大手にはない専門性で、質の高いマッチングを実現する
私が会社を設立したのは2002年10月です。私は、約12年半にわたり外資系生命保険会社で営業の仕事をしていました。生命保険の営業は、決して簡単な仕事ではありません。商品をご提案する以前に、まずは見込みとなるお客様と出会う必要があります。特に法人営業では、経営者という限られた層にどう接点をつくるかが大きな課題でした。そこで私が注力したのが、オーナー経営者です。どうすれば経営者と出会えるのか。毎日考え続ける中で、経営者が集まる場に足を運ぶこと、そして経営者と最も近い関係を築いている方から紹介いただくことに取り組みました。そこで出会ったのが、税理士や公認会計士の先生方でした。
経営者に最も近い専門家との出会い
「先生」と呼ばれる存在だからこそ築ける信頼
経営者にとって、税理士や公認会計士は単なる外部の専門家ではありません。会社のお金や経営に深く関わり、ときには経営判断について相談される存在です。私はそこに大きな可能性を感じ、会計事務所の先生方から経営者をご紹介いただく形で、生命保険営業を行っていました。その頃から数えると、税理士や公認会計士の方々とのご縁は30年以上続いています。
成長する企業を支援したいという思いから独立へ
「守る経営」から「成長させる経営」へ
2000年前後になると、ベンチャー企業でも上場を目指す会社が増えていきました。当時のお客様である経営者の中にも、「会社を大きくして上場したい」という方が増えてきたんです。そこで初めて、私自身も上場について学ぶようになりました。すると、それまで携わっていた生命保険とは、経営に対する考え方が大きく異なることに気づきました。生命保険は、企業を守るための仕組みです。万が一に備えたり、会社や社員を守ったりする上で非常に重要な役割があります。一方で、上場を目指す企業では、守りだけではなく、積極的に利益を生み出し、会社を成長させていく視点が求められます。私はそこで、「成長する企業を支援する仕事がしたい」と考えるようになりました。そして独立し、設立から2年後の2004年に、成長企業向けの人材紹介事業をスタートしました。
成長企業が抱えていた最大の課題は、採用だった
ブランド力のない企業ほど、人材採用に苦戦していた
人材紹介事業を始めた背景には、多くの経営者との会話がありました。その中で特に強く感じた課題が「採用」です。成長意欲のある企業であっても、大手企業のような知名度やブランド力がない会社は、優秀な人材を採用することに苦労していました。特に課題になったのが管理部門です。営業出身の経営者であれば、営業人材の採用には強みがあります。しかし、会社が成長し、上場を目指す段階になると、経理、財務、人事、総務、経営企画など、管理部門の強化が必要になります。
上場には、組織としての管理体制が必要になる
経理や財務を「個人の経験」から「組織の仕組み」へ
多くの中小企業では、創業期から成長途中の段階では、管理部門を少人数で運営しています。経理担当者が人事や総務も兼任していたり、管理部長が幅広い業務を担っていたりするケースも珍しくありません。しかし、上場を目指すとなると状況は変わります。内部統制の観点から、経理と財務、人事と総務など、それぞれの役割を明確に分ける必要があります。また、社長や役員と会社のお金を管理する部門を分離し、透明性のある組織体制をつくることも求められます。そのタイミングで、管理部門の専門人材を採用したいというニーズが生まれます。そこに、人材紹介会社として支援できる価値があると感じました。
「誰でも扱える職種」だからこそ、専門性が必要になる
経理領域に特化する理由
人材紹介業界では、経理職は比較的扱いやすい領域に見られることがあります。どの会社にも経理部門があり、求人ニーズが存在するからです。そのため、多くの人材紹介会社が扱う分野でもあります。しかし、20年以上この仕事に携わって感じるのは、同じ経理という仕事でも、企業によって求められる役割は大きく異なるということです。上場企業なのか、IPO準備企業なのか、業界は何か、会社規模はどれくらいなのか。同じ「経理」という職種でも、必要な経験やスキルは変わります。だからこそ、本当に企業と求職者の双方に価値を提供するには、その領域への深い理解と専門性が必要だと考えています。
応募数ではなく、企業と人材の「相性」を追求する
大手にはない専門性で、質の高いマッチングを実現する
人材紹介は、求人企業と求職者をつなぐビジネスです。求人企業から求める人材像を伺い、その条件に合う方を探してご紹介する。仕組みだけを見ると、どの人材紹介会社でも同じように見えるかもしれません。しかし、私たちが大切にしているのは、単純に応募数を増やすことではありません。大手人材紹介会社には、多くの求職者を集められる強みがあります。知名度や広告力によって、多くの候補者を企業へ紹介できることは大きな価値です。一方で、専門領域に特化しているからこそ提供できる価値もあります。弊社では、企業が求めているポジションについて、どのような役割を担うのか、どのような経験が必要なのかを細かく確認した上で、人材を探しています。応募数だけを見ると、大手企業には及ばないかもしれません。ただ、本当にその企業で活躍できる人材との出会いをつくるという意味では、専門性を持った支援ができることが弊社の強みだと考えています。
転職をゴールにしないキャリア支援
入社後に活躍できるキャリアを一緒につくる
求職者の方へのサポートで、私たちが最も大切にしていることは、転職そのものをゴールにしないことです。人材紹介というビジネスでは、求職者の方が企業へ入社することで一つの成果になります。しかし、本当に重要なのは、その方が入社後に活躍できるかどうかです。企業にとって大切なのは、採用した人材が会社の成長に貢献してくれること。求職者にとって大切なのは、その会社で自身のキャリアを築き、将来的な価値を高めていけることです。そう考えると、マッチングはゴールではありません。あくまで、その後の成長につながるスタート地点だと思っています。これは、人材紹介に限った話ではないと考えています。どんなビジネスでも、商品やサービスを提供して終わりではありません。購入した後、利用した後に「良かった」と感じていただけるからこそ、継続的な関係につながります。以前携わっていた生命保険営業でも同じでした。契約をいただくことだけを目的にするのではなく、契約後にどれだけお客様に寄り添えるか。その姿勢は、人材紹介事業においても変わっていません。
求人票を並べるのではなく、未来のキャリアを考える
求職者の方に対しても、「たくさんの求人を見て、好きなものを選んでください」という支援はしていません。もちろん、知名度のある企業や憧れの会社で働きたいという気持ちは自然なものです。ただ、重要なのは、その会社に入ること自体ではなく、そこでどんな経験を積み、将来どのようなキャリアにつながるかです。目の前の転職だけではなく、その先の人生まで見据えて、一緒にキャリアを考える。それが私たちが提供したい価値です。
会計業界への特化が、現在の強みになった
リーマンショックが、専門領域を明確にした
2002年に創業し、2004年から人材紹介事業を始めました。その後、2008年にリーマンショックが起こります。当時は、多くの企業が採用活動を停止しました。景気が急激に悪化し、一般企業の求人はほとんどなくなりました。弊社も大きな影響を受け、2007年頃には10名ほどいた社員が、リーマンショック後には3名まで減りました。危機を感じた段階で、銀座に構えていた約60坪のオフィスから、浜松町の約20坪のオフィスへ移転しました。会社として非常に厳しい時期でしたが、その経験が現在の方向性を明確にするきっかけにもなりました。そこで注力したのが、会計事務所業界です。
不況でも必要とされる会計の専門家
一般企業では採用を止める動きが広がりました。一方で、会計事務所では人材ニーズが続いていました。景気が悪化した時こそ、企業は税理士や公認会計士に相談します。経営改善や事業再生など、会計の専門家が必要とされる場面は増えていました。もともと生命保険営業時代から、税理士や公認会計士の先生方とのつながりがあったため、この領域へ集中する判断は自然な流れでした。そこから、資格を持つ方や資格取得を目指している方々を会計事務所業界へ紹介することに力を入れるようになりました。一般企業の求人が減少したからこそ、一つの領域に深く入り込み、専門性を磨くことができた。振り返ると、大きな危機が現在の強みをつくる転機になったと思います。
コロナ禍で学んだ、組織づくりの重要性
景気よりも、組織のつながりが課題だった
コロナ禍では、リーマンショックとは異なる難しさがありました。リーマンショックの時は求人そのものが大きく減少しましたが、コロナ禍では金融市場が大きく傷んでいたわけではなく、採用ニーズは一定程度ありました。一方で課題になったのは、組織としての一体感やコミュニケーションです。リモートワークが急速に広がる中で、部署間の連携や情報共有をどう維持するか。社員同士のつながりをどう保つか。そこには多くの試行錯誤がありました。ただ、実はコロナ以前から在宅勤務については準備を進めていました。弊社では女性社員も多く、家庭と仕事を両立しながら働ける環境づくりは以前から重要なテーマでした。
週に一度在宅勤務を試してみたり、オンラインでのコミュニケーション方法を整えたりしていたため、コロナ禍でも比較的スムーズに対応できた部分はあったと思います。
上場、その先へ
専門性を磨きながら、より多くの人に価値を届ける
これまで弊社は、会計・財務・税務、そして法務を含む管理部門の人材に特化して事業を展開してきました。今後さらに目指していきたいのは、ブランド力と認知度を高めることです。「管理部門のキャリアなら相談したい」と、多くの企業や求職者の方に思っていただける存在になりたいと考えています。今回、東京プロマーケットという市場で上場企業となりました。しかし、それで終わりではありません。さらにその先の市場にも挑戦し、より多くの方に価値を届けられる会社へ成長していきたいと思っています。
生産性を高め、社員も豊かになる会社へ
会社を成長させる上で、単純に人数を増やすことだけを目標にはしていません。DX化やAI活用によって業務効率を高め、一人ひとりの生産性を向上させることが重要だと考えています。生産性が上がれば、お客様へ提供できる価値も高まります。そして、その成果を社員の待遇向上にもつなげていきたい。お客様に貢献しながら、働く社員も豊かになる。そんな会社をつくっていきたいと考えています。
失敗を失敗だと思わないでほしい
第一志望ではない場所にも、必ず意味がある
学生の皆さんに伝えたいことがあります。就職活動では、第一志望の会社に入れる人は決して多くありません。多くの人が、最初に思い描いていた会社とは違う場所から社会人生活をスタートすると思います。しかし、それは決して失敗ではありません。大切なのは、縁があって入った場所で何を学び、どんな経験を積むかです。その環境で一生懸命取り組むことで、次の可能性が見えてくることがあります。転職も同じです。今は、一つの会社に一生勤め続けることだけが正解ではありません。自分に合う環境を探すために挑戦することも、一つの選択肢です。
人との縁が、キャリアをつくっていく
私自身、これまでのキャリアを振り返ると、多くの人との縁に支えられてきました。学生時代も、社会人になってからも、一人だけで何かを成し遂げることはできません。同じ仕事をするのであれば、信頼できる人と一緒に取り組みたいと思うものです。だからこそ、人とのつながりを大切にしてほしいと思います。周囲から応援される人になること。それが長いキャリアを築いていく上で、大きな財産になるのではないでしょうか。
編集後記
早稲田大学の 3年で小さな事業をやっている身として、「マッチングをゴールにしない」という言葉が一番刺さりました。売った瞬間に関係が終わる仕事は長続きしないという指摘は、自分の事業にもそのまま当てはまります。リーマンショックで社員が 10人から 3人になっても、会計事務所業界という一点に振り切って伸ばしていった判断力にも驚かされました。そして何より印象的だったのが、スキー場に住み込んでいた学生時代のお話です。意味のあることばかり探してしまう自分にとって、真剣に打ち込んだ経験そのものが後の力になると教わった気がしています。