インタビュー

「競合が少ない」はチャンスじゃない。占いのスタンダードをつくりに行く

「競合が少ない」はチャンスじゃない。占いのスタンダードをつくりに行く
PROFILE
株式会社GOGON 代表取締役
長島 悠人

18歳のインターンから見えた資本主義

兄がきっかけの学生団体

もともと、私がビジネスの世界に触れたきっかけは兄でした。兄が学生団体GEILというビジネスコンテストを運営する学生団体で代表をしていて、その姿を見ていたので、自分も学生団体に入りたいなと思っていました。それで慶應義塾大学に入ってすぐ、18歳のころに学生団体に入ったんです。兄はどちらかというと政策寄りの領域で、私はビジネスそのものに興味があったという違いはあります。いまはその兄と一緒に会社をやっているので、あのときの流れがそのまま続いている感覚ですね。

当時はまだ「インターン」という言葉がやっと出はじめたくらいの時期でした。兄が入社1年目だったベンチャー企業がインターンを探しているという話があって、そこから18歳でインターンを始めたのが最初の一歩です。

報酬より先に知った利益

インターン先は株式会社じげんという会社です。恥ずかしながら、自分はそこで初めて働くという体験をしました。最初、事業規模が大きくなればなるほど連動して報酬が増えると思っておりました。ただ給与は固定であり、「残った利益を再投資してより事業が伸びることができて、それを持って給与が上がり、そういったサイクルが見えるからこそ投資を人はするのだ」と甘い理解ではありますが、当時体感することができました。

インターンや社員として、時給や給与を上げたいというインセンティブで働くよりも、「自分で事業を作ってこの資本主義のエコシステムの当事者になる方」が、給与面は勿論、大きな事業や組織を作るプロセスを最大限楽しむことができて、それが自分の成長につながるなと感じました。

企業価値は利益の何年分

ちょうどそのころ、学生起業や事業売却、M&Aという言葉が少しずつ出てきた時期でもありました。私自身、大規模なM&Aを2回経験しています。最初はまったく意味がわからなかったのですが、企業価値って「年間の利益の何年分」という考え方で決まるんですよね。

たとえば3年間で利益が合計1億円くらい出る事業があるとして、1億円で買ったとする。自分たちがもっと伸ばして利益幅を2倍にできたら、3年ではなく1.5年で回収できる。将来の営業利益を何年分と見込んで評価される仕組みです。そういうインセンティブがあるからこそ、企業も経営者も頑張れる。世の中の構造はそうなっているんだと気づいて、だったら自分が代表として、株式を持っていくことに意味があるなと。

近代的な株式会社の原型が生まれて以降のこの400年間で、資本主義でここまで世の中が発展したのも、この構造があったからだと思っています。普通に働いて家族を持つ人生もよいと思うのですが、私は資本主義のなかで正しく生きようというところがスタートでした。

メディア事業で身についた競合を見る癖

固定費の低さが武器だった

自分がはじめに作った会社として最初にやっていたのは、メディアの事業体です。いまはだいぶ減ってきた領域ではあるものの、メディアの良さは、SEOやWebマーケティングによって訪れるユーザーさんの数がどんどん増えていくところ。しかも記事をつくるコストは変動費のような扱いになるので、固定費がものすごく低い。

だから、記事1本つくったときに返ってくる広告売上の期待値を、きっちり計算していました。1本あたり3万円くらいの売上期待値があるとわかれば、少しずつ回収を待つより、単月でたくさんつくってお金を使ったほうがいい。回収が早いのだから、いかに効率的に運用するかという話になります。そういう事業だったので、システムがかなり強い組織になりました。当時はAIなんてなかったので、いまのAIに近い形で文章構成をつくったり、メディアを運用したりする仕組みを自分たちで組んでいました。

競合よりよいものを安く

事業の基本って、競合よりよいものをつくって、競合よりも安く提供すればユーザーさんに求められる、ということだと思っています。SEOはとくに競合が大事になる世界なので、コストを掛けられないなかでどうすれば良いものが作れるのか、逆に競合がいない場所はどこなのかを、かなりこだわって考えていました。

他社が画像を添付していなければ私たちは画像を使う。他社が一次情報に言及していなければ私たちは言及する。ライターさんにも得意領域があるので、その領域が得意な方に書いていただく。そこまで細かくやっていましたね。KPIの管理も、本来はデイリーで見るようなものを、1時間あたりでどれくらいかけているかという単位で追っていました。

同年代と働けるのは学生のうち

これを一緒にやっていたのは、さきほどの学生団体のメンバーです。学生やインターンといった同年代のコミュニティは、本当に大事だと思っていて。いまはそういう方たちがよい会社に入っていたり、別の道に進んでいたりして、なかなか一緒には働けないんですよね。学生のうちだからこそ働けるという面があるので、当時のメンバーはすごく大事にしていました。

サークルでしかできない活動もあると思います。ただ、22歳からはずっとビジネスという世界に置かれる立場になるので、大学の4年間でビジネスとは何かに触れておくと、最初の意思決定をするときの情報量が変わってくるとも思うんです。

占いを選んだ理由

ユーザーに真摯になるべき領域だから

偉そうなことは言えないのですが、私は領域ありきで事業を選ぶのではなく、ユーザーにどのような課題があり、自分たちがどのような価値を提供できるかを重視しています。本質としては、会社という組織体をユーザーに真摯であり続けた結果として、どれだけ大きくできるかというプロセスだと思っています。極論ではありますが、サイバーエージェントも占いの領域を手がけていますし、大きな会社になればなるほど、いろいろな領域をやっていますから。

そのうえで、いま弊社(株式会社GOGON)が東京の占い館 雨照等占いに特化しているのには理由があります。メディアという事業体は、AIによってもっとよいものが届けられるなら存在しなくてもいい。一次情報を持っているところをどう編集するかはAIができるので、一次情報そのものがより大事になっていく。本当に求められるものしか残らないのがビジネスの世界です。数字が出るから、儲かるからという理由で事業をやっていても、人から求められていなければ意味がない。そこに気づいたのが大きかったです。

競合の少なさは悪い状態

占いやエンタメの領域って、そもそもチャレンジする人が少ないんです。競合がとても少ない。傍から見ると、競合が少ないのはビジネスチャンスに見えるかもしれません。ただ、競合がいたほうがサービス品質は上がるものですよね。

つまり、ユーザーさんに質の高いサービスを届けられている事業者がすごく少ないということ。こんなに品質を高められる領域なのに、そうなっていない。競合が少ないというのは、ユーザーさんにとってはむしろ悪い状態なんです。だからこそユーザーさんに立って価値を出したい、ユーザーファーストでありたいという観点があって、事業領域としてもよいと判断して選んでいます。

3つのファーストを満たす

弊社が大前提の軸にしているのは、エンタメの事業領域に特化することです。そのうえで大事にしているのが「ユーザーファースト」「タレントファースト」「ビジネスファースト」という3つ。ユーザーはそのままユーザーさんで、タレントは鑑定士の先生方、ビジネスは私たち運営を指しています。

鑑定士とユーザーさんをマッチングさせれば事業として儲かるからいいでしょう、というのは健全な状態ではないと思うんです。ユーザーさんのことも、キャストさんやタレントさんのことも、そして自分たちのビジネスのことも考えないといけない。この3つを同時に満たしているエンタメ事業者は、特に占いの領域では少ないので、そこを満たす会社をつくりたいと思っています。美容も同じで、タレントは美容師さんやネイリストさんですね。タレントさんファーストの会社もユーザーさんファーストの会社もいらっしゃるのですが、3つそろっているかというと、まだまだかなと。

システムと事業は切り離せない

30分は30分、感動させる

わかりやすい例で言うと、ホットペッパーなどに代表される美容関連の予約システムは、実質15分くらいで終わる施術にバッファを見込んで30分の枠にしたり、前後の時間で調整したりできるんですよね。

対面の占いはそこが違います。30分で予約をいただいたら、その30分は本当に感動していただかないといけない。「遅刻したから20分ですね」とは言えないんです。ユーザーさんからすれば、13時半に来たのだから13時半から30分でしょうという話ですよね。5分前に来てください、10分前に来てください、遅れたから短くなります、というのはユーザーさんファーストではないですよね。

ただ、バッファが取れないと、13時半から14時の予約が入った時点で、次の方は14時から入れられない。だから多くの会社は予約システムを持たずに、電話やメールで「14時10分からお願いします」といった調整をしています。

予約も個人情報も自社開発

占いは個人情報を扱う領域です。弊社は26年8月中旬にPマーク(プライバシーマーク)の審査を控えてます。個人情報をきちんと運用している会社は実のところ多くなく、業界全体として、より透明性を高めていく余地があると考えてます。だから占いの領域が不透明に見えてしまうところもあると思っています。

そこで、予約から来店処理、鑑定の開始時間や分数の記録、口コミが入ったかどうかのチェックまで、すべて自社システムです。フルスクラッチで作りました。パスワード形式は怖いので、メールアドレスに認証コードを送る形式にしています。ここまでやる会社は、対面占いの店舗に限らずほとんどないかなと。

解像度の低い依頼はしない

マーケティングが得意な会社も、システムが得意な会社もあります。ただ、タレントさん向けの部分が得意ではなかったり、ユーザー対応が得意ではなかったりする。とくにリアル店舗とシステムの両軸を持った会社は本当に少ないんですよね。ユーザーさんファーストであること、鑑定士ファーストであることを考えたら、フルスクラッチのシステムは絶対になきゃいけないでしょうと。

社内の話をすると、代表がシステムは大事だからと言って、得意な人間に「これ大事だから頑張ってほしい」とお願いするだけでは、基本的にうまくいかないと思っています。タレントさんのこともマーケティングのことも全部考えたうえで、理想的な形は何なのかを人間が考えないといけない。私は中途半端な状態で人に仕事をお渡しすることはしたくないんです。解像度が高くない状態で仕事をお願いしても、うまくいくわけがないと思っていますから。だからこそオペレーションとシステムが大事になります。決まったシステムがあると人はとても動きやすくなるので、それを全部理解している人間がつくりきらないといけない。

AIに置き換わるもの、残るもの

占いをはじめエンタメ業界は一次産業に近い

占いは属人的な専門サービスに分岐しており、産業としては一次産業にとても近いと思っているんです。漁業のようなイメージで、マグロの一本釣りをする人もいれば、トロール船で獲る人もいる。サンマを獲る人もイワシを獲る人もいる。ものすごく細分化された世界なんですよね。

だからAIの台頭で厳しくなった部分もあります。たとえばチャットの占いのなかでも、相談内容を送って30分後に鑑定書が返ってくる形式は、その人である必要があるのかと問われてしまう。AIでいいよね、となりやすいところです。

AIで満ちる需要は追わない

一方で、対面の占いはニーズが違います。渋谷で遊んでいて時間が空いたから、最近気になっている人のことを友達と一緒に見てもらおうか、という使い方ですよね。これはAIと領域が被っているのかというと、そうではないと思うんです。

私が大事にしているのは、時代の流れに逆らわないこと、そしてビジネスとしてうまくいくことよりも、ユーザーさんが求めていることをやるということ。AIの回答でユーザーさんが満足できているなら、そこをリプレースしに行く必要はない。むしろAIで満たされている部分にどうアドオンして、さらに価値を届けるかだと思っています。

鑑定書だけつくる仕事への違和感

だから、鑑定書はAIでつくってマーケティングだけやればうまくいくという考え方は、正直、受け入れられないんですよね。昔の自分を見ているようでもあるのですが、時代の流れにもユーザーさんにも逆行していると思っています。

恋愛相談を例に挙げると、しばらく会ってない相手と付き合いたいという方に、AIで作った鑑定書でいけそうに見せて終わり。そのうえで次のソリューションとして、稼ぎ方を教えるような商材を売る。それは何も考えていないなと感じます。もっとユーザーさんに向き合って、真摯でないといけない。逆に言えば、ユーザーさんに真摯な事業者だけが残る領域になってほしいと本気で思っています。

弊社はチャットやネットでの鑑定は、いまはまったく取っていません。近々の不安、たとえば夕方に連絡したのに返信が来ない、といった悩みは、テキストで時間をかけて答えるものではなくて、その場で電話などフランクに相談したい類のものだと思うんです。本当にユーザーさんファーストで考えると、まずは信頼関係を長い時間をかけてつくっていく必要がある。そこを飛ばして結論だけ見せるのは違うなと。

スタンダードでありたい

とはいえ、一消費者としてよい事業者を見分けるのは、たしかに難しいと思います。だからこそ弊社がスタンダードでありたいというのは、すごく思っていますね。占いは個人情報を扱う領域なので、本来ならPマークも当たり前であってよいはずです。お金や表面だけを見て、とりあえず占いは儲かるのではないかという事業者が多いなかで、そこを変えたいなと。

学生に伝えたい、競合を見る力と熱量

Webは競合が見やすい

これはあくまで私の持論ですが、ひとつの仕事にどこまでこだわるか、どこまで配慮するかにチャレンジすればするほど、力は強まっていくと思っています。私よりずっと優秀な方もたくさんいらっしゃるので、私も全然できているわけではないのですけれど。

たとえば「このフォームをつくってください」という仕事を受けたときに、他社をどれだけ見るか。見れば見るほど、他社のよいところが出てきます。私がWebをものすごく好きなのは、競合がめちゃめちゃ見やすいからなんですよね。リアル店舗だと、そんなにたくさんは見に行けませんから。

フォームひとつでも差は出ます。全項目を入れないと確認ボタンが押せない設計が本来の形だとして、どこが埋まっていないかチェックしやすいほうがよいなら、最後の同意チェックを入れた時点で押せるようにする、という考え方もある。利用規約や個人情報の取り扱いのチェックボックスが用意されていない会社を見ると、この個人情報はAIに入れられたり、社内で適当に共有されたりするのだろうなと想像がついてしまう。運営方針は、細部ひとつでわかってしまうものだと思っています。

熱量が仕事の質を決める

具体的な話をすると、いま渋谷で「雨照 占い館アメテラス 渋谷店」を運営してるんですが、渋谷の占いページに店舗までの行き方を載せている会社はとても少ないんです。普通にSEOを考えたら、あったほうがよいですよね。しかも私たちの場合、JR渋谷駅からの経路と、半蔵門線や京王井の頭線の渋谷駅からの経路は違う。バスもある。そこまでどれだけやるか、という話です。

検索して1位の会社を見ると、ハチ公出口からの案内だけ、というところもあります。それだけを競合として見ていたら「私たちもハチ公出口からを書かなきゃ」で終わってしまう。ただ、他業種まで見に行くと、電車・バス・車で分けていて、しかも地下鉄渋谷駅とJR渋谷駅も分けている会社がある。それを見て「確かにいいよね」と入れ込めるかどうかは、おそらく熱量で決まっているんです。一つひとつの仕事に熱量を持てると、パフォーマンスは圧倒的に変わると思っています。

事前準備で差がつく

就職についても同じで、私自身はきちんと就職活動をしたわけではないのですが、差が出るのはどれだけ事前に準備したか、どれだけ詳しくなったかだと思っています。面接担当の方の名前がわかったら、その方のことを全部調べる。代表が面接に出るなら、経歴やインタビューを読み込んでおく。「社長のこの部分を読んだのですが、実は自分も同じところがあって」と言えたら、その瞬間で決まりますよね。AIで調べられる時代だからこそ、そこをやりきるのは強みになると思います。

規律を守れるかを見ている

規律が大事だと思うのは、ルールを全うする形式にしておかないと、ルールの逸脱を許すことになるからです。たとえば運営の現場で、お客さんの前ではこうしないと決めていなければ、サンダルのまま出てしまうこともある。数値も同じで、KPIを決めたのに守らなくてよいとなったら意味がない。スタートアップやベンチャーだと、ここを徹底できている会社は意外と多くないと思っています。規模が小さいからこそ、他社ができていないことを高いレベルでやるために、規律はきっちり守らないといけないなと。

だから採用でも、スキルセットより、規律を守れる方かどうか、モチベーションがある方かどうかを見ています。弊社の「ファミリー」にマッチするかどうか、ですね。見極めるには接触回数が大事なので、回数を多く設けて、何を目指してどうなりたくて、どこが好きなのかを聞くようにしています。インターンやアルバイトという過程があると、そこが見えるのでマッチしやすいとも思います。アンマッチになった瞬間が一番不幸だと思うので、どんなに優秀な方でも、合うか合わないかはその方のためにもすごく見るようにしています。

これから目指す場所

対面占いを全国へ

今の対面占いには、例えば鹿児島にいらっしゃる先生は鹿児島のお客さんしか鑑定できないという課題があります。狭いマーケットに閉じこもっていると、ユーザーさんにもサービス提供者側にもメリットが少ないんですよね。電話やオンラインの占いは日本全国の方がターゲットになるので、先生方も頑張ろうとなるし、比較されるからこそよいものが届く。

対面の鑑定をもっと全国に届けていけるか。ここはこの2〜3年できっちりチャレンジしたい部分です。基本的には自社でつくったシステムで実現しようと考えていて、まだまとまってはいないものの、この1年で形にしていきます。業界を絶対に変えたいので。

一番強いのはブランド

一番大事なのはブランドだと思っています。指名検索の回数や、指名の数ですね。マーケティングで表面を取り繕っても、中身が伴っていなければ淘汰されていく。ベンチャーとしてこれから伸びるために、いま構築しないといけないのはブランドでしょうというところで、グループ会社のセパ占いスクール等の発信はYouTubeなどを通してかなり強くしています。

とはいえ、占い師の先生方をユーザーさんにどう認知していただくかは、ものすごい課題です。100点満点で何点かと言われたら、点数をつけるのもはばかられるくらい足りていません。カメラの手ぶれは普通に抑えられるのに抑えられなかった、先生方のキャスティングも含めてもっとおもしろいコンテンツがつくれる。改善要素はまだまだあると思っています。ここが大変だからこそ、向き合っている事業者がいないのも事実なのですけれど。

大学生向けでもかまわない

もしいま大学生に戻って、占いのことを何も知らない状態だったら何をするか。よく「大学生向けのサービスではなく、もっと広い世の中に向けた仕事をしないと継続できない」と言われますよね。私も昔はそう言っていたのですが、いまは大学生が大学生に向けたサービスをつくってもよいと思っているんです。

まずは人に求められて、売上や利益が上がるという体験をすることが大事だと思うので。その成功体験から「次はもっとよくしよう」と人はどんどん伸びていく。だから自分の身近にある課題でいい。売上は少しでもいいので、ユーザーさんが求めて「ありがとう」と言ってくれるサービスなら何でもよいかなと思っています。

時間が一番大事な概念

最後に学生の方へ伝えたいのは、時間という概念です。私の親は公務員で、ビジネスでお金をいただくということを、大学に入るまでまったく知りませんでした。とりあえず大学に入って、とりあえずよい会社に入るのが良いよね、と思っていて。その考え自体も正しいと思うのですが、時間という概念を本当に持っていなかったんですよね。

18歳の時にインターンを経験して「こういう世界があるんだ」と知ると、次の仕事や職を探すときの選択肢が広がる。若いうちに経験をすればするほど、次の選択肢の幅が広がるし、楽しめると思うんです。「高校生をしなきゃいけないから」「大学生をしなきゃいけないから」で語ってしまうと、経験に重み付けができていない、自分で選択した経験になっていない状態になりがちかなと。

だから、自分の意思で体験してみる、自分で決定してみる。そのときに幅をなるべく広げられるほうがよいかなと。大人の方についていくのもよいと思います。楽しい経験なら、ぶっちゃけ何でもしたほうがよいと思っていて。楽しくない経験は、自分の意思決定でやっていないことが多いですから。

私は旅行が好きなのですが、事前にめちゃめちゃ調べて行った旅と、行き当たりばったりの旅を比べると、自分で調べて選んだほうが「次はこうしよう」につながるんですよね。例えば北海道旅行で行けなかったお寿司屋さんも、このサイト経由なら安くなるとわかったから次回は行こう、という具合に。この意思から生まれる経験の数を、若いうちにどれだけ積めるか。人生経験の厚みで本当に変わってくると思うので、時間が一番大事な概念だと思っています。

編集後記

「競合が少ない領域はチャンス」と、私はどこかで単純にそう覚えていました。長島さんのお話で一番刺さったのは、競合の少なさをユーザーにとって不幸な状態だと言い切るところです。自分でも小さな事業をかじっている身として、正直、数字が出そうな場所を探す発想から抜けられていませんでした。渋谷駅の出口ごとに行き方を書き分ける、フォームのボタンの挙動にまでこだわる。そうした細かさを「熱量で決まる」と言い切れる方の言葉には、重みがあります。時間が一番大事な概念という一言も、残りの大学生活の使い方を考え直すきっかけになりました。まずは他社を見る癖から始めてみます。