学生時代
ごく普通の学生だった
学生時代を振り返ると、友人との時間やアルバイト、そして趣味のサッカーに多くの時間を費やしていました。今思い返しても後悔はなく、さまざまな経験ができた充実した学生生活だったと思います。
一方で、学生の本分である勉強については、テスト前に慌てて取り組む程度で、決して優秀な学生ではありませんでした。
ただ、今の自分につながる原点は、そんな学生時代にあったと思っています。そして、そのきっかけを与えてくれたのは友人との何気ない会話でした。
当社ボナファイドは父が創業した会社です。高校生の頃、将来のことを考えたときに、「経営について学んだほうが良いのかもしれない」と思い、大学では経営学を専攻しました。
しかし、就職活動が現実のものになった頃、父の会社に入ることにはどこか抵抗がありました。家業を継ぐことは、敷かれたレールの上を歩くような気がして、それでは面白くない人生なのではないかと思っていたのです。今振り返れば、自分の境遇に反発していたのだと思います。
「境遇はチャンスだよね」
就職活動を始めた頃、私は経営そのものには興味があったものの、当時は別の会社に就職し、その会社で努力して、いつか父のように社長になりたいと考えていました。
そんなある日、ある友人とお酒を飲みながら、「将来どんな大人になりたいか」という話になりました。そのとき私は、「人の上に立てるような人間になりたい」と話しました。
もちろん、人には上も下もありません。私が言いたかったのは、血縁者だから社長になるのではなく、社員から認められ、信頼される経営者になりたいということでした。
すると友人が、こんな言葉をかけてくれました。
「それなら、修吾の境遇って逆にチャンスだよね。その環境を活かさない手はないんじゃない?」
自分の進むべき道に迷っていた時期だったこともあり、その言葉は強く心に残りました。
確かに、努力や苦労はどこへ行ってもできます。しかし、自分が本当に経営者を目指すのであれば、この境遇はむしろ大きなチャンスなのではないか。そう考えたとき、不思議と迷いがなくなりました。この友人との会話が、自分自身の覚悟を決めるきっかけとなり、現在の道を選ぶことになりました。
そして父にその思いを伝えた結果、現在も当社の重要なパートナーであるキヤノンマーケティングジャパン株式会社へ入社し、社会人としての基礎を学ばせていただくことになりました。
私にとって、それが社会人としての第一歩でした。
あのとき友人から掛けてもらった言葉には、今でも感謝しています。もしあの一言がなければ、私はまったく違う会社に就職し、まったく違う人生を歩んでいたかもしれません。
創業の背景
ガリ版印刷の時代に見た好機
当社は1966年に創業し、今年で60周年を迎えました。
創業当時のオフィスには、現在のようなコピー機はまだ普及しておらず、謄写版と呼ばれる「ガリ版印刷」が一般的でした。また、そろばんはあっても計算機はまだ広く普及しておらず、あったとしても輸入品が中心という時代でした。
父はそうした時代背景の中で、企業における事務作業の効率化に大きな可能性を感じたのだと思います。そして、タイプライターや計算機、複写機などを企業へ提供する会社として、当社を創業しました。
もともと父は同業の会社に勤めていました。しかし、当時の勤務先では労使関係に課題があり、待遇面にも不満を感じていたと聞いています。さらに、その会社が経営上の問題を抱えるようになったこともあり、「それなら自分で会社をやろう」と決意したそうです。
当時は、経営者と社員の待遇に大きな隔たりがあることも珍しくない時代でした。だからこそ父は、自分が理想とする会社をつくりたいと考えました。社員が安心して働き、努力が正当に報われる会社を目指して起業したと聞いています。
「人に口出さない」父の背中
父は、人のやることにあれこれ口を出す人ではなかったと思います。昔は違ったのかもしれませんが、基本的には相手に任せる人でした。私に対しても、「会社を継ぎなさい」とか、「継ぐのだからしっかりやれ」と言われたことは一度もありません。その分、親族からはずいぶん言われた記憶がありますが。
父は何よりも私自身の意志を尊重してくれていたと思いますし、そのことには感謝しています。人に言われたことをやるよりも、自分で考えて動きたい。父はそういう人でしたし、人にも同じように、自分で考えて動くことを求めていたのかもしれません。そういうところは、私も少し似ているのかなと思います。
事業と強み
オフィスづくりの総合商社
当社の事業を一言で表すなら、「お客様の働く環境に関するお困りごとを、ICTとオフィスづくりの力で解決する会社」です。オフィスで使用される機器やシステム、ネットワーク、オフィス家具など、企業活動に欠かせない幅広い商品・サービスを取り扱っています。
当社は計算機の販売からスタートしましたが、時代の変化とともに事業領域を広げ、現在ではお客様の「働く」を支える総合商社へと発展してきました。
こうした仕事は一人で完結できるものではありません。営業部門、サービス・保守部門、管理部門など、さまざまな部署で連携するとともに、多くのパートナー企業の皆様にもご協力いただきながら、お客様にとって快適で働きやすいオフィス環境づくりをお手伝いしています。単に商品を販売するだけではなく、課題の発見から提案、導入、運用・保守までを一貫して支援しています。
強みは「人」
当社の最大の強みは「人」です。
当社では、「ヒトとICTとオフィスづくりの力で、お客様の『働く』を快適にする」というビジョンを掲げています。その中の「ヒト」とは、まさに当社で働いてくれている社員一人ひとりのことを表しています。
当社は商品やサービスを仕入れて提供する商社です。メーカーのように自らモノづくりを行う企業ではありません。そういう意味では、人の力によってお客様へ提供できる価値や可能性は大きく広がります。お客様の課題を理解して、最適な提案を行い、導入後も継続して支援していく。そのすべてを担うのが人です。だからこそ、当社にとっては人が最も重要な経営資源であり、最大の強みは「人」だと考えています。
採用においては、私が何よりも大切にしているのは、嘘をつかないこと、そして真面目にコツコツと努力を積み重ねられることです。特別な能力や経験よりも、誠実な姿勢を持ち続けられる方に仲間になっていただきたいと思っています。
そのような方が当社で成長し、お客様から信頼され、生き生きと働きながら活躍していく。そんな未来を共に創っていける人こそ、今私たちが最も求めている人物像です。
代表就任、前社長のこと
突然の代表就任
代表になって一番大変だったことは、代表に就任したその瞬間だったかもしれません。
私は2022年6月に代表取締役に就任しました。しかし実は、父の後を継いだ前社長が58歳という若さで急逝されたため、想定よりも早いタイミングで経営を引き継ぐことになりました。
前社長は本当に素晴らしい営業マンであり、私たちにとってはカリスマ的な存在でした。親分肌の人柄でもあり、多くの社員から慕われていたと思います。
トップダウンからボトムアップへ
だからこそ、私は前社長のような存在にはなれないと考えました。
前社長のようなトップダウン型のリーダーシップではなく、自分らしいやり方で会社を支えていこう。その結果たどり着いたのが、社員一人ひとりと向き合いながら進めるボトムアップ型の経営でした。
まず取り組んだのは、社員全員と一対一で話をすることです。時間を区切らず、それぞれが感じていることや考えていることを聞きました。振り返れば、多くの意見や要望、不満の声もありました。一方で、私自身の考えや会社が目指す方向についても率直に伝えてきました。
そうした対話を積み重ねるうちに、あっという間に4年が経ちました。社員一人ひとりの力、取引先の皆様の支え、そして長年にわたりお付き合いいただいている多くのお客様のおかげで、当社は今日まで安定した事業を続けることができています。
そのことに、心から感謝しています。
これからのビジョンと、変わらないもの
AI・DXを自社でまず試す
今後もオフィスの総合商社として、お客様に提供できる価値の幅をさらに広げていきたいと考えています。
当社は、もともと計算機の販売からスタートしました。しかし、時代の変化とともにお客様が抱える課題や求められるものは大きく変わり、そして増え続けています。
そうした中で、お客様に必要とされるものを私たちが提供できなければ、お客様から必要とされる存在ではなくなってしまいます。だからこそ、AIやDXといった新しい技術や考え方については、まず自社で実践し、その経験や成果をお客様への提案に活かしていきたいと考えています。
ただ、その進化のスピードは想像以上に速く、常に新しい情報を取り入れ続ける姿勢が欠かせません。私たち自身で学ぶことはもちろんですが、取引先の皆様や親しくお付き合いいただいている同業の皆様からも多くの情報や知見をいただいています。
中小企業である私たちにとって、そのようなつながりは非常に心強く、ありがたい存在です。
変わらない「お客様中心主義」
当社には、何十年にもわたってお付き合いいただいているお客様が数多くいらっしゃいます。中には、現在のご担当者様が入社される以前からお取引を続けていただいている企業も少なくありません。
このような長いお付き合いを続けていただく上で、最も大切なのは信頼関係だと考えています。お客様の期待を裏切らないこと。そして、お客様のお困りごとを一つでも多く解決すること。その積み重ねこそが信頼につながるのだと思います。
「お客様中心主義」という言葉は、創業者である父が創業当時から大切にしてきた考え方です。
時代は変わり、取り扱う商材やサービスも大きく変化しました。しかし、お客様のことを第一に考え、お客様の役に立つ存在であり続けたいという想いは、創業から60年を迎えた今も変わっていません。
学生へのメッセージ
とにかく経験してほしい
学生の皆さんに偉そうなアドバイスができる立場ではありませんが、もし学生時代の自分に声を掛けることができるなら、「もっとたくさんのことを経験してほしい」と伝えると思います。
学生時代は限られた時間しかないはずなのに、なぜか時間が無限にあるような感覚がありました。今振り返ると、もっといろいろなことに挑戦できたのではないか、少しもったいなかったなと感じることもあります。
だからこそ、「自分はまだやったことがないな」と思うことには、ぜひ積極的に挑戦してほしいと思います。失敗することもあるかもしれません。しかし、その失敗も含めた経験から学べることは、何にも代えがたい財産になります。
今の学生生活を楽しむことももちろん大切です。ただ、それと同じくらい、さまざまなことに挑戦し、多くの経験を積んでほしいと思います。
私自身、人前で話すことは今でも得意ではありません。社会人になってからも苦手意識はありましたが、逃げずにさまざまなことへ挑戦してきたことで、少しずつできることが増えてきました。小さな挑戦と経験を積み重ねてきた結果が、今につながっているのだと思います。
経験は、必ずその人の力になります。だからこそ学生の皆さんには、失敗を恐れずにいろいろなことへ挑戦し、自分自身の可能性を広げてほしいと思います。
そして私自身も、これから先も挑戦を続けながら、成長していきたいと思っています。
編集後記
今回のお話を通して、「与えられた環境を、どう受け止めるか」で人生の見え方が変わるのだと感じました。友人の何気ない一言が人生の選択を後押ししたエピソードは、私自身、環境や条件に対してつい消極的になってしまうことがあるからこそ、深く響きました。また、前社長の急逝という困難のなかでボトムアップ型の経営に舵を切った姿勢からは、弱さを認めることも一つの強さなのだと学びました。経験を重ねることの大切さを、私も日々の挑戦のなかで大事にしていきたいと思います。