意外な経歴からはじまった
お寿司屋さんになりたかった
子どもの頃から漫画を描いたりするのが好きな子どもではあったのですが、高校を卒業したときには、当時のテレビドラマの影響もあり、お寿司屋さんになりたいと思っていました。それで、お寿司屋さんで修行をはじめて、20代はほとんどそちらの世界で過ごしていました。
スペインでの5年間が転機に
30歳のときに、スペインに行く機会がありました。当時スペインでは日本食ブームがあって、日本食レストランに「うちで働かないか」と誘っていただいたのがきっかけです。それから5年弱ほど、マドリッドの日本食レストランで働くことになりました。
スペインでは、絵画を見るのが好きだったのでプラド美術館に通ったり、休みの日はいろいろな美術館を回ったりしていました。ヨーロッパならではの町の空気感や雰囲気が、日本とはまったく違っていて、だいぶ感化されたと思います。
日本にいると、日々の仕事に追われて自分の過去や、これからどう生きていきたいのかを見つめる機会は意外とないものです。スペインでは時間がゆっくり流れていて、海外という環境の中で、自分の人生をどう生きていくのかを真剣に考える機会がありました。あの経験は全部、今にプラスになっていると思います。
個人事業からの法人化
その後、個人ではじめていたデザインの仕事がだいぶ安定してきたので、飲食店をやめて今の本業に集中していくことにしました。しばらく個人でやっていたのですが、法人化したのはまだ4期目です。会社としてはまだ新しく、これから経営についてもしっかり学びながら成長させていきたいと思っています。
「わかるつたわる」を武器にする理由
Webと似顔絵イラストが主力
現在の事業は、売り上げの比重で見るとWebサイト制作が一番大きく、そのほかイラスト制作、なかでも似顔絵の作成はコンスタントにご依頼をいただいています。もともと漫画を描くのが好きだったので、似顔絵は一番得意な分野といえば得意な分野です。
分かりやすさにこだわる
弊社は「わかるつたわる」というキャッチコピーを掲げています。今はデザイン業界も複雑になっていて、AIが仕事の一つの方法として一般的に導入されるなど、いろいろなものがごちゃごちゃになってきていると感じます。
どんなホームページでも、チラシやDM、名刺にしても、どういう方にどういうサービスを提供したいのか、そのサービスがどういうものなのかを分かりやすく伝えないと伝わりません。なじみのない業種でも分かりやすい言葉を使ったり、文章を精査して伝わりやすくしたり、構造や動線まで含めて、お客様の事業をとにかく分かりやすく、届けたい方に届けられるようにサポートすることを強みにしています。
全国から選ばれる一人社長
拠点は愛媛県松山市ですが、印刷物系の仕事は地元のお客様が多い一方で、ホームページ制作やイラストのご依頼は全国から寄せられており、むしろ県外のお客様の比率のほうが高いくらいです。地元に素晴らしい制作会社がたくさんあるなかで、遠方から弊社を指名していただけるのは本当にありがたいことだと感じています。
既存のお客様からのご紹介でよりも、ホームページの内容を見て「ここにお願いしたい」と思ってきていただけることのほうが多いです。かなり頻繁に修正をおこなっていて、常にブラッシュアップを心がけています。
大きくするより、磨いていく
今後については、事業を広げたり大きくしたりすることはあまり考えていません。コンセプトに合ったサービスを提供するという強みをどんどん磨いていって、地元のお客様も県外のお客様も含めて、お仕事がうまくいくようなサポートを今よりもっと丁寧におこなっていきたいと思っています。
新しい試みにもアンテナを伸ばしながら導入し、ご提案しつつ、一緒に頑張っていけるパートナーとしてお客様の隣にいたい。そう思ってもらえるような立ち位置を定めていきたいです。最近はテレビ出演やプロデュース業の話をいただくこともあるのですが、そういったお話はすべてお断りしています。社内は少人数で小規模にやっていて、その中でできることを磨いていけたらいいと考えています。
現在は基本的に二人体制で、大きな規模のプロジェクトになると、パートナーや業務提携先と協力してチームを組み、プロジェクトの大きさによってフレキシブルに体制を変えながら進めています。
学生へ伝えたいこと
何かに特化したほうがいい
自分が20歳くらいのころ何を考えていたかというと、正直あまり何も考えていなかった気がします。今の年代の方のほうがしっかり自分の人生プランを考えていて、リスペクトしているのですが、あえて言わせていただくと、誰しも何かしら自分の強みがあると思います。気づいているものもあれば、気づいていないもの、忘れてしまったもの、遠ざかってしまったものもあるかもしれません。
汎用的で大きい会社に勤めたからといって一生幸せかというとそうでもないですし、専門性が上がって分野も細分化してきているなかで、何かに特化していないと選ばれにくくなってきています。これは起業しても会社に勤めても同じだと思います。自分の強みを伸ばす努力を続けることが大切です。
飲食店の仕事が長かったのですが、たとえばカレーを食べたいと思ったときに「あの店だよね」と思い浮かぶカレー屋さん、焼肉を食べたいなら「あそこの焼肉屋だよね」というお店があると思います。何かを求められたときに思い出してもらえる人や会社、お店は、ある程度特化しています。何でもできるというより、何かに特化して尖らせていったほうが、一点突破力があります。自分の好きなことをやっているほうが長く続きますし、お金のためだけに嫌な仕事を頑張っていると疲弊してしまいます。稼げる仕事になるまで時間がかかることもあるかもしれませんが、忘れずに続けていくことで、将来的に幸せになれるのではないかと個人的には思っています。
AIが一般的になって、いろいろな仕事がAIに置き換わっていくのは仕方のないことだと思います。だからこそ、突き抜けた部分がないと「AIでいいよね」となってしまいます。将来のビジョンを定めていくときには、そこも一つの要因になってくると思います。
編集後記
寿司職人からスペインでの日本食レストラン勤務、そしてデザイン業へという横内さんの経歴には、驚きの連続でした。「わかるつたわる」という言葉に込められた分かりやすさへのこだわりは、規模を追わずに磨き続けるという経営姿勢そのものだと感じます。何かに特化することの大切さを説くお話は、将来のキャリアに悩む学生にとって、実体験に裏打ちされた説得力のあるメッセージだと思いました。