株式会社SANVIA(サンヴィア)で代表取締役をしている宇賀神虎乃介です。私たちは、NFCカードへタッチするまでスマートフォンのアプリを使えなくする「DeTech」と、離れた場所まで歩いてタッチしないと止まらない目覚まし「TAP:UP」という2つのプロダクトを、自分たちで企画し、自分たちで育てています。
勉強も、大学も、うまくいかなかった
中学から、勉強が苦手だった
正直に言うと、私は頭がいい人間ではないと思っています。中学生のころから勉強はまったく得意ではなく、そこから本日まで、自分なりに工夫しながら努力してきました。その過程でいちばん苦労したのが、勉強の習慣をつくることでした。何かをやろうと決めても、手元のスマートフォンにすぐ意識を持っていかれてしまう。そこにテクノロジーの力を使えないかと考えたのが、起業のきっかけです。
二度、大学をやめた
私は明治大学に進学したものの中退し、渡米してカリフォルニアのカレッジでコンピューターサイエンスを専攻しました。ただ、そのアメリカの大学も最終的にはやめています。今は形のうえでは高卒です。周りからは「リスクを取った」とよく言われるのですが、私自身はそれをかっこいいものだとは思っていません。留学の費用は親に出してもらっていますし、そもそも選択肢を持てたこと自体が恵まれていたことなので、感謝はしていますが、誇るようなことではないと思っています。
日本の大学をやめた当時は、もっとハイキャリアな道を目指して、いい大学、いい会社に入りたいという気持ちでした。ただ、AIがどんどん進化していく時代のなかで、キャリアの「正解」自体が揺らいでいると感じるようになりました。自分の頭で考えた結果、今こうして自分で事業をつくる道にたどり着きました。
「DeTech」と「TAP:UP」、2つのプロダクト
カードに触れるまで、解除できない
いちばん力を入れているのが「DeTech」というアプリです。頑張りたい人ほどスマートフォンにディストラクト(気を散らされること)されて集中できない、という課題を解くためのプロダクトです。既存のスマホ制限アプリは、結局パスワードなどで自分で管理する仕組みなので、自分で解除したり「あと5分だけ」と延長したりできてしまいます。DeTechは、制限中に使いたいアプリを選んでブロックすると、専用のカードにタッチするまで解除できません。このカードを物理的に離れた場所に置いておけば、意志の力に頼らなくても、集中できる環境そのものをつくれます。
受験生であれば、カードを自宅に置いたまま塾へ行き、帰ってくるまでLINEなどの必要な連絡は使えても、SNSのような「ノイズ」だけをブロックする。社会人であれば、カードをオフィスに置いて帰れば、寝る前についスマートフォンを触ってしまうことや、通勤電車での通知チェックを防げます。リリースから半年ほどで、1,000人以上の方にご購入いただいています。
朝の一歩目を、確実にする
もう一つの「TAP:UP」は、名前のとおりタップして起きる目覚ましです。仕組みはDeTechに近く、アラームを止めるには専用のデバイスにスマートフォンをかざす必要があるので、ベッドから離れた場所にデバイスを置いておけば、必ず起き上がることになります。何時に起きると前の晩に決めても、朝になるとその約束を守るのは意外と難しいものです。朝起きることは、1日の最初に自分と交わす約束だと思っているので、そこを環境の力で後押ししたいという思いでつくりました。
目指しているのは、集中できる場所を増やすこと
スマホ依存という、大きすぎる課題
事業を通じて実現したいのは、人の役に立つことに尽きます。なかでも、スマートフォン依存はとても深刻な問題だと考えており、最も紐解きたい課題です。ドーパミンを刺激する設計で人の時間を奪う仕組みに、個人が意志の力だけで対抗するのは簡単ではありません。大きすぎる課題だとは分かっていますが、まずは勉強や資格の勉強を頑張りたい方が、ディストラクトされない環境をつくりたいと思っています。
個人向けから、場所へ
今はDeTechを個人の方に買っていただく形が中心ですが、将来的には、自習室やコワーキングスペース、勉強できるカフェ、資格の学校などに導入してもらい、自然と集中できる、という「集中スポット」を増やしていきたいと考えています。まだはっきりと形が決まっているわけではありませんが、この課題に取り組み続けたいという思いは変わりません。
謙虚さについて、僕なりの考え
自信のなさを、謙虚さと呼ばない
留学中、いろいろな人に出会うなかで感じたのは、日本人は謙虚さと自信のなさを同時に抱えやすいということです。たとえばアメリカの授業では、答えが間違っていても堂々と発言する方が多く、失敗してもあまり気にしません。一方、日本では自信を持って発言しないことを「まだまだですから」というように、控えめさとして美化してしまいがちだと感じています。自信を持って行動することと、謙虚であることは、本来矛盾しないはずです。
感謝を忘れないこと
私が大事にしている謙虚さとは、感謝を忘れないことです。日本の大学をやめてアメリカに渡り、そこもやめて自分で事業をはじめる、という選択ができたのは、恵まれた環境があったからにほかなりません。たとえば親の看病のためにすぐにでも収入が必要な状況だったら、同じ選択はできなかったはずです。留学先には裕福な家庭の人も多くいましたが、そのなかには、日本の大学に通う人を見下すような発言をする方もいました。そうした姿を見てきたからこそ、自分の置かれた環境への感謝は忘れてはいけないと思っています。
この会社のよくある質問
インターンやアルバイトとして参加できますか? はい。今は「DeTech」や「TAP:UP」のマーケティングや営業をご一緒してくださる方を探しています。まだまだ小さな会社ですが、事業の成長を一緒につくっていける環境です。
どんな方が向いていますか? スマートフォン依存や朝起きられないといった、身近だけれど深刻な課題の解決に共感してくれる方だと嬉しいです。今のメンバーは7名ほどで、海外の大学で学んで来られた方や日本の大学生が中心の、少人数のチームです。
一緒に働く仲間を、探しています
会社を立ち上げてまだ日が浅く、課題もたくさんありますが、自分のビジョンや考え方に共感してくれる方がいれば、一緒に成長していけたら嬉しいです。スマートフォン依存も、朝起きることも、誰にとっても身近な問題だと思うので、興味を持ってくれた方はぜひ連絡をいただけたらと思います。
編集後記
早稲田大学3年生で、今回インタビューを担当させていただきました。23歳という年齢で会社を経営されている宇賀神さんのお話は、同世代として率直に刺激を受けるものでした。とくに「自信のなさを謙虚さと呼ばない」という考え方は、就職活動やこれからのキャリアを考えるうえでも大切な視点だと感じます。ぜひ多くの学生に読んでいただきたいインタビューです。