ハローワーク経由でIT業界へ
私はもともと広告代理店の出身です。最初にIT企業へ入社したのは、ハローワーク経由でした。IT企業へ入社してから三年八か月というスピードで社長を任せていただき、そこから約十年、上場企業の子会社の社長として経営に携わりました。
当時のIT業界は今よりも勢いがある時代で、サイバーエージェントの藤田さんと同世代というくらいの空気感でした。どちらかというと勢いに乗っていくタイプの経営が求められる業界で、その流れに乗っていくのが自分の性格にも合っていたと思います。
山を間違えないという考え方
未経験の業界に飛び込む上で意識していたのは、成長している業界を選ぶことでした。売るものが変わっても、商品知識さえ身につければ、人にものの良さを伝える力は活かせると思っていたこともあります。だからこそ、これから伸びていく業界に飛び込んで自分の実力を試してみたいという気持ちが強くありました。
独立を決めた理由
子会社の社長という立場は、業績を上げても裁量には限界がありました。私が担当していた会社は、グループの中でも業績・売上ともに高い水準でしたが、それに見合うだけの自由な意思決定ができる環境ではなかったというのが、正直なところです。頑張れば頑張るほど、その努力と裁量のバランスに疑問を感じるようになっていきました。
年齢を重ねる中で、この先の人生をどう使うかを考えたとき、自分の裁量で決断できる環境に身を置きたいという思いが強くなり、独立を決意しました。
タレントキャスティングという選択
独立する際、前職と同じ事業をそのまま手がけるのはリスクがあると考え、もともと軸に置いていたインターネット広告事業に加えて、新たにタレントキャスティング事業を始めることにしました。
前職から一緒に来てくれたメンバーの力を借りながらSEOに力を入れ、検索結果の上位に表示されるようにしていったところ、問い合わせが着実に増えていきました。検索で上位に来ていることが芸能事務所にも伝わり、事務所側からの提案も増えていきました。特定の事務所の系列に属さず、さまざまな事務所とフラットに付き合えることは、弊社の強みのひとつになっています。
趣味から派生したプロレスや芸能のメディア、キャスティング事業も手がけていて、プロレスキャスティングに関しては国内でも有数の実績になっていると思います。好きなことを仕事にできているのは、自分にとって大きな財産です。
社員を優先した二年間
会社を立ち上げてから一番苦労したのは、資金繰りです。ひとりで始めたときは自分の生活費だけを考えていればよかったのですが、半年ほどで社員が四、五人に増え、その給料を全て自分で工面しなければならなくなりました。二年間、自分の給料よりも社員の給料を優先してきました。当時はすでに結婚していたので、家計の面では妻に申し訳なく思うこともありましたが、それでも必ず成功させるという気持ちだけは持ち続けていました。
社員が「入ってよかった」と思える会社へ
弊社が掲げる「ストロング・ベンチャー・スタイル」という言葉は、厳しいノルマを課すという意味ではありません。人生は七割ほど厳しく、三割ほど幸せというくらいのバランスが丁度良く、そのくらいのバランスの中で人は成長していけると考えています。だからこそ、長く働き続けられる会社であることを大切にしたいと思っています。
社員一人ひとりが定年を迎えるときに「この会社に入ってよかった」と思ってもらえるように、福利厚生などの制度も少しずつ整えているところです。今入ってくれた社員にとっては制度がゼロからのスタートになりますが、そこから満足度を上げていけるように、日々考えながら経営しています。
事業面では、東京都をはじめとする公的機関からの案件を任せていただけるようになっていて、こうした信頼をベースにタレントキャスティング事業をさらに拡大し、中小企業の中で圧倒的なナンバーワンを目指したいと考えています。芸能やプロレスのメディア事業についても、より多くの企業様に選んでいただけるメディアに育てていきたいと思っています。
学生へのメッセージ
会社の本当の良さは、実際に飛び込んでみるまでなかなかわからないものです。就職してから、思っていたのと違うと感じることもあると思います。大事なのは、自分が本来やりたかったことや、自分の性格に合う環境かどうかを見極めることです。何を目指すかは、三十歳や四十歳になってもわからないことがあります。
成長している業界に飛び込んでみるのもひとつの選択肢ですし、成長業界でなくても、自分の好きなことに飛び込んでみるのもよいと思います。会社が自分の価値観に合わないと感じたら、その感覚を信じてほしいと思います。面接だけではわからないことも多いので、最終的には自分の目で見て、心で感じたものを大事にしてほしいです。お金の多さや会社の規模、知名度ではなく、自分の好きなことができる環境かどうかが何より大切で、そこで成長できるかどうかは、結局は自分次第だと思います。
編集後記
ハローワークから始まったキャリアを、実力とスピードで駆け上がってこられた山口様のお話には、裁量を求めて独立を決断する強さと、社員を大切にする温かさの両方が感じられました。「ストロング・ベンチャー・スタイル」という言葉の裏にある、厳しさと幸せのバランスという考え方は、就職活動を控える私自身の会社選びの視点にも重なるものがありました。自分の心で会社を見極めるという言葉を、これからの選択の中で大切にしたいと思います。