インタビュー

マーケも起業も、本質は「相手のために何ができるか」を問い続けること

マーケも起業も、本質は「相手のために何ができるか」を問い続けること
PROFILE
株式会社b-growth 代表取締役 CEO
菱沼 匡

起業の背景|マーケター人材紹介の情報の非対称性という課題

12年間マーケティング一筋だった

私のキャリアを端的に表現すると「事業会社」「新規事業開発」そして「マーケティング」の3つのキーワードが出てきます。
中でもマーケティングは新卒で所属していた会社から12年ほど経験してきており、最終的にはマーケティング室長を務めさせていただきました。マーケター人生の中で役職が上がり、求められる役割が変わるにつれて、足りないリソースを正社員採用や外注活用で補完する必要に迫られる場面も増えていきました。

仲介にいる人の解像度が足りなかった

当時は人を採用しようとしても自分の人脈のみでは限界があり、様々な人材紹介会社に相談してチーム構築をしていく必要がありました。しかし、担当してくださる方の多くはマーケティングの実務経験が浅く、リード獲得やCRMといった専門用語を知っていても、実務経験がないケースも多く、こちらの求めている人材の解像度が低いまま紹介されるケースが多い印象でした。

そのため、提案いただく人材もマッチ度の低い方か、数十名を一気に紹介されて一人一人確認するのに時間がかかったりと、サービスを受ける側としての体験の悪さを感じていました。

周囲のマーケター仲間と話している中でも同じような課題感を持っている方が多く、マーケター経験のある自分がマーケター特化の人材紹介サービスを立ち上げ、この構造的な問題を解決していこうと考えたのが創業の経緯です。

事業内容|マーケター紹介はあくまで手段。本質的には事業グロースができるかどうか

BtoB事業グロースにつながるようなマーケティング支援

当社の事業は業務委託人材の紹介がメインですが、事業目的はお客様のBtoB事業グロースの実現に繋がるような精度の高いマッチングです。
中でもニーズが高いのは新規リード獲得に関する取り組みです。多くのBtoB企業が、新規リード獲得施策を重視している一方で、実績と専門スキルのあるマーケターの採用に苦戦しています。
広告を打ったり、ウェビナーやイベントを企画したり、いろいろなチャネルでリード獲得施策を実行する中での足りないピースを、弊社が保有しているマーケターネットワークを活用して埋めていただくご支援ケースが多いです。
ただご紹介するだけでなく、事前のヒアリングの精度にも注力しており、クライアント様の事業フェーズやマーケチームの現状に合わせて業務委託、正社員のご紹介をしています。

一方で、正社員採用のご相談をいただいた際、企業の状況や課題に応じて業務委託をご提案することがあります。戦略策定のみ、あるいは広告運用など一部のリソースの補填といった一部業務切り出しの場合は、正社員を採用して社保などを含めた人件費をかけるよりも固定費が抑えられた状態で欲しい機能が手に入り、事業利益の最大化につながる場合もあるためです。

このような事業グロースを見据えた目線で、ディスカッションできる点も高く評価いただいています。今後も単なる人材の紹介にとどまらず、企業の事業成長そのものに伴走する支援を目指しています。

1,200名以上のコミュニティを軸にした事業展開

弊社では「BtoBマーケティング研究会」というマーケター向けのコミュニティを運営しており、2026年8月現在で1,200名以上が参加しています。BtoB事業会社の役職者に限定したコミュニティとして、事業会社のマーケティング・営業企画の役職者、もしくは経営層の方限定という参加条件を設けています。弊社のような職種と役職に限定されたコミュニティは珍しく、今は弊社が国内最大級の規模だと思います。

この「BtoBマーケティング研究会」で構築した人的ネットワークにより、新規のお仕事のご相談をはじめ、副業人材との出会い、さらには弊社の取り組みに共感いただいた方からの案件ご紹介やアライアンスなど、多様な形で他社のマーケターとお付き合いが生まれています。隔月くらいのペースでリアルイベントも開催しており、前半はマーケトレンド(施策ごとで切り抜いたり)や市場問題をテーマにした講演やグループディスカッション、後半は懇親会という形式で実施しています。また不定期にビアガーデンや花見、忘年会などのマーケターイベントも開催しています。

創業からの苦労|ゲームのルールが変わった感覚

事業が固まりきらないもどかしさ

起業当初は一人で始めたので、サラリーマン時代とはまったく別のゲームが始まったという感覚がありました。昨日までポケモンをやっていたのに、急にスーパーマリオが始まったような。笑

事業を成長させるための戦略立案や準備、それに営業活動以外の経理や工務など、それまでバックオフィスがやってくれていたことも一旦は全部自分でやらなければならず、その点は非常に苦労しましたね。

一方で、事業としても多くの困難がありました。最初はサービスが市場に受け入れられるかも不明確な状態で、仮に受注できてもクライアントさんの求める支援範囲とのズレから解約に至ることもありました。
今でこそサービス体系は明確になってきていますが、当時の仕様が固まりきっていない状態で事業を推進しなければならなかった点は苦労しましたね。目先の売上を確保しつつ、未完成なサービスで営業活動を行うのは、決まった商材をマーケティングするのとは大きく異なる難しさがありました。
しかし、試行錯誤を経てサービス内容を柔軟にコツコツ見直すことで、市場に受け入れられるサービスにアップデートできてきた自負もあるので、今では必要なプロセスだったと考えています。

今後のビジョン|マーケターの集まるインフラでありたい

一次情報が集まる場をつくりたい

事業としてやっていきたいのは、プラットフォーマーとしてBtoBマーケティングに関する「一次情報」が自然と集まる場所を提供することです。
自分自身もBtoBマーケターだった経験から、一次情報はデスクトップリサーチでは手に入らない情報です。
当社のサービスや運営しているコミュティの特性上、イベントやお仕事を通じて第一線で活躍しているマーケターの方と触れ合う機会が多いので、ネット検索などでは決して手に入らない、現場で生み出されるリアルな知見やノウハウなどの情報が集まるインフラのような立ち位置を目指していきたいですね。

仕事やイベントを通じて彼らが行き交い、常に最新の知見が交わされる「情報と人のインフラ」となる存在を目指していきます。

学生へのメッセージ|日常の「超・相手目線」こそ、起業とマーケの原点

起業とマーケティングは、本質的にほぼイコールだと考えています。これは私自身、実際に起業して初めて実感したことでした。

多くの人が想像する「商品をどう売るか」というプロモーションは、マーケティングのほんの一部に過ぎません。本質はもっと手前、「誰のどんな悩みを、どんな商品で、いくらで解決するか」という構想段階から始まっています。このゼロから価値をつくり、届けて、商売を成立させるプロセスこそが、起業でありマーケティングの原点だと考えます。

だからこそ一番大切なのが、徹底的な「超・相手目線」です。目の前の人が何に困っていて、自分に何ができるかを問い続けること。その思考の深さがビジネスの種になりますし、将来ターゲットに向けたメッセージを考えるときの強力な土台になります。

これは学生でも社会人でも誰にでもできることだと思うので、日々意識していれば、起業のアイデアも自然と湧いてくるのではないかと思います。

例えばアルバイト先で店長から「これを売りたい」と言われたとき、どうすればお客さんの心をつかめるか本気で考えてみる。お金をいただいて働く場には、必ず思考を深めるチャンスがあります。考え方や視点を少し変えてみるだけで、日常のすべてが学び場になるはずです。

編集後記

12年間マーケティングに向き合ってきたからこその「情報の非対称性」という課題意識、そしてそこから生まれた1,200人規模のコミュニティのお話が印象的でした。
何より、「起業とマーケティングはニアリーイコール」という言葉には、私自身もハッとさせられました。相手目線で課題を問い続けるという姿勢は、マーケティングに限らず、これから何かに挑戦したいすべての学生にとって指針になる考え方だと感じています。