学生時代とリクルート入社
ネット情報がない時代の会社選び
私が就活した頃は売り手市場でしたが、ネット情報はそんなになく、情報誌しか頼れるものがあまりない時代でした。なので、とりあえずいろいろな会社を訪問してみよう、行ってみないとわからないという気持ちがあって、説明会や会社訪問など30社ぐらい接触しました。
その中からリクルートに決めたのは、若手が多くて活気がある「自由な社風」と、頑張った人はしっかり評価する「公平性」、そしてやりがいのある仕事ができそう、と感じたからです。お話をお聞きしたみなさんが、イキイキと楽しそうに仕事をしている様子も魅力的でした。入社後は企業の採用提案の営業、そして広告制作ディレクターの仕事をしました。残業は多かったのですが、やりがいを感じられる、とても充実した仕事でしたね。思った通り活気のある職場で、コミュニケーションもよく、公私共に仲良くなりました。今でもたまに食事をする同期やメンバーがいます。
独立、そして法人化まで
専業主婦を経て資格取得へ
リクルート退職後は、子育てに専念した専業主婦時代があります。育児や地域ボランティアなど、楽しく過ごしていたのですが、バリバリ働く友人を見て「また働きたい」という気持ちが湧き起こりました。そこで、できることから始めようと、前職の経験を活かしてコピーライター、webサイトのディレクター業務を少しずつ広げる中で、「キャリアカウンセラー(現:国家資格キャリアコンサルタント)」という資格に出会いました。これだ、と思って養成講座に通い、取得しました。自分自身も色々な仕事を経験したり、子育てとの両立などキャリアに関して考えることが多々あったので、今度はそうしたことで悩む方の力になりたいと思ったんです。それからは、興味がある資格を取れるだけ取ろうと思って、必死で勉強しました。仕事や家事、育児もあったのでめちゃくちゃ忙しくて、実はその頃の記憶はあまりないぐらいです。(笑)
国家資格1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、交流分析士1級、ナラティブ・コーチなどの資格を取得し、今も次の目標に向けて勉強をしています。
10年目の法人化
資格を活かして人材育成コンサルタント、研修講師、キャリア面談の仕事を個人事業主としてやってきたのですが、10年経った時に「ちょうど一区切りだな」と思ったんです。インボイス制度のタイミングもあったので、思いきって法人にしました。業務内容自体はそれほど変わっていないのですが、法人にしたことで社会的信頼は高くなったと思いますし、自分の中でも覚悟ができました。そこから規模的にも質的にもワンランクアップした仕事ができるようになったと感じています。
対企業・自治体・学校への支援
仕事の8割は企業の人材育成支援
今やっていることを大きく分けると、対企業が8割ぐらい、あとは対自治体、対学校です。
企業の仕事は人材育成コンサルティングで、一人一人がイキイキと個性と能力を発揮して働けるような組織の仕組み作りと階層別研修(若手、管理職など)、個人面談を行なっています。心理的安全性の高い対話型組織を作ることで、若手がのびのびと意見を言えるように、また、さまざまな背景を抱えた人が快適に働けるようにしたいと思っています。個人面談はこれまでに3,000名以上のお話をお聞きしてきましたが、本当に一人一人の考え方や価値観の違いを感じます。組織の中でも、こうした違いを認め合って、お互いに理解し合いながら協働できたら仕事はスムーズに進むので、そのために必要なことを提案しています。
自治体の仕事は、女性活躍推進、リーダー育成、ハラスメント対策、キャリアデザイン、ワーク・ライフバランスなどのテーマでセミナーの企画、運営を行っています。企業の方以外にも一般の方向けのセミナーを行うこともあるのですが、楽しく学んでいただけるように、対話を中心としたワークショップ型で行なうなどの工夫をしています。
大学と専門学校ではキャリアの授業をしています。就活支援だけじゃなくて、社会に出てから楽しく働けるような力を身につけてもらう授業もしています。「社会人になるのも悪くないな」「働くって面白そうだな」と感じてもらえるような、自分の可能性を広げてもらえるような対話とワーク主体の、アクティブな授業になるように企画しています。
悩みは若手からベテランまで
組織で働く若手には、それぞれに多様な課題があります。今の仕事は自分に合っているんだろうか、これからどうキャリアアップしたらいいのか、社内でどう人間関係を作ったらいいのか、といったことから、メンタル不調やハラスメントといったセンシティブな課題を抱えている人もいます。そういう方たちの悩みの課題解決には特に力を入れています。もちろん、管理職にも悩みがあります。部下育成やチーム作りといった組織全体に関わること、人が定着して生産性を上げるためにどうしたらいいのかといったことに日々頭を悩ませているので、研修や個別支援という形で、課題解決のお手伝いをしています。最近は女性も男性も、家庭と仕事との両立で悩んでいる方も多いですね。
AI✖️メタバースでの個別支援構想
気軽に話せる場所づくり
一人一人の価値観やライフスタイルが多様になっているので、個別支援はこれからますます大切になってきます。そのためには面談、1on1が必要なのですが、相談しにくい人がいるのも事実です。面と向かって話をすることがしんどかったり、年長者の圧を感じたり、そもそもそういった場に行くのが面倒だったりすると思うんです。面談ってちょっとハードルが高いですよね。オンラインは気軽なんですけど、それでもやっぱり抵抗を感じる方もいるので、今、メタバースのプラットフォームを使った新サービスを進めています。悩みは軽いうちに話ができる方がいいと思うんです。ちょっと嫌だったなとか、何かモヤモヤするな、といったことでも気軽に話せる相談室が1社に1室あることが理想かなと思っています。相談のハードルを下げて、私たち専門家と話すことでまた元気になってもらえる環境をデフォルトにしていきたいなというのが今の思いです。
学生へのメッセージ
小さな失敗は大学のうちに
今は、学生時代にさまざま経験を積む人とそうじゃない人が二極化していると思います。社会人になった方に聞くと、学生時代にリアルな体験をしてよかったという声が多いんですよね。失敗も挑戦も、学生時代だからできることってたくさんあると思うんです。タイパも分かりますが、うまくいくことだけ、効率のいいことだけをやろうとするんじゃなくて、ちょっとめんどくさいこと、泥臭いこともやっておくのもいいんじゃないかなと思います。例えば、私は旅行が好きなんですが、学生時代はバックパッカーでした。そういうことって社会人になったらなかなかできないですよね。また、社会人になるとどんどん失敗が重くなっていくので、小さな軽い失敗ができるのはやっぱり大学時代かなと思いますね。たくさん体験して恥をかいたり嫌な思いをしたりするのを避けずに、ちょっとネガティブな体験もどれだけ楽しめるか、という思考でいく方がいいかなと。「かっこよく」というのはあまり考えずにいろいろやってみることが、結果的に「かっこよくなる」と思うので、そんな風にいろいろな体験をしてほしいなと思います。
わからないまま進んでいい
やりたいことがわからないという学生さんもたくさんいると思うんですけど、例えば組織の課長も部長もわかってないこともあると思います。みんなずっとわからないまま、社長も迷うので、みんなわからないままなんです。だから、「これが答えだ、全部わかった、という日は来なくていい」と思うぐらいでちょうどいいと思います。そのときにこれだと思っても、また変わるので。明確な正解が空から降ってくることはないので、7割でも始めてみる、やりながら変えていく、ぐらいの方がいいと思います。
キャリアは1つじゃない
自分のキャリアはこれだと1つに決めなくてもいいと思っています。もちろん自分の強みとか軸とか、そういう自己分析をした上で見えてくるものは大事にして欲しいのですが、いつでも可能性は無限にあります。ベテラン人材になってからも、やっぱりこれがやりたい、こんなこともできるんだと、あらたな自分を発見することはよくありますね。その「決めない」面白さが、やりがいにつながったり成長につながったりします。ずっと変化し続けるっていうのが面白さであり、やりがいかなと思います。
編集後記
高橋さんのお話を伺って、一番印象に残ったのは「決めない」という言葉でした。私自身、将来のキャリアについて明確な答えを出さなければと焦っていた部分があったので、課長も部長も社長もずっとわからないままだという言葉には、正直ほっとしました。個別支援を大事にしながらメタバースという新しい選択肢も取り入れていく姿勢からは、変わらない土台を守りつつ手段は柔軟に変えていくバランス感覚が印象に残っています。学生のうちに小さな失敗をたくさんしておきたいと、あらためて思いました。