたデザインをWebサイトとして形にすることに、どんどんのめり込んでいきました。かつて芸術大学でデザインや色彩の感覚を学んでいたので、私にとっては、表現の舞台がキャンバスからデジタル上へと移ったような感覚でした。

マーケティングを独学で学ぶ

転職して、web事業部でホームページを作る仕事に携わることになりました。ホームページが出来上がったら、次はお客さんを集めてこないといけません。それで、webマーケティングのことを勉強しだしたんです。

ネット広告への懐疑を超えて

当時、インターネット広告に対しては懐疑的な感覚を持っている社長さんが多くて、テレビなどマスメディアの方が大事だという空気がありました。しかし私たちからすると、ネット広告の方がコンバージョンがわかるし、費用対効果もわかる。そこに可能性を感じていました。その企業に5年ほど勤めたあと、独立することを決めました。

独立、そして11年目を迎えて

リスティング広告専門で独立

独立してからは、Google広告やYahoo!広告などを専門で運用する会社としてやってきました。おかげさまで、今年で11年目を迎えることができています。

担当者がころころ変わる業界の課題

広告業界を見ていると、担当者がころころ変わったり、連絡がなかなか取れなかったり、返事が返ってこなかったりと、顧客対応の面で課題を抱えている会社さんが多いという印象を持っていました。だからこそ、しっかりとコミュニケーションを取って、お客さんが本当に何を求めているのかを、当たり前のこととしてきちんと対応していくことを大切にしてきました。

成果より、まず向き合う姿勢

もちろん、成果を出さないとクライアントさんとしては満足できません。広告の勉強もしっかりやります。ですが、成果というのは絶対に約束できるものではなくて、チャレンジしてもうまくいかないこともあります。大事なのは、お客さんとちゃんと向き合えているかどうかなんですよね。放置されたような状態になっているクライアントさんは、やっぱり多くて、そういう方が不満を抱えていらっしゃる背景があります。だからこそ、そこにきちんと向き合っていくことを大切にしています。技術面や知識面についても、勉強を重ねて、この前は書籍も出版させていただきました。YouTubeでの発信をきっかけに、出版社の方からお声がけいただいた形です。

丁寧な仕事を継続すること

フェーズに応じて変化してきた

会社にはいろいろなフェーズがあると思っていて、忙しくなる時期もあれば、少し落ち着く時期もあります。10年、11年目を迎えて改めて思うのは、一つひとつ丁寧にお客さんと向き合って、目の前の課題をしっかり解決していくことが、大事だということです。

集客の喜びが原動力

11年続けてこられた原動力は何かと聞かれると、やっぱり集客がうまくいって、お客さんに喜んでもらえて「ありがとうございます」と言ってもらえることが、一番気持ちがいいんですよね。ネットの世界は結構リテラシーが低いとチャレンジできない部分があって、情報や知識を持っている人だけがメリットを得られるという側面もあると思います。それでも、弊社を信頼して一任していただき、期待と同等かそれ以上の成果を返すことができたとき、「私たちも役に立っている」という強い実感が湧いてきます。やはり、そういう瞬間がこの仕事の一番のやりがいですね。

現在は、役員が2名、そこに業務委託のスタッフの方々に加わった体制を組んでいます。

20代のハードワークについて思うこと

雇用にひそむリスクという視点

現在は雇用される従業員さんの方が、法的に立場が強いんですよね。弱者を守るという観点はもちろん大事です。しかし、経営者側からすると、雇用することのリスクというのも実はあって、極端に言えば働かなくても給料を払わなければいけない仕組みになってしまう。これが長期的には日本の会社の力を弱めてしまうんじゃないかと感じることがあります。みなさんが自分の権利や主張を大切にする流れは、表面的にはいいことだとされていますが、実はその裏で業務委託が増えているという側面もあるんですよね。

20代は無理がきく時期

どんな働き方をしたらいいのか、これは少し古めかしい考え方かもしれませんが、私は20代はハードワークが大事だと思っています。30代になるとなかなかハードワークができない。20代のうちにがむしゃらになって時間を使って働くという経験は、20代でしかできないと思うんです。そういう経験をしてきた人の方が、仕事において比較的うまくいくのかなという気がしています。

大学生へのメッセージ

やってみないとわからない

今の学生さんは、どういう働き方が正しいのかという知識がとても豊富な状態だと思います。ブラック企業に勤めたくない、こういう働き方をするべきだ、といった情報で埋め尽くされている印象があって、もちろんそれも大事なことです。理不尽で自分の体調を守るためには、そういうロジックは必要だと思います。その一方で、自分がやってみて面白いと思える仕事は、細かいことを抜きにして思い切り突き詰めてみるのもいいと思っています。仕事はやってみないとわからないじゃないですか。やってみて、どうしてもあかんなと思ったら、やめたらいいと思います。

まずは3年続けてみる

私自身の感覚だと、3年ぐらい仕事を続けて、やっと一周したような、なんとなくわかるという感覚が持てました。そこからさらに2年ぐらいで、利益を生み出せるようになってくる。ですから、3年ぐらいは頑張ってみた方がいいんじゃないかなと思います。

完全リモートで働くという選択

義務感を排除した会社のあり方

弊社は完全にリモートワークで運営しています。基本的にはフレックスで、社員によっては朝5時から作業をしていたり、私自身も1ヶ月間カナダに滞在して、そこで仕事をしていたこともあります。そういう働き方ができる業界でもあるので、仕事に対する義務感や、こうあらねばならないという感覚を究極まで排除して、それでも結果を残していく。そういう会社のあり方を大切にしています。海外の方が働くという可能性も感じていますね。

編集後記

今回のインタビューを通して、印象に残ったのは「3年は続けてみる」という言葉でした。すぐに答えが欲しくなったり、合わないと感じたらすぐに離れたくなったりすることが多い自分にとって、なんとなくわかるようになるまでにも時間がかかる、という当たり前だけど見落としがちな視点をいただいたように思います。美大で「お金にならないもの」を突き詰めてきた経験が、結果的にお客さんと丁寧に向き合う今の仕事の土台になっているというお話も、とても印象的でした。就職活動を控える身として、目の前のことに向き合い続ける姿勢を、私も大切にしていきたいと感じました。