ブログと受験本から始まったビジネスの原点
慶應義塾大学に進学、ブログが転機に
慶應義塾大学に入ったころ、学生にとって起業というのが結構身近な存在になっていた時代でした。
正直、頭はあんまりよくなかったんですよ。でも大学に入ってから、「大学受験に受かる技術」というブログを自分で始めたんです。それがだんだん人気になってきて、出版社に企画を持ち込んだんですよね。当時、東大生も同じように受験ブログをやっていて、そのタイミングで「本も出せるんじゃないか」と思って動いたら、本当に出せた。
在学中に12冊の出版を経験
英語の参考書とか、受験に受かるためのテクニックをまとめた本とか、いろいろ出して。トータルで12冊くらいになりました。本を読むのはもともと好きだったんですけど、出版の仕事をするとは思っていなかったです。ご縁があって本を出せたことが、出版に関わる最初のきっかけの1つでした。
証券会社での4年半が、のちの武器になった
営業スキルを身につけるための就職
慶應には優秀な学生が多く、コンサル業界などを志望する人も少なくありませんでした。でも私は、起業するうえで営業力は絶対必要だなと思っていて。若いうちにやっておかないといけないと感じていたので、証券会社や不動産会社、あとはリクルートさんとか、営業力を鍛えられそうな企業を中心に受けていました。
宇都宮支店から退職へ
4年半でやめたんですけど、最後の赴任地が宇都宮だったんですよ。起業するにも転職するにも、やはり東京の方に出たいという気持ちがずっとあって。次の辞令が出る前にやめようと決めたのが退職のタイミングでした。
eラーニングから出版業へ、流れるような転身
株式投資の情報発信からスタート
会社員として4年半しか経験がなかったので、正直、事業として形にできるノウハウや材料はあまりありませんでした。やってきたこととしては、本を出したという実績と、テクニカルアナリストという証券に関する資格があった。だから、株式投資のeラーニングサイトを始めたのが2014年ごろです。大学受験の株式投資バージョンみたいなイメージで始めました。
本の企画持ち込みが、出版業との再会を呼ぶ
eラーニングをどう広めるか考えたとき、人に何かを教えるうえで出版は欠かせないと思って。また大学生のときと同じように、株式投資に関する本の企画を出版社に持ち込んだんです。そこで本を出したのが一つ。そうしていくうちに、いろんな人から「本の出し方を教えてほしい」とか「ライティングを手伝ってほしい」と言われるようになって。それを仕事にした方がいいかなという流れで、出版社になっていた感じです。
「目的ファーストの出版」で企業の売上を変える
本作りより先に、ボトルネックを考える
ラーニングスで一番得意としているのは、売上アップのために本を使いましょう、という提案です。ボトルネックがどこにあるかによって、作る本が変わるんです。
営業しても成約率が悪いなら、成約率を上げるための本を作る。リードが欲しいなら、幅広く刺さる薄い本を作って配る。目的に合わせてオフラインの施策を設計するのが、うちのメインの仕事です。
商談前に本を送ると、成約率が変わる
たとえばWeb商談を実施する前に、本を郵送で送っておく。そうすると、お客様にある程度弊社の情報を理解していただいた状態で商談ができます。決まらない理由ってほとんど、決断するための材料が不足していることなんですよ。その判断材料を一冊の本にまとめ、事前に読んでもらうことで成約につなげる、という考え方です。
認知獲得ははっきり言ってSNSの方が強いです。でも成約率という点では、本の方が効果的だと思っています。
一般的な事例より、ピンポイントの事例が刺さる
世の中に出回っている本って、誰にでも刺さるような一般的な内容が多いんですよ。うちが作るのはその反対で、そのクライアント企業の事例をズバリ入れる。一般的に幅広く刺さるわけじゃないけど、ターゲットにピンポイントで刺さる。そういう本を作るというのが大事なんです。
ブックDMという、オフラインの逆張り戦略
デジタルが強い会社ほど、紙が刺さる
SNSマーケティングを手がけている企業や、Web広告を得意とする企業が、あえてオフライン施策を選んでくださることが増えてきているんです。他の会社がやっていない施策だから刺さる、という感覚だと思います。
本ってしっかり読まないと内容が入ってこないですよね。動画は流し見でもいけるけど、文字って頭使わないといけない。頭を使うときの方が記憶に残りやすい、というのが本の強みだと思っています。
ブックDMで新規アポを取りに行く
出版後の使い方まで支援しているのも、うちの強みの一つです。たとえば企業リストを用意して、「こういう本を出したので献本させていただいてよろしいですか?」と事前に確認する。かなりの確率で「構いませんよ」と言ってもらえるので、そこに本を送って、「いかがでしたか?」と電話してアポを取りに行く。そうした営業面まで含めてサポートしています。
AIを活用し、1週間で本を制作するサービスも展開
最近はAIを活用したサービスも始めました。ヒアリング取材はしっかりやって、編集工程の一部にAIを使う。土日も業務委託の方に動いてもらえるオペレーションと組み合わせて、1週間で本を完成させるという仕組みです。費用感も通常より半額ほどに抑えられるようにしています。
ビジョンブックが生む、採用と理念浸透への効果
創業の歴史を「本」として残す意味
創業から時間が経つと、成長してきた企業の新入社員は、創業時の苦労を知らないまま入ってきますよね。会社がどのように築かれてきたのかを知ることで、感謝や誇りを持って働けるようになると思うんです。ただ、創業者が自ら武勇伝のように語ると、聞き手が受け止めにくいこともあります。だからビジョンブックという形にまとめて、採用の面接前に渡したり、入社時に渡したりという使い方をおすすめしています。
リピーターが多い理由
目的に合わせて本を出すという提案をしているので、最初はブランディング目的の本を作り、次は採用強化のために別の本を作る、という形でリピートしてくださることが多いです。1つの会社で、業界別にコンテンツを少し変えながら複数の本を作るというケースもあります。
失敗を奨励する組織、強くなることを目指す経営
「ミス」と「失敗」は違う
社員には、失敗を積極的に経験してほしいと伝えています。ミスと失敗はまったく違うものだと思っていて、ミスは注意不足から来るもの。一方で、失敗はチャレンジした結果です。だからこそ、挑戦したうえでの失敗は奨励しています。全部教えようと思えば教えられるんですけど、それがいいことだとも思わないので。
急拡大より「強くする」ことを選ぶ
現時点では、急拡大を目指しているわけではありません。大きくするより強くする、という方針で、出版を軸に、提供できるソリューションを広げてきました。リピーターのお客様が多いのもそういう理由で、一つの企業と長く付き合える関係を大事にしています。今は10名ほどで運営していますが、成長に合わせて企画部門を中心に採用を考えていきたいと思っています。
5年後10年後も、本は残る
出版業界の先行きは明るくないと言われることもありますが、逆に言えばオフライン施策に取り組む会社が減っているということで、そこにチャンスがあると思っています。インターネットの歴史が数十年であるのに対して、本は聖書の時代から何千年も存在し続けている。そう簡単には崩れないはずで、そこにAIやSNSといった最新の価値を組み合わせながら、独自性を出し続けていきたいです。
編集後記
梶田さんのお話を聞いて、「本は売れるもの」ではなく「本で売るもの」という発想の転換が面白いなと感じました。SNSや動画が当たり前になった時代だからこそ、あえて紙の本を使うオフライン施策に逆張りの強みがある、というのは私自身も目から鱗でした。「認知はSNS、成約は本」という整理はシンプルで、とても腑に落ちました。また、失敗を奨励するという経営姿勢にも共感しました。チャレンジした結果の失敗と、注意不足のミスをきちんと区別して話してくださったのが印象的です。キャリアにおいても事業においても、流されるのではなく、自分で考えて決断することの大切さを改めて感じました。