後悔した4年間が、原動力になった
目的を持てないまま過ごした4年間
「正直に言うと、大学時代はほとんど勉強をしていませんでした。何かに本気で取り組むこともなく、ただ時間だけが過ぎていった感覚があります。今でも、もっと学び、さまざまなことに挑戦しておけばよかったという後悔が残っています」
しかし、その後悔が、社会人になってからの尾高さんの行動を大きく変えました。
大学卒業後に入社したのはIT関連の企業でした。当時いわゆるブラック企業と言われる会社でしたが「目的を持たないまま時間だけが過ぎていく人生には戻りたくない」その思いから、自ら目標を設定し、仕事に向き合い土日も休まず働きました。
「目標を決め、それを達成するために行動する。その積み重ねによって、自分自身が少しずつ変わっていく感覚がありました。大学時代の『空虚な時間を過ごしたくない』という強い思いがあったから仕事には本気で向き合えたのだと思います」
後悔を過去のまま終わらせず、次の行動を生み出す原動力へと変えていきました。
26歳で独立、手元に残ったのは20万円
その後、ヘッドハンティングされた会社が経営する、子会社の取締役に就任しました。ただ、取締役という立場に立って気づいてしまったんですよね。
「会社の看板や役職に守られるのではなく、最終的な責任を自分自身で引き受けたい。自分の力で事業をつくり、自分の判断で挑戦したい」と考えたことが、独立を決めた理由です
ホームページ制作の会社として独立したものの、資本金300万円のうち100万円は運転資金でなくなり、100万円は詐欺に遭って消えました。手元に残った100万円で、Google のインドアビュー(ストリートビューの室内版)の代理店に加盟するために加盟金50万円・カメラ購入費30万円を使ったので、実質手元は20万円だけ。もう死ぬ気でやるしかないと思いましたね。
相手の課題から逆算し、売上1億円規模へ
当初は、ホームページのリニューアルを提案する電話営業を行っていました。
しかし、一方的にサービスを案内するだけでは話を聞いてもらえません。
そこで尾高さんは、ホームページを売るのではなく、企業が抱える課題を聞き出すことから営業を始める方法へと切り替えました。
「自分たちが売りたいものを説明するのではなく、相手が何に困っているのかを理解する。その課題を解決するための手段を提案するようにしました」
営業方法を根本から見直したことで、割とすぐ1億円の売上を作ることができました。
2014年に株式会社クリエイティブイノベーションを立ち上げたのを皮切りに、今は3社を経営しています。ちなみに2019年には4,000万円の詐欺被害も経験しましたが、その出来事によって精神的にも経営者としても強くなれた、大きな学びの機会だったと振り返ります。
AI時代の入口を、誰にでも開く
自分自身が迷ったからこそ、つくれたスクール
株式会社AIMを立ち上げた背景にも、尾高さん自身の経験があります。
生成AIが急速に普及する中で、尾高さんもChatGPTをはじめとするさまざまなAIツールを学び始めました。その中で感じたのが、初心者にとっての学習の難しさでした。
「AIを学びたいと思っても、何から始めればよいのか分からない。ネットには情報があふれていますが、自分に必要な情報を選び、学ぶことは簡単ではありません。また、初心者には手を出しにくい高額な講座も少なくありませんでした」
今後、AIはあらゆるビジネスや生活の中で活用される存在になる。
そう確信した尾高さんは、初心者が無理なくAIを学べる環境として、オンラインスクール「AI入門アカデミー」を立ち上げました。
600本以上の動画で、基礎から実践まで学ぶ
AI入門アカデミーは、初心者から中級者をターゲットにしたサブスク型のオンラインスクールです。コンテンツは600本以上。法律・倫理を含む基礎知識コース、案件獲得や業務効率化ツールの使い方を学ぶビジネス活用コース、画像・動画生成、さらにはノーコードでシステムを組む中級者コースまで、AIに関することをほぼ網羅しています。
一般的なスクールが特定分野のスキル習得に特化しているのに対し、AI入門アカデミーでは、動画・画像・音楽の制作から、AIを活用した案件の獲得や収益化まで幅広く学ぶことができます。実際に、受講開始から3か月で200万円の売上を達成した受講生もおり、学びを実践的な成果につなげられる点が高く評価されています。
助成金を活用し、企業のAI導入負担を抑える
個人向けのスクールに加えて、法人向けには「リスキリングAI助成金サポート」と「企業向けカスタム研修」を展開しています。
助成金サポートでは、人材開発支援助成金などの制度を活用し、企業が負担するAI研修費用を抑えながら、従業員のリスキリングを支援します。企業向けカスタム研修では、事前に各企業の業務内容や課題をヒアリングし、必要な内容に合わせてカリキュラムを設計します。「企業によって、AIを活用したい業務は異なります。SNS運用を効率化したい会社もあれば、資料作成や顧客対応、社内教育に活用したい会社もあります。一般的な使い方を教えるのではなく、その企業の現場で本当に使える形に落とし込むことを重視しています」
単にAIツールの操作を学ぶのではなく、実際の業務にAIを定着させること。それが、AIMの法人研修が目指している姿です。
「遊ぶように働こう」に込めた意味
働き方を選べることが、人生の自由の幅を広げる
尾高さんが掲げるビジョン「遊ぶように働こう」
この言葉が表しているのは、仕事を楽に済ませることではありません。働く場所や時間を自分で選び、心から興味を持てる仕事に夢中で取り組む。そんな、自分らしい働き方を実現してほしいという思いが込められています。
昨年、尾高さんはベトナムに1か月滞在しながら、普段と変わらず仕事を続けました。好きでよく訪れる沖縄でも、場所に縛られることなく仕事をしています。
「全員が同じ場所に集まり、同じ時間に働く必要はないと思っています。どこにいても価値を生み出せるスキルがあれば、働き方だけでなく、人生そのものの選択肢を広げることができます。そのために、AIやデジタルの力を身につけてほしいと考えています」
AIを学ぶことは、単に仕事を効率化するためだけのものではありません。
自分がどこで、誰と、どのように生きていくのか。人生を自分の意思で選ぶための力にもなり得るのです。
コミュニティで、仲間とともに
今後は、オンラインスクールの枠を越え、受講者同士が支え合えるコミュニティをさらに拡大していく構想があります。
尾高さんの周囲には、独立を目指す20代や、これから起業に挑戦したいと考えている人も多くいます。
一方で、独立や起業には、事業づくり、営業、資金管理、人材採用など、さまざまな壁があります。
「私自身も、失敗やトラブルを何度も経験してきました。一人で悩んでいると、解決策が見えなくなることもあります。困ったときに相談できる仲間や、先に経験した人から学べる環境があれば、乗り越えられることは増えるはずです」
オンラインでつながれる時代だからこそ、沖縄で困っていることを北海道の人が解決できるかもしれない。
知識を提供するだけでなく、挑戦する人同士がつながり、互いの経験を共有できる場所をつくる。
それが、尾高さんが次に目指している姿です。
本気で向き合った先に、進むべき道が見えてくる
二度と戻らない人生の夏休みを全力で楽しんでほしい
最後に学生へのメッセージを尋ねると、尾高さんは、まず学生生活そのものを思い切り楽しんでほしいと語りました。
学生時代は、二度と戻らない貴重な時間です。
勉強や挑戦はもちろん、遊びや旅行、そこで出会った仲間との時間も、後の人生を支える大切な財産になります。
特に、学生時代に出会った仲間は、社会に出てからも支え合える存在になることがあります。
将来に焦るあまり、今しかできない経験を後回しにしないこと。
目の前の時間と出会いを大切にし、何事にも全力で向き合ってほしいと話します。
遊びも全力、就活も全力、仕事も全力。そうやって向き合い続けた先に、豊かな4年間が待っていると思います。
世界はもっとおもしろい
社会に出ると責任は増える分、自分で選べることも増えていきます。
どこで働くのか。誰と仕事をするのか。何に時間を使い、どのような人生を歩むのか。経験や力を身につけるほど、選択肢は大きく広がっていきます。
「学生の頃は、大人になることを窮屈に感じるかもしれません。でも実際は、責任を持つからこそ得られる自由があります。社会に出てからの世界は、想像しているよりもずっとおもしろい。これから広がっていく未来を、楽しみにしてほしいです」
編集後記
インタビューを通じて印象的だったのは、失敗や挫折をすべて「次の一手」に変えてきた尾高さんの姿勢です。詐欺に遭った経験も、大学時代の後悔も、ネガティブな出来事として語りながらも、その一つひとつが今の原動力になっているのが伝わってきました。「遊ぶように働こう」という言葉は、単なるスローガンではなく、波乱万丈なキャリアを経てたどり着いたリアルな生き方なのだと感じます。AIというテクノロジーが急速に普及するなかで、スキルを持つことの意味と、仲間と学び続けることの価値を改めて考えさせられる一時間でした。