インタビュー

「世界の失明を半分に」眼科医がスマホで挑む、医療のボーダレス化

PROFILE
OUI Inc. CEO
清水 映輔

慶應医学部から起業へ。一人の眼科医が描いた「誰もが医療にアクセスできる世界」

アイスホッケーに打ち込んだ学生時代と、医師としての原風景

僕は横浜で生まれて、父の転勤でニューヨークに住んでいた時期もありました。中学から慶應に進み、部活はアイスホッケーに打ち込んでいました。実は今も社会人チームで続けていて、東京都でも上位のレベルでプレーしています。

学生時代はアイスホッケーに没頭しつつ、飲食店でアルバイトをしたり、とにかく色々な世界を見ることに時間を使っていましたね。

大学もそのまま慶應義塾大学医学部に進みました。祖父が医師として働く姿を見て育ったこともあり、自然と同じ道を志すようになりました。

ベトナムの現場で感じた「医療機器」の壁

大学を卒業してからは、眼科医として一流を目指して研鑽を積んでいました。転機になったのは2017年。白内障手術のボランティアでベトナムの現場に行ったことです。

そこで目の当たりにしたのは、世界には眼科医療が全く足りていないという現実でした。でも、単に「医者が足りない」だけじゃない。既存の医療機器が大きすぎたり、高価すぎたりして、必要な場所に届かないという構造的な問題があったんです。それなら、自分たちで解決策を作ればいい。そう思って開発したのが、スマホに取り付けて眼を診察できる医療機器「Smart Eye Camera」でした。これが、OUI Inc.を創業するきっかけになりました。

医師であり、経営者であり、研究者。あえて「独立」にこだわらない働き方

既存の枠組みを超えて「全部やる」という選択

よく「起業するために医師を辞めたんですか?」と聞かれるんですけど、全然そんなことはなくて(笑)。今も現役の眼科医として年間1万人くらいの患者さんを診ていますし、大学の教員も務めています。

僕の中では、何か一つの肩書きに縛られる必要はないと思っています。会社もやるし、クリニックも経営する。国立の研究機関だけではスピード感が足りないこともあるし、逆に、企業という枠組みだけでは実現できないこともあります。だからこそ、自分のやりたいミッションを最速で実現するために、今の「全部やる」スタイルを選んでいます。

「眼」を通じて、あらゆる健康を支える存在へ

僕たちのミッションは「世界の失明を半分にする」こと。でも、その先にあるビジョンはもっと広いんです。眼って、実は全身の健康状態を映し出す窓のような役割も持っているんですよね。

将来的には眼科領域だけにとどまらず、眼を通じて人々の健康をトータルで支える存在になりたい。ミッションを達成した後の次のステップとして、より大きな健康のインフラを作っていければと考えています。

OUI Inc.が求める「限界を決めない」パッション

「やり抜く力」と「多様性」が組織のエンジン

弊社には3つのコアバリューがあるのですが、中でも特に大切にしているのが「やり抜く力」です。スタートアップなので、目の前にはできない理由なんていくらでも転がっています。でも、そこで諦めずに「どうすればできるか」を考え抜ける人と一緒に働きたいですね。

あとは「多様性を認めて助け合うこと」。医療従事者だけでなく、多様なバックグラウンドを持つメンバーが、一つの「社会課題」に向かって混沌を楽しみながら進んでいく。そんな組織でありたいと思っています。

裁量権を持って、本気で社会を変えたい学生へ

インターン生や新卒の方に提供できるのは、圧倒的な「社会正義」にコミットできる環境です。僕たちの事業は、やってることがそのまま社会の役に立つという確信がある。そこに対して、自分の限界を決めずにチャレンジしたい人には、いくらでも裁量権を渡します。

逆に、安定を求めたり、誰かに正解を与えてほしいという方には、うちの環境は少し厳しいかもしれません。「自分から成長を掴み取りにいく」というマインドがある人にとっては、最高にエキサイティングな場所だと思いますよ。

20代の君たちへ。世界を見て、自分の枠を広げてほしい

過去の後悔よりも、今の「越境」を大切に

もし僕が学生時代に戻れるなら、もっと世界中を回っておけばよかったなと思います。当時は部活に縛られていた部分もあって、1週間以上の海外旅行なんて信じられないと思っていましたから(笑)。

今は大人になっても海外へ行けますが、若い時の感性で世界を見る経験は、何物にも代えがたい財産になります。日本という狭い枠に収まらず、どんどん外の世界を見て、色々な価値観に触れてほしい。それが結果として、自分にしかできない仕事を見つける近道になるはずです。

編集後記

今回、清水社長にお話を伺って一番衝撃を受けたのは、「医師」という専門職でありながら、経営や教育など複数の草鞋を履きこなす圧倒的なバイタリティです。「全部できると思っているから、全部やる」という言葉に、ビジネス未経験の私は自分の勝手な限界に気づかされました。

特に印象的だったのは、ベトナムでの原体験を「課題」で終わらせず、自ら「解決策(プロダクト)」に昇華させた実行力です。社会正義とビジネスを高い次元で両立させている姿は、私が理想とする働き方そのものでした。

今の自分に足りないのは、清水社長が仰っていた「やり抜く力」と「広い視点」だと痛感しました。まずは大学生活の中で、目の前の課題に対して「できない理由」を探すのではなく、一歩外の世界へ踏み出す勇気を持ちたいと思います。