学生時代
鹿児島の進学校を中退した
私は熊本県の生まれで、高校は実は鹿児島県の進学校に通っていたんです。そこを2年生のときに中退して、いわゆる大検(大学入学資格検定/現在の名称は高卒認定試験)を取りました。中卒や大学に行っていないことにコンプレックスを感じる方も知り合いにいましたが、私自身は全然そんなことないよ、という気持ちがずっと根底にあります。
デッサンに明け暮れた専門学校時代
18歳で名古屋市に引っ越して、専門学校で絵とデザインの勉強をしていました。2年間、デッサンをしたり歴史の勉強をしたりしていましたが、正直あまり真面目な生徒ではなかったです。バイトに明け暮れたりもしていました。とはいえ、そこで学んだことが今のデザインの仕事に生きているのは間違いないと思っています。
独立するまでの道のり
最初はお葬儀屋さんに就職した
一番最初に入ったのは、実はお葬儀屋さんでした。学校の先生の紹介で入った会社だったのですが、なんだか合わないなと感じて、半年ほどで辞めてしまいました。というわけで、新卒のカードは使えなかったのですが、そこからはずっとWeb業界にいます。もう20年近くになりますね。
辞めた会社のお客さんに声をかけられた
就職して何社か転々として、一生懸命勤めさせていただいてはいたのですが、辞めた会社のお客さんが、辞めた後に個人的に電話をかけてきてくれたんです。「久保さんにお願いしたい」と言っていただいて、個人でも仕事を請け負う中で次第に顧客が増え、そこから独立しました。そのつながりで、当時の名古屋の頃から15、6年ほど一緒にやらせていただいている企業さんもいます。どこかの会社に勤めることで得たノウハウやスキルは、大きな財産になっていると感じています。
虐待防止のアート展示「毒親アートフェス」
美術館の一室で年間30点ほどを展示
独立と同時期に始めた活動が、虐待防止のためのアート展示「毒親アートフェス」です。熊本市内の、市民が借りられる美術館の一室をお借りして、毎年30点前後の作品を展示しています。現物でいただいたり、データでいただいたりと集め方はさまざまですが、最終的にはA3ほどのサイズに印刷して、フレームなどに入れて飾るという形です。個人の活動なので、そこまで大きな予算をかけているわけではありませんが、以前は東京都でクラウドファンディングを使って開催したこともあります。
アートにすることで伝わりやすくなる
デザインの仕事をしているからこそ、こういった重いテーマもアートという形で見せることで、伝えやすくなるのではないかという意図があります。虐待というのは辛いことで、やってはいけないことだと、見た人の心に何か感じるものがあってほしい。そんな活動につながればという思いで、9年間ほど続けています。
地方の作家を応援したい
自宅をレンタルギャラリーとシェアアトリエに
もうひとつは、自宅の一部を改装したレンタルギャラリー「あとりえーる・ぎるど」の運営です。地方の作家さんを元気にしたいという思いから、貸し出しをしています。加えて、自宅の広いリビングをシェアアトリエとしても貸し出しています。ちょうどコワーキングスペースの絵描き版のようなイメージです。この間も絵描きさんが集まって、作業をしていたりしました。
虐待に悩む人の声を聞くこともある
こういった活動をしていると、家庭の悩みを聞くこともあります。以前、鉄の棒で殴られたことがあるという高校生の女の子がいました。虐待という言葉が、私が死ぬまでになくなることはないと思いますが、少しでも減らせる活動を何かできればと考えていて、これからも活動の幅を広げていきたいです。
これからのWeb業界とAI
AIで仕事のかたちが変わっていく
Web業界は今、大きく変わろうとしています。おそらくAIを使うことにより仕事の内容がかなり変わってきていて、特に東京では、AIに任せてデザインを自分でしないという方も出てきています。これからどうなっていくのか、今はいろいろな目線を巡らせながらアンテナを立てている段階で、正直、10年後にこの仕事があるかどうかもわかりません。
それでも人の役に立ちたい
それでも結局、仕事というのは誰かの役に立ってお金をいただくものだと思っています。今は熊本という地方に住んでいるからこそできる形で、パソコンのことで困っている方たちの役に立てればと考えて活動していますが、これからは困っている人を助けようと頑張っている人たちの手助けもできればいいなと思っています。
学生へのメッセージ
新卒のカードで失敗してもやり直せる
将来に不安な方もたくさんいると思います。でも、新卒というカードで失敗したとしても、いくらでもやり直しはできます。周りの大人が言うような「我慢しなさい」というような言葉も、人それぞれの考え方なので、そんなに真面目に受け取らなくてもいいと思います。
楽しみながら学んでほしい
不安ももちろんあると思いますが、大人になって社会人になると、やれることもぐんと広がります。それよりも、自分が今の仕事を続けていくことでどんなことができるようになるのか、どんな技術を学んでいけるのか、そんなことを少しずつ楽しんでもらえたらいいなと思っています。
編集後記
久保さんのお話を伺って、印象に残ったのは「誘われて、行く、という行動そのものがとても価値がある」という言葉でした。Webの仕事も虐待防止のアート活動も、最初から明確なビジョンがあって始めたわけではなく、誰かに誘われたことがきっかけだったといいます。それでも20年以上続けてこられたのは、根底にずっと「人の役に立ちたい」という軸があったからだと感じました。将来が見えないことに不安を感じやすい私たち学生にとって、まずは小さな一歩を楽しんでみることの大切さを教えていただいたインタビューでした。