社内ベンチャー制度「Ventures of Creativity」に一期生として挑戦
私は大学を卒業したあと、小さなアニメの制作会社やゲーム会社を経験して、その後、博報堂DYグループの広告会社に入りました。グループ内で社内ベンチャーを立ち上げる制度が2023年に始まって、その初年度にエントリーしたのが、いまの会社を立ち上げた大まかな経緯になります。ほかの会社さんとは少し立ち上がり方が違うかもしれません。
コンセプトとしては、いわゆる一般的なベンチャーと同じ環境を用意すること。大きい企業のグループ会社でありながら、ベンチャーらしくクイックに動けるところが特徴だと思っています。
デジタル広告の「速さ」と「余裕のなさ」
エントリーしたモチベーションのベースにあったのは、前職で感じていた課題感でした。デジタル広告は、テレビ広告と比べて予算が少なく、その分、数もたくさん出てくる領域です。また表現が均質化しやすいという側面もありました。
かといって、新しい表現を取り入れるのも簡単ではない。そんなときに、AIが出始めたのが2023年ごろです。デジタル広告の現場でも、まだ取り入れるかどうかわからない、そんな空気でした。
今の仕事を続けていてもよかったんですけど、そこにベットしてみるのも面白いかなと、わりと気軽に思ったところがスタートです。そのなかで、AIを使った新しい動画づくりという考え方がうまくフィットしたのかなと思っています。
AIクリエイティブスタジオとしての強み
広告実績を早いサイクルで積み上げられる
おかげさまで、広告の実績は着実に積み上がってきました。最初は限られたお客さまが中心でしたが、そこから実績を積み重ねていくなかで、いろいろな業界のお客さまとの取引が増えて、有形商材を扱うお客さまとのお仕事も広がりを見せています。
デジタル広告の領域は制作スピードが速いのが特徴です。1〜2か月で完結するものも少なくありません。だからこそ新しい技術をすぐに取り入れられて、その分、実績を早く積むことができます。実績があると「こんなこともできるんだ」と思ってくださるクライアントさんが出てきて、新しいお仕事につながっていく。この、実績が実績を呼ぶサイクルができたのが大きかったと思っています。
「経験」とAIをかけあわせて、一気通貫でつくりきる
強みは、メンバーが一気通貫で制作をやりきれることです。
映像は本来、企画、撮影、編集、ポストプロダクションがあって、と工程ごとに分かれてつくるものです。うちのメンバーは、実写業界出身の人、ゲーム業界出身の人とバックグラウンドはさまざまですが、共通しているのは、映像の一連の制作工程を実務として経験してきていること。どの工程で何が起きて、何が難しいのかを体で分かっています。
その経験にAIをかけあわせると、これまで何人もの手を介していた工程を、最初から最後まで少人数でも完結できてしまう。AIが使えるだけでも、映像がつくれるだけでもなく、その両方が揃っていることが内部的な強みだと思っています。代表を務める私たち二人も、手を動かして最後までつくりきることをやっています。
撮影ゼロでつくった、自由の女神の映像
ホームページに載せている、自由の女神がクッションでくつろいでいる映像がありますが、共同代表の小野がつくったもので、撮影は一切していません。ゼロから、撮影なしでつくった映像です。
従来であれば、企画があったとしても制作期間や予算の都合で実現することが難しい表現も、一気通貫で制作が可能になりました。クリエイティブの壁を突破できた事例の1つです。
短尺広告から、中長尺コンテンツへ
広告の仕事、クリエイティブの仕事は、これからも変わらず続けていきます。先ほどお話ししたサイクルをつくるうえで、とてもよい仕組みだと思っているからです。そのうえで、培った技術を別の領域にも応用していきたいと考えていて、実は水面下で中長尺のコンテンツ領域に応用を始めています。
広告よりも尺が長くなると、個々が培った技術をチームとして集合知化して、コンテンツに応用していく必要が出てきます。そこは今後の課題であり、挑戦したいところです。
業界の垣根がなくなってきている
いまAI動画をつくっているクリエイターは、もともと映像をやっていた人ばかりではありません。もともとAI業界という業界自体が存在しなかったので、そこに集まってくる人たちは、いろいろなバックグラウンドを持っているんですよね。
私たちの採用も、いまは広告や映像の業界に閉じていません。映像制作の経験とAIをかけあわせて一気通貫でつくれるのと同じように、それぞれが持っている領域の経験にAIをかけあわせると、これまでになかったクリエイティブが出てくる。かけあわせる経験の種類を増やしていくことが、そのまま表現の幅になっていくと考えています。
弊社の従業員は業務委託を含めて10人ほど。今はコアメンバーを少しずつ増やし始めているところです。
AIの時代、学生に伝えたいこと
知識の差より「何を経験してきたか」
これは難しい質問だなと思ったんですけど、私が学生だった頃と比べて、今はわからないことを何でも聞ける相棒(AI)がいるのは、正直うらやましいなと思います。当時は就職活動をするにも「何から手をつけたらいいんだろう」というところからのスタートでした。今は履歴書の書き方から面接のレクチャーまで、AIがある程度やってくれますよね。
知識の量による優位性はあまり意味をなさなくなってくるのが今なんじゃないかと思っています。そのときに重要になってくるのは、何をインプットしてきたか。じゃないでしょうか。
何を経験してきたか、何を感じてきたかという部分を、これからの会社は見るようになってくると思っています。
若い頃の自分に伝えたいこと
正直、自分がやってこなかったことなので難しいんですけど、もし今、学生に戻るとしたら、社会との接点をつくることを意識すると思います。いいものをつくっていれば誰かが見つけてくれる、という若い頃にありがちな傲慢な考えを持っていました。実際はそうじゃなくて、見つけてもらうための努力やアクションを起こしてみることが大事だと、今なら思います。
例えばAIの映像業界に限って言うと、今年はコンテストのようなものがたくさん存在しています。そういう場に乗り込んでみるのも面白いと思いますし、何かやりたいことがあって、それを進めていくと、大体そこにコミュニティや一緒にやる仲間ができたりします。それが結局、社会とつながっていくことだと思っていて、そうやって仕組みを学んでいく部分が重要なんじゃないかと思っています。
自分は学生時代、映像制作はしていたものの、それを持って外に出ることを少し怠っていたと思います。せっかく制作したものがあるなら、それを持ってもっと外に出るべきだったなと、今は思いますね。
編集後記
今回のインタビューでは、AI動画制作の最前線で活躍されている佐藤様から、社内ベンチャー立ち上げの経緯や事業の強み、そして学生へのメッセージまで、たいへん刺激的なお話をうかがうことができました。「知識の差より何を経験してきたか」というお話は、AIを日常的に使う立場として、非常に考えさせられるものでした。ZETTAI WORKS様の今後のご活躍を、心より応援しております。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。