インタビュー

震災を機に再び建設業界へ――親子2人から始まった会社が「人の成長」を大切にする理由

震災を機に再び建設業界へ――親子2人から始まった会社が「人の成長」を大切にする理由
PROFILE
株式会社アイテック 代表取締役
岩元 晴大

創業の経緯と事業内容

災害をきっかけに一度離れた建設業界へ

弊社はもともと、私と父で細々と専門的な工事を手がける個人事業としてやっていましたが、私が20歳ぐらいの頃に、建築業界がとても冷え込んだ時期がありました。バブルが崩壊してから、建築業が暇になったときがあったんですよね。

それで、いったん建築の業界を離れて、5年ぐらい別の仕事に就いていましたが、2011年の3月に東日本大震災が起こりました。震災があってから建設業がすごく忙しくなってきて、復興のために関西圏からも関東へ行くような建設業者が出てくるようになりました。

徐々に業界が忙しくなってきたこともありますが、やはり震災のような出来事を目の当たりにして、建設業の役割の大きさを改めて感じたんです。もう一度日本の建設を支えていくような企業を目指そうと考えて、建設業界に戻ってきました。25歳のときでした。

そこからは非常に忙しい日々が続いて、たくさんの人を雇用しながら、周りの人の力も借りて工事を展開していくようになりました。だんだん人も増えてきて、法人として社会貢献していく決意をしたんです。

29歳で個人事業から法人化

事業を法人化したのは、私が29歳のときです。もともとはタイル工事だけを専門にやっていた会社で、外壁のタイル工事など、専門業者として特化してきました。

今もタイル工事は一番の得意分野ですが、そこからリフォーム事業やマンション・施設の大規模修繕工事といった分野にも、参入するようになりました。現在は特定建設業の許可を取得し、土木・新築・設備工事まで、幅広く建築に関わる工事を請け負っています。

今、従業員は20人を超えていて、8割ほどは現場の作業や管理に従事しています。残りの2割は事務や営業などを担っております。

マンションなど大きな建物の修繕が中心

現在の事業の中心は、マンションや共同住宅など大きな建物の修繕工事です。もちろん、戸建て住宅向けのサービスも、展開しています。小さな工事からフルリフォームまで、幅広く対応できるのが、弊社の強みです。

受注全体で見ると、個人のお客さまからの依頼は企業様に比べると多くはありません。ただ、地元に特化したリフォームには特に力を入れていて、ご近所様からの依頼は幅広くお引き受けしております。

組織づくりで悩んだこと

最初は右も左もわからなかった

人が増えてくると、いろいろな価値観を持った人が集まってきます。会社組織というのは、自分と同じ考えの人ばかりが集まり、自分が思うように同じ方向を向いてくれるわけではありません。いろいろな考え方や個性を持った人達が集まりながら、会社は育っていくものだと、私は思っています。

ただ、法人にした当初は、そういった知識やノウハウが全くなかったので、どんなふうに進むのが正解か、右も左も分からないような状態でやってきました。何もかもすべてが初めての経験でしたね。

個性を伸ばす会社でありたい

以前は、社員全員が同じ方向を向くことにフォーカスしていました。ただ、最近は考え方が変わってきて、それぞれがそれぞれの方向を向いて進んでいけばいいと思うようになっています。

伸びていく方向やスピードは人それぞれだからこそ、しっかりと支えられる根っこがなければ、会社として、大きく成長していくことは不可能だと考えていますね。会社の形だけにこだわるのではなく、それぞれの個性を伸ばしていける会社でありたいというのは、常日頃から思っています。

今はもう、多様性という言葉が当たり前のように使われる時代です。昔はそんな言葉はありませんでしたが、時代はものすごいスピードで変わっていくので、その変化にきちんと寄り添った形で、対応していかないといけないと考えています。

今後のビジョン

遠くの目標はあえて置かない

私の場合、10年・20年先といった遠くの目標は、あまり置かないようにしています。そこまで先のことは、正直どうなっていくか分からない部分もありますから。ただ、10周年の式典の際には、5年後のビジョンを掲げました。

もちろん、会社として業績を上げていくことは大事です。ただ、経営をしていれば、いい時も悪い時も必ず訪れます。今までできなかったことが、いずれできるようになっていく。そんなふうに進みながら、会社の中身が少しずつ大きくなっていくようなビジョンを持っています。

人の成長が結果につながる

これから会社を成長させていく上で、私が一番大切にしていることは、やはり人の成長です。人を大事にできる会社でなければ、この先の成長はないと考えています。関わる人たちが自信とやりがいを持って、成長できる環境を作っていくことが私の使命であると考えております。

その中で、一人ひとりが今できないようなことでも、いずれできるようになることで、数字は自ずと上がってくると思います。なので、まずは社員をはじめ、会社に関わる全ての人たちの意識を最大限伸ばしていきたいですね。結果は、後から必ずついてくるものですから。

具体的な売上目標を掲げるというよりは、去年より今年、今年より来年という形で目標を掲げながら、地道に積み上げていくスタイルでやっています。15周年のときは、さらに多くの仲間と仕事をしながら、もっといい報告ができるように精進していきたいと思っています。

学生へのメッセージ

自分の信念を持ってほしい

自分がここで働きたいと思える場所で、働いていくことが大事だと思います。自分のことをきちんと見てくれる会社で、ぜひ頑張ってほしいですし、自分が中心となって活躍できる場を見つけてほしいですね。

これからの学生の皆さんが、日本の将来を背負っていくと思います。柔軟に対応しながらも、自分だけの信念と誇りを持って社会で活躍してください。

編集後記

株式会社アイテックの岩元代表にお話をうかがいました。家族で営んできたタイル工事の個人事業が、東日本大震災をきっかけに再び動き出し、20人を超える組織へ成長していく過程が印象的でした。

「全員が同じ方向を向く」から「それぞれが個性を伸ばす」への考え方の変化は、多くの会社にとってもヒントになると感じます。数字よりも人の成長を軸に据える経営スタンスから、多くを学ばせていただきました。貴重なお話をありがとうございました。