26歳まで役者として活動。そこからWeb制作の世界へ
個人で作っていたホームページが転機に
もともと私は、一般的な学生生活とは少し違う道を歩んでいて、16歳から26歳までの約10年間、役者として活動していました。後半は、ほぼ仕事として本格的に取り組んでいました。
役者を辞めたあと、次の仕事につながるきっかけになったのが、個人的に作っていたホームページです。
当時はホームページが全盛の時代で、まだスマートフォンもなく、Web制作は今以上に専門性の高い仕事でした。そこで初めてWeb制作会社に入り、仕事としてWebの世界に関わるようになったのが、現在につながる最初のきっかけです。
東日本大震災を経て、福岡へ移住
その後、Web制作会社からEC事業会社へ転職しました。ちょうどそのころ、2011年に東日本大震災が起きたんです。
その翌年、現在の妻が熊本出身だったこともあり、九州への移住を決めました。仕事の選択肢を考えたときに、Web関連の会社が多かった福岡を選び、2012年に移住しました。
福岡に来てからも会社員として、Web制作会社とEC事業会社をそれぞれ経験しました。
振り返ると、独立するまでに経験した会社は全部で5社ほど。転職を重ねながらWeb制作やECの経験を積み、2015年に結婚。そして同じ年に独立することになります。
会社員という働き方を見つめ直し、独立へ
2015年当時は、働く環境について考えることが増え、会社員という働き方をこのまま続けていくのか、少しずつ疑問を持つようになっていました。
そんな中、Web制作を個人で仕事をしないかと声をかけてもらう機会もあり、「一度、自分でやってみよう」と決めたのが2015年2月です。そこで個人事業主として独立しました。
今とは状況も違い、当時はWeb業界の人材不足が今以上に深刻で、フリーランスにも多くの仕事がありました。そうした時代背景も、独立を決断するうえで大きな後押しになったと思います。
業界特有の厳しい働き方も経験
私がWeb業界に入ったころは、今と比べると長時間労働が当たり前のような環境も少なくありませんでした。深夜まで仕事をして帰宅するという働き方も、当時はそれほど珍しいものではなかったと思います。
その後、社会全体で働き方が見直され、残業や労働環境に対する意識も大きく変わっていきました。Web業界も少しずつ変化し、現在は当時と比べると、かなり働きやすい環境になってきたと感じています。
個人事業主として6年弱、そして法人化へ
一人でできる仕事の限界が見えてきた
個人事業主としては、6年弱ほど活動しました。5年以上一人で仕事を続ける中で、自分一人で対応できる仕事量や売上の規模、そしてWeb制作やEC運用という仕事の属人性が、少しずつ見えてきたんです。
仕事を続けていく中で、「この先さらに事業を広げていくには、一人では難しい」と感じるようになりました。人を迎え入れて組織として仕事をしていくのであれば、個人事業ではなく法人の方がいい。そう考えて、2020年11月に株式会社インクワイアリーを設立しました。
自分自身が30代後半になり、これから先の働き方や事業のあり方を考えるようになったことも、法人化を決めた理由の一つだったと思います。
「応援したくなるEC」を掲げ、制作から売上づくりまで一貫して支援
制作・運用・クリエイティブを一気通貫で
弊社では「応援したくなるECを考える」という言葉を掲げています。ECサイトの運用支援を中心にしていますが、単に日々の運用を代行するだけではありません。
ECサイトの制作や商品ページの改善、写真撮影などのクリエイティブから、集客施策や売上改善まで、ECに必要なことを一貫して支援しているのが特徴です。
サイトを作って終わりではなく、その後どう売上につなげていくかまで、お客様と一緒に考えながら取り組んでいます。
また、単発の制作だけではなく、継続的に伴走する支援を大切にしています。
年間契約でお付き合いしているお客様も多く、制作・運用・改善を継続してサポートする形が、現在の事業の中心になっています。
福岡を拠点に、業務委託のメンバーも含めた少数精鋭のチームで、一社一社のお客様と向き合いながら支援しています。
具体的な支援内容
主な事業は、自社ECサイトの制作・運用をはじめ、楽天市場やYahoo!ショッピングといったモールの運用支援、さらに売上を伸ばしていくための社内体制づくりまで幅広くサポートしています。
最近はEC市場の競争も激しくなっているため、サイトや広告だけではなく、商品そのものについて一緒に考える機会も増えてきました。商品開発や仕入れの段階から関わったり、クラウドファンディングで商品の反応を確かめたうえで、楽天市場やYahoo!ショッピング、自社ECへ展開していくところまで支援するケースもあります。
そのほか、コーポレートサイトやランディングページの制作、Meta広告などを活用した集客支援、写真・動画の撮影といったクリエイティブにも対応しています。
私たちが大切にしているのは、お客様と一緒に考えながら進める伴走型の支援です。
見た目のクリエイティブだけではなく、その先の売上や成果まで意識して取り組むことを強みにしています。
会社員時代から数えると15年以上ECの現場に携わってきました。そこで培ってきた経験や知見も活かしながら、それぞれのお客様に合った形で支援しています。
競合との違い
EC支援の会社といっても、それぞれ得意分野は異なります。
運用に強い会社もあれば、Web制作やクリエイティブを得意とする会社、広告やコンサルティングに強い会社もあります。
一方で、実際のEC運営では、サイト制作だけ、運用だけ、広告だけでは完結しないことも多く、それぞれを別の会社に依頼すると、施策が分断されてしまうことがあります。
弊社では、ECの運用を軸に、Web制作やクリエイティブ、広告、売上改善までを一つのチームで横断して支援できることを強みにしています。
それぞれの施策を別々に考えるのではなく、全体を見ながら一貫して取り組めることが、私たちの特徴だと思っています。
成果実績
最近、特に実績が増えているのがYahoo!ショッピングの運用支援です。
インテリア雑貨を扱うショップでは、約3年半の支援を通じて、月商80万円ほどだった売上が最大で月商900万円まで伸びたケースがあります。ほかにも、月商50万円ほどから200万円規模まで成長したショップの支援実績があります。
食品分野では、約4年半にわたって支援を続け、月商30万円ほどから、現在では150万〜200万円ほどの規模まで成長しているショップもあります。
また、MakuakeやCAMPFIREといったクラウドファンディングの支援実績もあります。
現在は、長期的な契約で継続支援しているお客様も複数社あります。一店舗をじっくり支援するケースもあれば、複数店舗をまとめてお任せいただくケースもあり、それぞれのお客様の状況に合わせながら継続的に改善を重ねています。
地方創生と、ECを起点にした新たな挑戦
佐賀県の窯元との仕事で感じたこと
今後のビジョンとして、大きく二つ考えていることがあります。その一つが、地域の事業者をWebやECの力で支援していくことです。
私は東京から福岡へ移住してきました。福岡は九州の中では大きな都市ですが、全国で見れば地方の一つでもあります。福岡で事業を続ける中で、地方だからこそ生まれる商品や文化の魅力を感じる機会も増えてきました。
特に印象に残っているのが、佐賀県の伊万里焼の窯元さんとお仕事をしたことです。その経験を通じて、日本の伝統工芸や地域に根付いた産業の魅力を改めて感じました。
一方で、窯元さんや酒造メーカーさんをはじめ、地方には魅力的な商品や技術を持っていても、それを広く発信するための予算や人材が十分ではない事業者も少なくありません。補助金などを活用しながら、販路開拓や情報発信に取り組んでいる現状も目にしてきました。
そうした地域の商品や文化を、WebやECを通じてより多くの人に届けていくことは、私たちがこれまで培ってきた経験を活かせる分野だと思っています。これからも、地域の事業者と一緒に魅力を発信し、売上や事業の継続につながる支援に取り組んでいきたいです。
ECを軸にした新しい事業への挑戦
もう一つ考えているのが、これまでECの現場で培ってきた経験や知見を活かしながら、新しい事業にも挑戦していくことです。
まだ具体的に動き始めたばかりの段階ですが、これまで多くのお客様の事業に関わる中で得てきた経験を、自分たち自身の新しい事業づくりにも活かしていきたいと考えています。
EC支援で培ってきた企画や集客、運用などの力を土台に、これまでとは違う領域にも少しずつ挑戦していきたいと思っています。
学生へのメッセージ ― これからの時代に大切なのは「上流」を意識すること
これまで、インターンやアルバイト、正社員として学生の方と一緒に働く機会がありました。学生のうちに、自分で考えて行動する経験を積むことはとても大切だと思っています。
特にWebやECの業界は、これからAIによって大きく変わっていく分野です。これまで専門的なスキルが必要だった「つくる」という仕事も、AIの進化によって、より取り組みやすくなっていくと思います。
その中で重要になるのは、単につくる技術だけではなく、「何をつくるのか」「なぜつくるのか」を考え、企画から実行、運用、改善まで考えられる力です。いわゆるディレクションや企画といった、上流の部分を意識することが大切だと思っています。
もちろん、デザインや制作が好きでWebデザイナーを目指すことも素晴らしいと思います。そこに企画やマーケティング、運用の視点を加えることで、活躍できる領域はさらに広がります。
そして、学生のうちからAIを実際に使い、自分なりの活用方法や考え方を持っておくことも、これからの仕事において大きな強みになると思います。
編集後記
今回お話をうかがって、後藤さんの経歴の幅広さに驚きました。役者から会社員、フリーランス、そして法人化と、一つの道をまっすぐ進んできたわけではないからこそ、いろいろな視点からECという事業をとらえられているのだと感じました。とくに印象的だったのは、AIが当たり前になる時代だからこそ「上流」を意識することが大切だというお話です。つくることに憧れがちな学生としても、企画や運用といった視点を持つことの大切さを改めて考えさせられるインタビューでした。