バッグを作るだけでは終わらせない
納品はスタートラインだった
弊社はもともと、バッグの製造メーカーとしてスタートしました。依頼をいただいたバッグを作って納品する、そこまでが仕事だと思っていたんです。しかし、お客様にとっては納品されたところこそがスタートラインなんですよね。作ったバッグをどう販売するか、どう集客するか、そこから先の悩みのほうがずっと大きいということに、あるとき気づかされました。
過去にお付き合いのあったお客様に「あの製品の売れ行きはどうですか」「困ったことはありませんか」と聞いて回ったところ、たくさんの悩みが出てきて、それに1つ1つ応えていくなかで、販路の支援やネットショップの運営、webプロモーション、資金調達の支援など、いろいろな事業が広がっていきました。すべてお客様からいただいたヒントがきっかけです。
社名に込めた2つの意味
社名の「きつつき工房」には、2つの意味を込めました。1つは、きつつきが1点をつつき続ける動作からとった、集中して1つのことを成し遂げるという意味です。もう1つは、きつつきの習性からきています。きつつきは木に穴を開けて虫を捕まえるのですが、その場では食べずに、1度巣に持ち帰って家族と分け合うんですよね。1点をつつき続けて得たものを自分だけのものにせず、広く役立てていきたいという想いを込めて、「きつつき工房」という名前にしました。
コロナ禍で直面した苦労
日常が変わる出来事の連続だった
これまで苦労してきたことは山ほどありますが、1番に思い浮かぶのは、日々の日常がある日突然変わってしまう出来事に、何度も遭遇してきたことです。直近で大きかったのはコロナ禍でした。飲食店のような分かりやすいダメージを受けた業界だけでなく、皆さんが出かけなくなったことで旅行バッグの売り上げにも大きな影響が出ました。加えて、海外の工場から届くはずの資材や製品がロックダウンで止まってしまい、貿易ができなくなったことも大変でした。納期に間に合わないからとお客様にキャンセルを申し出られても、こちらはすでに仕入れてしまっている、というやり取りが続いた時期もありましたね。
束の間の収束から長期化へ
当時、1度コロナが収束しそうなタイミングがあったんです。2019年に始まって、2020年の頭ごろには「このまま収まるのでは」と思っていた矢先に、旅行需要を喚起する施策が打ち出されて、そこから感染がまた広がってしまいました。それからは長い間、スーツケースが売るに売れず、しかも保管のために大きな倉庫を借りなければならない状況が続きました。一方で、当時は並行してインターネット広告の仕事もしていたのですが、お客様の広告予算が縮小してしまい、その収入も同時になくなってしまったんです。ただ、今振り返れば、それが逆にバッグの仕事に集中するきっかけになったのかなとも思っています。
これから目指すビジョン
誰もがものづくりをできる世界に
これから挑戦する人たち、自分のバッグを作って事業を始めたい人たちが、リスクやハードルを感じることなく、思い描いたものを形にできる。そんな「誰もがものづくりをできる世界」を作ることが、弊社のビジョンです。日々お客様から聞き取ったことに、その都度向き合って解決してきた結果が、今の弊社のサービスにつながっています。
10個から作れる仕組み
バッグを作って売ろうと思ったとき、最初のハードルになるのがロット数です。多くの工場は1,000個からが1つのラインで、初めて挑戦する人にとってはとてもハードルが高いんですよね。1個3,000円だとしても300万円になってしまいます。せっかく思いを込めて考えた製品を、途中で諦めてほしくないという想いから、工場と1つ1つ交渉を重ね、弊社では10個から製造できる仕組みを作りました。数が増えるほど単価は下がるので10個だとどうしても割高になってしまいますが、まずは形にしてテストマーケティングをして、そこから伸ばしていくことも可能です。この小ロットの仕組みが、挑戦のきっかけを生んでいるのではないかと思っています。
売れ残っても弊社が全量買い取る
もう1つ、核になるサービスだと思っているのが、今年の初めごろに始めた全量買い戻し保証サービスです。弊社で作った製品が1年経っても売れ残ってしまった場合、弊社がすべて買い取るというものです。これができるのは、弊社がバッグメーカーとしてのものづくりだけでなく、ネット販売にも力を入れているからです。自社製品のキッズリュックを楽天市場で多く販売していて、バッグ類の販売に強いショップを持っていますし、ネット広告のノウハウもあります。1年後にもし買い取ることになったとしても、確実に売り切れるという自信があるからこそできるサービスです。おそらく、他のOEMメーカーではなかなかできないことだと思っています。
世界観を形にする仕組み
もう1つ、これから始めようとしているのが、SNSでの発信をそのまま製品化する仕組みです。個人でものづくりに挑戦したい方は、細かい仕様や素材の知識までは持っていないことが多いんです。しかし、SNSの投稿から伝わってくる世界観はとても魅力的で、それを商品にできたら面白いと感じることがよくあります。これまでは話を聞きながら1つずつ形にしてきましたが、それをもっと早く、もっと正確にできる仕組みを今考えているところです。来年の夏か秋ごろのスタートを予定しています。
学生へのメッセージ
形になるまでやってほしい
思い浮かべたものがあるなら、形になるまでやってほしいです。もしそれがバッグ作りの分野であれば、そのリスクは弊社も一緒に背負う覚悟でいます。ロット数を10個からにしたり、全量買い戻し保証を用意したりしてきたのも、挑戦する人がリスクを恐れずに1歩を踏み出せるようにするためです。挑戦すれば、必ず得るものがあるはずです。ぜひ、思い切って形にしてみてください。
密かに憧れるのはロボット開発
もし今、大学生や高校生に戻れるとしたら、ひそかにやってみたいのはロボット開発です。私たちの世代はマクロスやガンダムに親しんできました。マジンガーZは少し上の世代の憧れかもしれませんが、ロボットへの興味は今も変わりません。AIと話していると本当に仲良くなれる感覚があって、そんな仲良しなAIに体を持たせてあげたいなと、今なら思うんですよね。
編集後記
今回のお話で印象に残ったのは、「納品はスタートライン」という青嶋さんの言葉です。作って終わりにしないという姿勢が、10個から作れる仕組みや全量買い戻し保証といった、挑戦のハードルを下げるサービスにつながっていることがよく分かりました。リスクを恐れて1歩を踏み出せずにいる人にこそ、今回の記事を読んでほしいです。誰もがものづくりに挑戦できる世界の実現を、これからも応援していきたいと思います。