インタビュー

自己破産から再起。「場所の相談役」として見つけた、自分らしい生き方

自己破産から再起。「場所の相談役」として見つけた、自分らしい生き方
PROFILE
リノスペ株式会社 代表取締役
竹越 達哉

リノベーションから始まった「場所づくり」

家ではなく「どんな時間を過ごしたいか」を考える

私はこれまで、住宅や不動産、リノベーションに関わる仕事をしてきました。

家を選ぶとき、駅からの距離や価格、広さといった条件はもちろん大切です。ただ、それだけではなく、「そこでどんな暮らしをしたいのか」も大切だと考えてきました。

ヴィンテージな雰囲気の部屋に住みたい。カフェのような空間で暮らしたい。

そんな一人ひとりの「こうしたい」を聞きながら、その人らしい場所をつくる。

振り返ってみると、今の仕事につながる原点は、すでにそこにあったのかもしれません。

「みんなが集まる場所」にも個性があっていい

住宅だけではなく、人が集まる場所にも、もっと個性があっていい。

「こんな場所を探していた」
「ここなら、やってみたかったことができそう」

そう思ってもらえる、使いやすくて、ちょっと気分が上がる場所をつくりたい。

その思いが、現在のレンタルキッチン・レンタルスペース事業につながっていきました。

レンタルキッチンをフランチャイズで広げる理由

一人で増やすのではなく、一緒につくる

現在、弊社はレンタルキッチン「リノスペ®」を運営し、フランチャイズ本部としても事業を展開しています。

店舗を増やすのであれば、すべて自社資金で直営店を出していく方法もあります。

一方で、店舗展開のスピードには限界があります。

そこで私たちは、レンタルキッチンという事業に可能性を感じてくれるオーナーさんたちと、一緒に場所をつくっていくフランチャイズという方法を選びました。

私がこの業界に参画した2019年当時と比べても、レンタルスペースという選択肢は大きく広がっています。

だからこそ、ただ店舗数を増やすことではなく、「そこで何ができるのか」を大切にしたいと思っています。

「やってみたい」を「やってよかった」へ

私たちが掲げているのは、「『やってみたい』を『やってよかった』へ。」という考え方です。

何かを始めたいと思っても、最初から店舗を借りたり、大きなお金をかけたりできる人ばかりではありません。

料理教室をやってみたい、友人を集めてイベントを開いてみたい、自分の商品を販売してみたい、撮影をしてSNSで発信してみたい。

そんな小さな「やってみたい」にも、最初の一歩を踏み出せる場所が必要です。

大きな起業だけが挑戦ではありません。

「一度やってみる」、その経験から次の可能性が生まれることがあります。

リノスペが、その最初の一歩を踏み出せる場所になればいい。

そして帰るときに、「やってよかった」と思ってもらえる場所をつくりたい。それが今の私たちの目指している姿です。

倒産と自己破産から学んだこと

15年間続けた飲食店経営

私自身、かつてラーメン店やバーなどの飲食店を15年間経営していました。

その事業は最終的に倒産し、連帯保証人だった私は自己破産も経験しました。

仕事だけではなく、それまで自分が積み上げてきたものを失う経験でした。

当時を振り返って強く感じるのは、「自分は何のためにこれをやっているのか」という目的を、きちんと持つことの大切さです。

目の前の仕事を続けることだけに一生懸命になると、いつの間にか「何のためにやっているのか」を見失ってしまうことがあります。

私自身もそうでした。

その経験があったからこそ、その後は「自分は何をやりたいのか」を以前より大切にするようになりました。

「場所を探す側」から「場所をつくる側」へ

倒産や自己破産を経験した後、仕事を続ける中で、自分の役割も少しずつ変わっていきました。

以前は、自分自身が何かをするための「場所を探す側」でした。

今は、誰かの「やってみたい」を実現するための「場所をつくる側」です。

料理をやってみたい人、イベントを開きたい人、仲間と集まりたい人、新しいビジネスを試してみたい人。

そうした人たちが、一歩踏み出すための場所を提供する。

振り返ると、これまで経験してきた不動産、リノベーション、飲食店経営、そして失敗まで、すべてが今の仕事につながっています。

経営者として大切にしている「時間」と「目的」

時間を何に使うかを決める

私は若い頃から、自分の時間を何に使うのかを大切にしてきました。

もちろん人との付き合いも大事です。

ただ、何となく時間を使うのではなく、自分が成長するための勉強や、お客さまと会う時間、大切な人との時間など、「何のための時間なのか」を意識するようにしています。

時間は誰にとっても有限です。だからこそ、何をするかと同じくらい、「何をしないか」を決めることも大切だと思っています。

お金より先に「何のために」を考える

経営をしていると、当然お金は重要です。

ただ、「お金を稼ぎたい」だけでは、長く続けることは難しいと私は感じています。

なぜお金を稼ぎたいのか、その先で何をしたいのか、誰にどんな価値を届けたいのか。

迷ったときほど、そこに戻る。

倒産も自己破産も経験したからこそ、私は「目的を見失わないこと」を大切にしています。

50代になって、経営がさらに面白くなった

私は今55歳です。50歳を過ぎてから、経営が以前より面白くなったと感じています。

若い頃の経験も、成功も失敗も、人との出会いも、すべてが少しずつつながってきたからです。

不動産をやってきたこと、リノベーションに関わってきたこと、飲食店を経営したこと、会社を倒産させたこと、自己破産したこと。そして、もう一度経営者として挑戦したこと。

当時はバラバラに見えていた経験が、50代になって掛け算になり始めました。

だから私は、50代は面白いと思っています。

年齢を重ねることは、できないことが増えるだけではありません。

これまで積み上げてきた経験を使って、今までとは違う挑戦ができる年代でもあります。

「場所の相談役」として生きていく

無人だからこそ、経営者の顔を見せる

レンタルキッチンは、基本的に無人で運営しています。

私自身が店舗に立って、毎回ゲストを迎えるわけではありません。

だからこそ、「誰が運営しているのか分からない場所」にはしたくないと思っています。

何か困ったことがあったとき、設備について聞きたいとき、清掃について伝えたいことがあるときにきちんと声を届けられる相手がいる。

無人のサービスだからこそ、運営している人間の顔が見えることは、安心につながると考えています。

そのため、私は自分自身が表に出て、「リノスペを運営しているのは竹越です」と発信し続けています。

「場所に困ったら竹越さん」と言われたい

保険なら保険の専門家、税金なら税理士、法律なら弁護士。

では、「場所に困ったとき」は誰に相談するのか。私は、そこに自分の役割があると思いました。

だから「場所の相談役」として、場所に関することなら竹越に聞いてみよう、と思ってもらえる存在を目指してきました。

レンタルキッチンだけに限りません。

何かを始めたい、人を集めたい、料理をしたい、撮影したい、イベントを開催したい。

そんな「やってみたい」が生まれたときに、「それなら、こんな場所がありますよ」と言える人でありたい。

場所そのものを貸すことが目的ではありません。場所を通じて、誰かの一歩を後押しすること。

倒産や自己破産も含めて、これまで経験してきたことが、ようやく一本につながってきました。

これからも「場所の相談役」として、「やってみたい」が叶う場所をつくり、「やってよかった」と思える人を増やしていく。

それが、今の私が経営を続ける理由です。

編集後記

竹越さんのお話から印象に残ったのは、成功だけではなく、倒産や自己破産という経験も含めて現在の仕事につなげていることでした。

特に「目的を見失わない」という言葉は、これから社会に出る学生にとっても大切な視点だと感じます。

若いうちにすべての答えを見つける必要はないのかもしれません。

さまざまな経験を重ねながら、自分は何をしたいのか、誰にどんな価値を届けたいのかを考え続ける。

その積み重ねが、竹越さんの言う「50代は面白い」という生き方につながっているのだと感じました。