野球しか知らなかった自分が、会社をつくるまで
不完全燃焼だった野球人生
幼少期から高校卒業まで、野球漬けの日々を送ってきました。とはいえ、どこかやりきれない思いや、不完全燃焼な感覚が残っており、「もっとできたのではないか」という後悔を抱えていたのです。次のステージでは、何事も悔いなくやりきりたい。そう心に決め、最も熱中できるものを探していたときに出会った選択肢が、「自分で会社をつくること」でした。それが、私の起業の経緯です。
プログラマーとしての1年目
会社設立当初の1年目は、実はドローン事業は行っていませんでした。もともと私自身がプログラマーだったこともあり、Webアプリの制作やECサイト、Webサイト構築といった受託開発をメインとしていました。当時、インターネットやプログラミングの世界は、私にとって非常に革新的で、未来を感じる面白い分野だったのです。
空を見上げて気づいたこと
とはいえ、いざ起業してみると、当時のインターネット産業はすでに成熟しきっており、大きな革新の時期は終わりを迎えていました。「これから事業を広げるなら、もっと成長産業に身を置きたい」。そう考えていた頃、趣味で触れていたのがドローンでした。あるとき、「空を見上げてもドローンは飛んでいない」という事実にふと気づきました。このまま10年後、100年後もドローンが飛ばない世界というのは、少し想像しにくい。インターネットが当たり前になったように、いつかはドローンも誰もが身近に感じる存在になるはずだ。そう確信し、事業の方向性を大きく転換しました。
教育と開発、2つの軸でドローン業界を支える
教育事業と開発事業という2つの柱
現在、弊社は大きく分けて教育事業と開発事業の2つを柱としています。教育事業は、ドローンの国家資格取得を目指すスクール運営です。自動車教習所のような仕組みで、国が管理し、認められた教育機関のみが資格を発行できる制度となっています。「塾」というブランド名で、全国に25拠点を展開しています。もう一方の開発事業では、ドローンや4足歩行ロボットなどのハードウェアではなく、ソフトウェアの開発を主軸としています。
現場の声から生まれるソフトウェア
開発事業は、教育事業と密接につながっています。建設業、農業、警察、消防など、さまざまな業種の方がまずは資格取得のためにスクールへ来られます。そこで受講生と対話するなかで、「こんな業務のために資格が必要だ」「今後こんなことを実現したい」といった具体的なニーズを拾い上げるようになりました。既存製品でカバーしきれない課題も多々あります。そこで、私のプログラマーとしてのバックグラウンドを活かし、ソフトウェアの開発を行っています。具体的には、ドローンや4足歩行ロボットを自動で巡回・点検させるシステムや、飛行可能スポットの地図アプリなどが代表例です。
資格を取って終わりにしない仕組み
資格ビジネスの多くは、自動車教習所のように「免許を取って終わり」になりがちです。全国的に見ても、取得後のサポート体制が整っているところはほとんどありません。対して弊社では、運営するドローンコミュニティへ卒業生が無料で入れるような仕組みを整え、強力なアフターサポートを提供しています。卒業生同士のつながりや、継続的な学びを得られる点は、弊社の大きな強みです。卒業生がそのままコミュニティに参加する流れが確立されており、これも教育事業の一部として位置づけています。
平均年齢26歳の会社が描く、空の未来
平均年齢26歳という異色の会社
私たちには2つのビジョンがあります。1つ目は、業界の年齢層を刷新することです。ドローン業界は新しいテクノロジーであるにもかかわらず、実際は50代前後が中心で、若い世代が少ないのが実情です。そのなかで、弊社は平均年齢26歳という異色の構成で運営しています。20代のみで構成された会社は珍しく、この業界では稀有な存在です。平均年齢が高い業界において、弊社が存在感を示すことで、「自分たちも挑戦したい」という20代の企業が増え、30代の方にとっても刺激になるはずです。
空の裾野を広げるという使命
2つ目は、先述した「空を見上げてもドローンが飛んでいない」という現状を打破することです。業界の裾野を広げることが非常に重要だと考えています。これまでドローンは、専門家やプロしか触れないテクノロジーでした。しかし、教育事業を通じて多くの個人や企業がドローンを扱えるようになれば、空を飛び交う世界の実現に一歩近づきます。この裾野を広げることこそが、弊社のミッションです。具体的には、上空150m未満の空域であれば、大型の「空飛ぶクルマ」による移動手段や、小型ドローンによる物流宅配などが想定されます。人類の移動手段はこれまで地上ばかりでしたが、今後は大小さまざまなものが空を飛び交う未来を描いています。また、エンジニアの少なさが日本のドローン業界における1つの課題でもあるため、これまでのIT開発経験を活かし、私たちがその領域を底上げしていきたいと考えています。
3〜4年前からは、SNSにも注力しています。学生時代からYouTubeでの発信を続けてきました。個人的にはSNSが好きではありませんが、専門的で堅いイメージのあるドローンを、日常の中で親しみのあるものとして感じてもらうために欠かせない活動だと考えています。おかげさまで、登録者も少しずつ増えてきました。
学生へのメッセージ:固定観念を捨てて、自分の道を広く見てほしい
高校まで野球一筋だった私は、大学でも体育教師を目指す学部に進みました。周囲はみな体育教師を目指していましたが、その学部に行ったからといって必ずしも教員にならなければいけないわけではありません。理系学部だからといって、理系職に就く必要もないのです。学生であれば、いくらでもやりたいことに挑戦していいはずです。
しかし、自分の得意不得意を知る過程で、「これまでの経験」を理由にして、自ら道を狭めてしまっていることはないでしょうか。私自身、体育大学に通いながら独学でプログラミングを学び、IT企業を起業しました。そこからさらに興味が移れば、ドローンという全く異なる領域にも、若さとやる気さえあれば飛び込めます。「理系だから」「これまでこれをやってきたから」といった固定観念を捨て、自分の道を広く見てほしいと思っています。
編集後記
学生起業に興味を持つ身として、藤本さんのお話は非常に刺激的でした。野球に打ち込んだ経験からプログラミング、そしてドローンへと異なる分野へ飛び込みながらも、それぞれの経験を次のステージへつなげている姿が印象的です。「学部や過去の経験にとらわれず、道を広く見てほしい」というメッセージは、今の私に深く刺さるものでした。空の裾野を広げるというビジョンの実現を、これからも応援しています。