携帯電話とカーナビが生んだ「品質専業」という発想
携帯電話の普及が始まりだった
弊社の前身は、1983年、当時のCSK(現SCSK)が、ある開発プロジェクトのシステムテストを依頼されたところから始まりました。1990年代に入ると、携帯電話やカーナビ、デジタルテレビなど、ソフトウェアを搭載したコンシューマー製品が相次いで登場しました。製品の高度化が進む一方で、ソフトウェアの不具合が社会に与える影響も大きくなり、品質確保の重要性が高まっていきました。
こうした市場環境を背景に、2001年7月、CSKで検証サービス事業を担っていた部門が分社化され、ベリサーブが設立されました。第三者の立場からソフトウェアの品質を専門的に検証する企業として、ソフトウェアテストと品質保証に特化した事業を本格的にスタートしました。当時、品質を軸にした専業の企業は少なく、ベリサーブは先駆者として事業を展開してきました。
「品質保証」一本で勝負する理由
品質はコストと天秤にかけられる
弊社は、ソフトウェアのテストや品質保証を中心に、システム開発が複雑化する中、品質の観点からプロジェクトを支援する業務や、組織全体のプロジェクトマネジメント活動を支援するPMO(Project Management Office)など、品質に関わる業務を幅広く手掛けています。創業当初は、携帯電話やカーナビ、デジタルテレビといった組み込み製品が中心でしたが、最近では、AIを組み込んだサービスへと品質保証の対象を広げています。
品質はコストと時間をかけることで高められます。しかし、製品開発に投入できるコストや時間は有限です。だからこそ、どのような観点や基準で品質を評価し、どの程度のコストと時間をかけるのかを見極めることが重要です。特に、新しい要素技術やAIを取り入れる際、企業が「この程度まで対応すれば十分だろう」という品質基準を設定することは容易ではありません。こうした課題に対応するため、私たちのような品質の専業企業が、お客様の品質保証を支援しています。
弊社はソフトウェアであれば、業界や製品を問わず対応しています。企業の基幹業務を支えるERP(Enterprise Resource Planning)システムや、製造業における生産管理システムなど、規模の大きいエンタープライズ系システムの品質保証も支援しています。
「なぜ変わるのか」を問い続けた5ヶ月
AIの台頭が社長交代の背景に
今年4月に私が社長に就任した背景には、AIの社会実装が我々の想像以上に加速しているという状況があると思います。従来ソフトウェア品質の評価は、仕様通りに動作するかを確認することが中心でした。しかし、これからは「人がAIを安心して利用できるか」「社会にどのような影響を及ぼすか」といった観点も品質評価の対象になると考えています。だからこそ、弊社は「テストを実施するだけの企業」ではなく「品質創造企業」を標ぼうし、進化していきたいと考えています。
就任後、最も苦労しているのは、市場環境が急速に変化する中、私たち自身も変化しなければならないという認識を組織全体で共有することです。ベリサーブには非常に優秀なエンジニアが多く、これまで培ってきた品質技術に対して、一人ひとりが強い誇りを持っています。一方で、市場が変化する中、従来の方法を続けるだけでは将来の成長にも影響が及ぶ可能性があります。こうした変化に対応する必要性を全社員に理解してもらうため、全体会議や現場での懇話会などの場で積極的にメッセージを発信し続けています。
私自身は、これまで培ってきた品質へのこだわりを、お客様の事業に直接貢献する「ビジネスアウトカム」へとつなげていきたいと考えています。社員には、単に「これからこうなる」という答えを示すのではなく、「なぜベリサーブは今、変わるべきなのか」という理由と目的を伝えるようにしています。
「品質を確認する企業」から「一緒に創る企業」へ
弊社は、これまでソフトウェアの品質保証分野における先駆者として事業を展開してきました。一方で、AIが社会のあらゆる場面で活用される時代になり、品質という言葉の定義そのものが変わろうとしています。品質を確認する企業から、企画段階から品質を共に創る企業へ。この変革を実現することが、私が社長に就任した最大の理由です。
私自身が思い描いているのは、品質が企業の競争力になる社会です。品質は、コストをかけようと思えば際限なくかけられます。その一方で、企業にとっては「品質はコスト」と捉えることも少なくありません。しかしAI時代には、安全・安心、信頼そのものが企業価値になると考えています。ベリサーブとして、AIを活用した製品やサービスが安心して社会に受け入れられる未来を支えたいですし、お客様と共に品質を創り、企業の成長と社会の発展に貢献する存在であり続けたいと考えています。品質を単なるコストから、「企業の競争力」に変えていきたいというのが、弊社の思いです。
「考える力」と「問い続ける力」を大切に
答えを探すより、正しさの基準を考える
学生時代にぜひ身につけてほしいのは、「考える力」と「問い続ける力」の2つです。正解を覚えること以上に、なぜそうなるのか、本当にそれでよいのかと自ら問いを立て、自分なりの仮説を立てて検証する経験を大切にしてほしいと思っています。
AIが急速に普及するこれからの時代は、答えを探す力だけでなく、何をもって正しいとするのかを考える力が、ますます重要になります。弊社の品質保証の仕事もまさに同じで、事象を観察し、背景を理解し、仮説を立てて検証することで、社会で安心して利用できる品質につなげています。学生時代に培った思考のプロセスは、そのまま仕事の土台になります。特別な経験や完成されたスキルも重要ですが、自ら学び、問い続け、行動する姿勢を大切にしてください。
※掲載内容は、2026年8月取材当時のものです。
編集後記
今回、品質保証という特定の領域に特化して事業を展開されている企業様にお話をうかがうのは初めてでした。品質は「作って終わり」ではなく、時代とともに定義そのものが変わっていくものなのだと、鴫原さんのお話を通して実感しました。AI時代においては、正解を探す力よりも「何が正しいかを考える力」が問われるというメッセージは、就職活動や将来のキャリアに悩む学生にとっても、大きなヒントになるのではないかと思います。