インタビュー

学生のうちに「自分の教室」を作れ。シェアスペース「solve」が描く、挑戦できる場所の未来

PROFILE
株式会社勝木 代表取締役
勝木 啓文

YouTube:https://youtube.com/channel/UCvdGz4ft8w6fVd944NqYTFw?si=WmF6AcYq0yC2Y3bD

塾の営業から店長へ

大学 1 年で飛び込んだ現場

大学に入学してすぐ、トライグループ(家庭教師のトライ)のアルバイトとして働き始めました。ただ教室で教えるんじゃなくて、ご家庭に訪問して契約を結ぶ営業職です。当時は「まさか」って感じでしたけど(笑)、それがスタートでした。

学生で店長を経験

右も左もわからないまま、さまざまな家庭を回って営業提案をし続けるうちに、大学 4 年生のときには北九州まで行って店長を任されていました。当時のトライグループ自体がスタートアップだったので、半分社会人みたいな感覚でしたね。看板の出し方も、重機の手配も、電話線の引き方も、全部わからないまま失敗しながら進んでいきました。

福岡でスペースを借り切ってパーティーをやってみたり、いろんな大学生と知り合ったり。軸はあくまで仕事でしたけど、学生時代に「自分の手でつくった環境」がどこかずっと頭にあったんだと思います。

「人の可能性を広げる場」をつくる

コンサルから教育事業へ

トライグループで28年ほどキャリアを積んだあと、独立しました。今は経営コンサルティングが収益の柱ですけど、一番広げたいのは自社サービスの「solve(ソルブ)」です。

solveには大きく 2 つあって、1 つが教育情報のプラットフォーム、もう 1 つが新宿駅徒歩すぐのところにある個別指導シェアスペースです。シェアスペースの方は、子どもたちに個別指導をできる「場所」を提供している。そこで先生たちが自分のブランドで塾を開いているんです。

学生でも「塾の先生」になれる

コンサルって、最終的な決定権はクライアントにあるじゃないですか。半分はやりたいことをやれても、半分はできない。solveは自分で育ててきたサービスなので、赤ちゃんみたいなものです。

今、solveに登録している先生は約 20 人います。もともと大手進学塾の最難関クラスを担当していた先生、武道と勉強を組み合わせたユニークな指導をしている先生、プログラミングを教えている先生。そして医学部に在籍中の学生が「医学部受験専門個別指導 PreMed School」というブランドをつくって医学部受験の指導をしている、という例もあります。

自分が苦労して医学部に入ったから、同じ夢を持つ子どもたちを教えたいって。将来は医師国家試験の勉強支援もやっていきたいと話していて、そういう若者を応援できる場所でありたいんです。

場所の選び方にも理由がある

新宿駅周辺にはコワーキングスペースがたくさんありますが、「私語禁止」のところや、子どもが来るには少し入りにくい雰囲気のところも多い。solveのビルは美容系テナントが中心なので、女性や子どもが安心して入れる環境になっています。トライグループ時代に 1,000 店舗規模の出店に関わってきたので、どこに場所を構えれば人が集まりやすいかは体感でわかるんですよね。

学生のうちに、自分の教室をつくってほしい

初期費用ゼロで始められる仕組み

ビジョン図鑑さんのお話をいただいたとき、「うちに就職してほしい」というより「solve を使って学生のうちに独立してみてほしい」という気持ちの方が強かったんです。

たとえば塾をやりたいとか、プログラミングを教えたいとか、イラストを教えたいとか、そういうアイデアがある学生が自分で教室を開こうとすると、初期費用もリスクもそれなりにかかります。でも solve を使えば、入会金は今無料で、月 2 万円の固定費か、それに施設利用料を加えたくらいの負担で始められます。アルバイト代でも出せる金額ですし、使った分だけ払うので赤字にもなりにくい。

ホームページも、今は AI を使えばさっとつくれる時代です。自分でホームページをつくって集客して、そこで指導を始める。うまくいったら店舗を借りればいい。学生スタートのビジネスって、そういう形でじゅうぶん成立するんですよ。

トライも「学生サークル」から始まった

トライグループ自体、ある大学の学生サークルからスタートして全国に広がっていった会社なんです。私がいたのはちょうどそのスタートアップ期で、学生に資金を渡して「あの場所に店舗をつくれ」と送り出すような時代でした。右も左もわからなくても、失敗しながらでも前に進むことが、いちばん成長できると体で覚えました。

シェアサロンも最初の 2 年くらいは文化が広がらなかったのに、カリスマ美容師が使い始めたことで一気に普及したじゃないですか。「シェア塾」もきっと同じように、ブレイクするタイミングが来ると思っているんです。今少しずつ口コミで広がっているので、そろそろかなって。

AI 時代だからこそ、人の強みにフォーカスする

今後、教育業界にも AI はどんどん入ってきます。成績のいい子はすでに NotebookLM に過去問やテキストをぶち込んで自分で勉強しています。中間管理職みたいな「中途半端なポジション」はいらなくなる時代かもしれない。

だからこそ、もう一度「人が持つ強さ」にフォーカスした組織づくり・仕組みづくりをしていきたいんです。solve の展開もその延長線上にあります。子どもたちに多様な先生と出会えるチャンスをつくり、若者が「自分の意志でやりたいことに挑戦できる場」を全国に広げていく。途中からフランチャイズ展開も視野に入れています。

それが今、私の働くモチベーションの中心にあるものですね。

失敗を恐れずにチャレンジしてほしい

大企業に就職することも選択肢のひとつだと思います。でも、定年まで同じ会社にいる時代でもなくなってきているので、「ここを出たらどうする?」という視点は常に持っておいてほしい。

学生のうちにベンチャー企業のインターンに飛び込んでみるとか、自分で起業してみるとか、そういうチャレンジをしてみてほしいんです。私も失敗だらけで、どうやったら失敗するかを語り出したら終わらないくらい(笑)。でもその失敗から学びがあって、成功する方法が見えてくる。失敗を恐れずに、どんどん挑戦してみてください。

 

編集後記

起業というと「リスクが大きい」「資金が必要」というイメージが先行しがちですが、勝木さんのお話を聞いて、その入口はもっとシンプルにできるんだと気づかされました。月 2 万円から始められる「solve」という場の存在と、トライグループという大企業が学生サークルからスタートしたという事実は、特に刺さりました。「学生時代に自分の意志でやることが、いちばん全力で考えられる」という言葉は、就活を前にしてなんとなく「大手が安心」と流されそうになっている自分への問いかけのようでした。AIが仕事の形を変えていくなかで、「人の強さ」を信じて場をつくり続ける勝木さんの姿勢、これから何度も思い出すと思います。